宮守の神域   作:銀一色

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長野編です。
安易に使ってると思われそうなこのイベント(?)


第247話 長野編 ⑥ 当然のように

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視点:神の視点

 

「ふう……そろそろお昼ご飯の時間だね」

 

 小瀬川白望がテーブルに倒れかかるような姿勢で竹井久と須賀京太郎に向かって言う。須賀京太郎も、なんだかんだ言ってこんな時間までこの竹井久と小瀬川白望という女子二人に対しての男一人という色々危うい状態で居れたのかと改めて自分の理性の強さを褒め称えると同時に、「そうですね。……どうしますか?」と二人に向かって言う。流石に昼まで一緒に食べるのは色々と危ないし気まずいので、須賀京太郎はあえてどうするかといったことを言うが、小瀬川白望は「久、何か料理とかできる?」と聞くと、竹井久はグッと袖を捲くって「任せなさい。こういう時に備えてちゃんと鍛錬は積んでるわよ」と言う。どうやら須賀京太郎もここで彼女らと一緒に食べる雰囲気のようだ。まあ確かに気まずくて仕方がないのだが、こうなってしまった以上は心から今の状態を楽しむべきであろう。そう思って立ち上がると、竹井久に向かって「俺も手伝います。何かお役に立てれば……!」と言う。竹井久はそんな須賀京太郎を見てふっと笑うと、「行くわよ須賀くん。美味しいものを作るわよ!」と言い、二人で台所に立つ。小瀬川白望はそんな二人を見て、こんなことを思ったそう。

 

(あの二人……仲が良いのかな。ギスギスしてない方がダルくないから別に良いんだけど、やれやれ、照と尭深とかとは正反対だなあ……)

 

 小瀬川白望は去年の今頃、渋谷尭深とギスギスしていた宮永照の事を思い出す。彼女らはあの後お互いに色々と話したり何らかの方法で関わっていたのだろうか、一応仲は去年に比べてかなり良好になっているそうだ。しかし仲が良くなる前、特に互いの家に訪問した時のギスギス感は恐ろしかった。というか宮永照にはそのギスギスが積もり積もった結果押し倒されたのだが、それはまあ置いといておこう。

 そう考えれば、この二人は仲が良いようで、小瀬川白望も変に気をかける事もしなくて済んでいるようだ。もっとも、去年のも小瀬川白望が二人からの好意を感じ取れなかったから変なフォローとなってしまったため、結果的に自分で自分の首を絞めた形となってしまったのだが。

 

(……そういえば、照に料理を教えるって約束してたっけ)

 

 そうして竹井久と須賀京太郎の料理をしている後ろ姿を見ながら、宮永照繋がりでそんな事も思い出した。宮永照自身、本人が果たして覚えているかどうかは分からないが、小瀬川白望は(……来年辺りでも行こうかな)といった事を考えながら、竹井久と須賀京太郎が料理を作るのを待っていた。

 

「はい、白望さん。召し上がれ!」

 

 そうして数分後、小瀬川白望の目の前に竹井久と須賀京太郎が作った料理が置かれる。小瀬川白望は両手を合わせて「いただきます……」と言い、料理を口へと運ぶ。そうして咀嚼する小瀬川白望を、緊張しながら竹井久と須賀京太郎は見る。できることはやった。後は小瀬川白望の口に合うか否か、それだけであった。

 そして小瀬川白望が喉を通して、箸を置くと一言二人に向かってこう言った。

 

「美味しい……」

 

 それを聞いた竹井久と須賀京太郎は小さくガッツポーズをしてハイタッチをする。そんな二人を微笑ましく見ていた小瀬川白望が二口目を食べようと箸を持った時、ふとあることに気づいた。

 

(あれ……?)

 

 そして小瀬川白望が何かに気付いたという事に二人が気付くと、二人は息を呑んだ。小瀬川白望が何に気付いたのか、予想すらできなかったからである。しかし小瀬川白望から放たれた疑問は、竹井久と須賀京太郎の予想を色々な意味で裏切るものであった。

 

「二人の分は……?」

 

 「えっ?……あ」と竹井久と須賀京太郎はお互いに顔を見合わせると、ようやく今まで小瀬川白望の分しか作っておらず、自分たちの分を考慮していなかったという事に気づく。余りも存在していないため、また新しく作ろうかと二人が考えていたところで小瀬川白望がそんな二人に向かってこう言った。

 

「……まあ、私だけで食べきるのもちょっと無理そうだし……三人で食べよう」

 

 それを聞いた竹井久と須賀京太郎は若干申し訳なさそうに「いいの?」と聞いたが、小瀬川白望は「全然大丈夫……須賀くんにとっては満足できる量じゃないかもしれないけど……」と返した。

 

「そんな!食べれるだけ有難いですよ!……ありがとうございます!」

 

 須賀京太郎がそう言うと、小瀬川白望は箸で料理を摘み、須賀京太郎の前まで持ってくる。須賀京太郎は一瞬どういう意図か分からなかったが、直ぐに理解し、顔を真っ赤にして「な、なんですか!?」と聞く。隣にいる竹井久も顔が燃えるように赤くなっていた。

 

「何って……食べるんでしょ?」

 

 そう言って小瀬川白望は須賀京太郎に口を開けるように促す。小瀬川白望は当然のように俗に言う『あーん』をしようとしているのだが、それは過去に自分が何かある毎にそう食べてきたからであろう。いつの間にやらそれが普通のように錯覚してしまっていたのだ。

 無論そんな事を知るわけもない二人は困惑していたが、須賀京太郎は小瀬川白望に促されるまま口を開け、小瀬川白望に押し込んでもらう。羞恥が強すぎてもはや何を食べているのか分からないほど味は感じなかったが、須賀京太郎からしてみれば小瀬川白望に食べさせてもらったという事実だけでお腹いっぱいであった。

 

「はい……次は久」

 

 小瀬川白望は須賀京太郎に食べさせると、今度は竹井久の方を向いてそう言う。もはや逃れることができない。そう考えた竹井久はもう羞恥と欲望に負けつつあった。顔をガチガチにしながらも竹井久は素直に口を開けて、小瀬川白望に食べさせて貰う。

 そうして小瀬川白望は二人に食べさせると、お次は自分の番である。そして小瀬川白望が食べているシーンを見ていた竹井久と須賀京太郎g、ある事に気付いてしまう。

 

(これってまさか……)

 

(これってもしかして……)

 

((関節……キス……!?))

 

 その事実に気づいた竹井久と須賀京太郎は羞恥に耐えきれなくなって床に寝転がってジタバタしていたが、小瀬川白望はそんな二人を見ても御構い無しといった感じに須賀京太郎に向かって「須賀くん、口……開けて」と言う。

 

(仕方ない……やるしかない!)

 

 そしてとうとう謎の開き直りをした須賀京太郎は勢いよく小瀬川白望が持つ箸に向かって食らいつく。恐らく今日の夜、もしくは須賀京太郎が家に帰って直ぐ、今起こっている事件を思い出して羞恥に悶え死ぬであろうということも分かりきっていたが、ここまで来たらもはやどうでもいいと思ったのだろう。

 

(……私も!)

 

 そしてそれに次ぐ形で竹井久も謎の開き直りをして口を開く。端から見れば雛鳥に餌を与えているかのような光景であったが、羞恥を受け入れた竹井久と須賀京太郎には関係のないことであった。……もちろん、正気に戻った後のダメージはどんどん積み重なっているのは言うまでもない。

 そして案の定、三人が食べ終えて食器洗いやら料理した後の片付けをしている最中にふと冷静になって深刻なダメージとなんであんな事をやったのだろうという後悔と、確かな喜びという更に羞恥を加速させるような要素を抱えながら、穴があったら入りたい状態になったのは言うまでもない。

 

 

 




次回も長野編。
一度に二人堕としていくスタイル。

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