Long time no seeというサブタイトルで誰が乱入してくるか分かるんじゃないでしょうか。
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視点:神の視点
「むー……」
先ほどから小瀬川白望と弘世菫が握手を長い間していると、宮永照は少し頬を膨らませていた。小瀬川白望としてはそんな宮永照を見て早く握手を終わらせたいと思っているのだが、弘世菫がそれを許さなかった。弘世菫としても宮永照が怒っていることなど気付いておらず、ひたすら小瀬川白望の事をじろじろ観察していた。宮永照もそれを察したのか、「菫、いつまで握手する気なの」と言うと、その言葉でようやく気付いたのか「あ、ああ。すまん」と言って手を離す。その瞬間宮永照が小瀬川白望に再び抱きつくようにして「二年ぶりだっけ?白望」と言うと、小瀬川白望は「最後が中学二年の冬だから……一年半ぶりかな」と答える。
そんな二人を見て、若干どころでは無い嫉妬を抱く弘世菫は心の中で(なんだなんだ……二人だけで良い雰囲気になりやがって……)と悪態をつく。
「あー……お二人さん、道端でそういうのはどうかと思うが」
そこで、弘世菫は二人のことを嗜める。これで流石にベタベタするのも収まるであろうと思ったが、どうやら弘世菫の思惑は外れる事になる。小瀬川白望と宮永照は確かに離れたものの、両者は顔を赤くしていた。付き合い始めて周りに茶化されたカップルさながらのように……
「え……いや、そういうわけじゃ……」
「……ダル」
(な、なんなんだ一体……!?ま、まさか、こいつら本当にデキてるのか……?)
そんな恥じらう素振りを見せる二人に対して、弘世菫は嫉妬を通り越して困惑していたのだが、直ぐに弘世菫は二人の手を掴んで小瀬川白望の事を見て「こうなったら仕方ない!勝負だ!小瀬川!」と言い放った。小瀬川白望はいきなり怒鳴られて何の事だと思っていたが、弘世菫から宣戦布告を叩きつけられた事に対して笑みを浮かべて「いいよ、やろうか」と言った。そこで始めて、小瀬川白望の威圧感というものを感じ取った弘世菫は若干怯むが、グッとこらえて「その答えを期待していたよ」と返答した。そうして三人は、近くにあった雀荘に向かう事となった。
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「……ん?あの人は確か……」
三人が雀荘に入ってまず目にしたのは既に雀荘にいた先客であった。そこは雀荘でありながらバーのようなところであり、カウンターには三人よりも年上の、しかしまだ大人ではなさそうな少女が座って何かを飲んでいた。本来なら、三人にとって何ら関係の無い話であったが、その後ろ姿は小瀬川白望がよく知っている後ろ姿であった。宮永照と同じく、一年半が最後にあった事になる年上の高校生。戒能良子であった。
「おやおや……まさかこんなところでミートできるとは思ってませんでしたが……Long time no seeですね。白望サン」
「戒能さん……」
小瀬川白望が驚いたような表情で戒能良子の事を見る。が、隣にいる宮永照と弘世菫も驚いていた。戒能良子がそんな二人を見て「おや……どうも。インハイぶりですね。白糸台の一年ガールコンビさん」と言う。
(そっか……照が負けた相手だから知ってて当然か……)
そしてその戒能良子の言葉で、小瀬川白望は戒能良子と宮永照に繋がりがあったということを思い出す。ギリギリの勝負であったが、戒能良子が制したあの試合を小瀬川白望は思い出す。
「どうしてあなたがここに居るのか、説明してもらえますか」
その言葉に食らいつくように、宮永照は戒能良子に向かってそう言う。小瀬川白望も気になっていた事である。と言っても、宮永照とはまた違った方向で気になっていたのだが。宮永照からしてみれば、他県の代表者であった戒能良子が何故この東京にいるのかという疑問。小瀬川白望からしてみれば、何故東京の代表でなく、他県の代表者であったのかという疑問。どちらも同じのような事を聞いているようで、正反対の疑問であった。
そしてそう聞かれた戒能良子は、宮永照の言葉の裏に隠されている僅かな嫉妬を読み取った。宮永照は一度負けた相手だからそういう態度を取っているわけではなく、宮永照は戒能良子の事を恋敵として考えているからああいう態度を取っているのだと推測する。
(Let's see……なるほど。どうやら宮永は白望サンのフレンドではなく、私と同じ感じですか……)
「あー……私、東京にもハウスを持ってるんですよね。バケーションになると大体こっちにカムバックしてくるんですよ。それについては白望サンがよく知っているんじゃないでしょうか?」
戒能良子はわざとそういう言い方をして、宮永照を軽く挑発する。宮永照は小瀬川白望の事をムッとした顔で見ると、戒能良子は続け様に「あの時はベリーグッドタイムでしたね……白望サン」と言い、更に宮永照を激昂させる。そうして堪えきれなくなったのか、宮永照は戒能良子に向かって「卓についてもらえますか。戒能さん」と言った。
「オフコースです。インハイのような堅苦しいスペースよりも、こちらの方が
そう戒能良子が返すと、弘世菫は小瀬川白望の今の境遇を内心で若干憐れんだが、雀荘に入る前の宮永照とのイチャついていたシーンを思い出して直ぐに憐れみから先ほどの嫉妬に逆戻りし、小瀬川白望に向かって「行くぞ。小瀬川」と言い放った。
様々な思惑が行き交うトップレベルの雀士が集ったこの卓。小瀬川白望は一人純粋に闘志を燃やしていた。
次回から麻雀回になります。
何この修羅場……怖い(小並感)