宮守の神域   作:銀一色

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麻雀回最後です。


第265話 高校一年編 ⑨ 嶺上の死闘

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視点:神の視点

南一局 親:小瀬川白望 ドラ{⑥}

 

小瀬川白望 43600

宮永照   13200

弘世菫   26500

戒能良子  16700

 

 

 

 

小瀬川白望:手牌

{三四赤五八⑤⑧⑨11788西}

ツモ{⑧}

 

(……天は私に味方するか……はたまた照に味方するか……)

 

 小瀬川白望は五巡目のツモで{⑧}を引くと、それを手牌に取り込んで{西}を切り落とした。先ほどまでは小瀬川白望一辺倒の流れであったのに対し、今は小瀬川白望と宮永照が拮抗する展開となっていた。無論、どちらに流れが傾くかは小瀬川白望でも予想の域は越えない。とはいっても、小瀬川白望のいう予想は常人の予想とでは全くの別物なのであろうが。

 そういった小瀬川白望と宮永照の鍔迫り合いのような接戦を先に変化をもたらしたのは宮永照であった。宮永照が手牌から切った直後の弘世菫の打牌である{3}を見て、手牌から{3}を三枚晒して大明槓を宣言した。

 

「……カン」

 

宮永照:手牌

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {横3333}

 

(……なんだ、いつもとは様子が違う……?)

 

 そして大明槓をする宮永照を見て、弘世菫は疑問に感じていた。今まで宮永照が、最初の段階での速度でわざわざ大明槓をした事などあったであろうか。というよりそもそも、宮永照が大明槓自体をした事があったかどうか怪しいものだ。それほど、宮永照の大明槓という行為は珍しいものであった。

 一方の小瀬川白望はというと、その大明槓をする宮永照を見て(……やっぱり。四年前と同じだ)と言って少しばかり微笑むようにして笑みを浮かべる。宮永照が大明槓をした時の花が舞うようなあの感覚。まさに四年前と同じ感覚であった。

 

「もういっこ、カン……」

 

宮永照:手牌

{裏裏裏裏裏裏裏} {裏①①裏} {横3333}

 

 

 そうして、宮永照はまだ追撃を続ける。大明槓によって得た嶺上牌を手中に収めると、今度は{①}を四枚晒して宣言する。弘世菫と戒能良子は、思わず声を上げてしまった。

 

(……ダ、ダブル……ですか)

 

 これは流石に予想していなかったようで、戒能良子は困惑しながら宮永照の事を見る。さっき手に入れた嶺上牌で暗槓したというわけではなく、もとから槓子であったというわけだ。何故槓子となった時点で暗槓しなかったのか、という疑問が戒能良子の中を駆け巡るが、直後の槓ドラ表示牌によってその疑問は掻き消される。槓ドラ表示牌はまさかの{⑨}。という事は宮永照はこれでドラ4を得たという事である。そして驚きは更に戒能良子に訪れた。

 

(……また入った?)

 

 宮永照が今回2回目となった嶺上牌が、再び手牌に入る事となった。これによって宮永照は、この一巡だけで3回もツモをしたことになる。恐るべき嶺上マジックに戒能良子は驚きを通り越していた。この一巡一巡が生死を分かつ重要なものであるのに、宮永照はそれを一巡だけで3回分のツモをした。これは流石に小瀬川白望も虚をつかれたであろう。そう思った戒能良子であったが、小瀬川白望はそれも全て想定していたことである。

 

(ふふ……確かに、一巡で3回のツモはかなりの脅威となり得るけど……()()()()()()()()()()()()()()……)

 

 そう思って小瀬川白望は次にツモってきた牌、{⑧}を見る。これで{⑧}が暗刻となった。しかし、まだ足りない。これではまだ足りなかった。そしてその次、今度は{八}を重ねる。しかしまだこれでも足りないのであった。これ以上を求めるには、山から求めるのではダメ……他の者の手牌から求めるしかない。そう小瀬川白望は考えていた。そうして宮永照がツモ切りをした直後、その最後のキー牌が放たれた。そう、それは戒能良子からの{⑧}。小瀬川白望はこれを待っていた。

 

「カンッ……!」

 

小瀬川白望:手牌

{三四赤五八八⑤1188} {⑧⑧⑧横⑧}

 

 

(なっ……!?)

 

 大明槓をする小瀬川白望を見て、驚かせる側であった宮永照は今度は同じ手法で驚かされることとなる。まさか小瀬川白望も、大明槓をしてくるなんて思ってもいなかった。しかし、宮永照は嶺上牌の方を念じるように見て、小瀬川白望が和了るかどうかを確認する。そして小瀬川白望が手牌から{⑤}を切ると、宮永照は小瀬川白望の手牌の状況を考察する。

 

(……私には嶺上牌が見えている。白望がツモったのは八索……!)

 

小瀬川白望:手牌

{三四赤五八八11888} {⑧⑧⑧横⑧}

 

 

 そう。小瀬川白望がツモったのはまさに{8}であり、これで小瀬川白望は聴牌した。{八1}待ちで、門前でない以上{八}でしか和了れないのだが、小瀬川白望はそんな事関係ないといった風にただ宮永照の事を見つめていた。そうして、宮永照はツモ牌をツモってくる。その牌は{8}。そう、先ほど小瀬川白望が嶺上ツモをした{8}である。

 

(……白望がこれをさっきツモってきたんだから、単騎待ちでない限りはこの牌はセーフティー……)

 

 そして宮永照は小瀬川白望に対して()()()()(){8}を切る。確かに、小瀬川白望に対してはこの{8}は当たる可能性が少ないであろう。しかし、それはあくまでも小瀬川白望が待ちでないという確率であり、宮永照はここである事を失念していた。

 

「カンッ……!」

 

小瀬川白望:手牌

{三四赤五八八11} {横8888} {⑧⑧⑧横⑧}

 

(なッ、しまっ……!)

 

 小瀬川白望が大明槓をする事である。宮永照は次の槓は四開槓で流局であるという固定観念に囚われていた。しかし、四開槓が認められず、和了りとみなす場合がある。それは四槓子の役満の場合か、嶺上開花でツモ和了するかのどちらかの場合である。そして宮永照は小瀬川白望がツモる最後の嶺上牌の中身を思い出して絶句する。

 

(嶺上牌は八萬……ま、まさか)

 

 宮永照が何かを発する前に、小瀬川白望は嶺上牌を叩きつける。宮永照が見えていたようにその牌は{八}であり、予想通り小瀬川白望はツモ和了した。

 

「嶺上開花、三色同刻……ドラ1。新ドラは……」

 

 小瀬川白望が新ドラを捲ると、その牌は{9}。新ドラもきっちり二つ乗せて親っパネ。18000の責任払いによって、小瀬川白望と宮永照……正確には宮永姉妹の戦いは終わりを告げる事となった。

 

「跳満……18000の責任払い」

 




まだ火曜日ですか……まだまだ長いですね(白目)

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