宮守の神域   作:銀一色

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今回から久回です。
因みにですがお題箱というのを開設しました。
作者ページから飛べます。
匿名でリクエストできるので、是非お願いします。
尚、いつもの如くやるかどうかは未定ですので、ご了承ください。


第279話 高校一年編 ㉓ プロ

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視点:神の視点

 

 

「やっほー、靖子。……いや、藤田プロって呼べばいいのかしらね?」

 

「久か……一体なんだと言うんだ。こっちも折角のオフなんだぞ」

 

 長野県にあるとあるバーにて、竹井久はプロ雀士である藤田靖子と密会していた。密会と言っても、そんなに隠密に動く必要はないのであるのだが。さっき言っていた通り、折角の休日に突然竹井久に呼び出された藤田靖子がため息混じりに竹井久に問い詰めると、竹井久はにやけ顔を浮かべながら、藤田靖子の問いに対してこう答える。

 

「ちょっと靖子に見定めてほしい人がいるのよね〜」

 

「そんな事で私を呼び出したのか……?」

 

 竹井久の問いに対して肩を落とすように落胆する藤田靖子を見て、竹井久は「あら、ダメだったかしらね?『捲りの女王』さん。最近テレビに引っ張りだこで忙しいのかしら?」と若干挑発するような声色で藤田靖子に返すと、藤田靖子は「これでも毎回本気で食らいついているんだ。プロの世界ってのはテレビで見るような華やかな場ではないぞ。毎日が死闘さ」と竹井久の挑発を受け流すように吐露する。

 

「例えあなたと同じ世界でも十分に……いや、制覇してしまうような逸材だとしても?」

 

 しかし、即座に帰ってきた竹井久の質問に対して藤田靖子の眉はピクリと動く。そして藤田靖子が「……それほどの人材がいるのか?」と返すと、竹井久は小さな声でこう答えた。

 

「……そうよ」

 

「そうか……お前ほどのヤツがそう言うなら、余程の実力を持っているんだろうな」

 

 藤田靖子はそう言ってグラスに注がれた烏龍茶を飲み干すと、立ち上がって出かける準備をした。意気込みを見せる藤田靖子を見ながら、竹井久は心の中でこんな事を思っていた。

 

(実際、見定めてもらうのは靖子の方かもしれないんだけどね……まあ、流石に靖子も闘う相手があの宮永照より強いとは思ってないだろうし、秘密にしておこう)

 

 もちろん、今回竹井久が呼んだのは小瀬川白望の事である。藤田靖子は完全に自分が教育者側の立場だと思っていたが、全然そんな事はなく、むしろ小瀬川白望が教える立場であり、自分が教えられる立場になるという事など知る由もなかった。

 

 

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「……お、あれか?」

 

 そして小瀬川白望との待ち合わせ場所に竹井久と共にやってきた藤田靖子は、そこにいた人物を指差して竹井久に確認を取ると、少しほど竹井久の反応が遅れたが「ええ、あの子よ」と答えた。すると小瀬川白望の方もこちらを視認したようで、竹井久に向かって挨拶する。

 

「久……こんにちは」

 

「こんにちは。白望さん。今日はあなたに合わせたい人がいるのよ!」

 

「もしかして……久の後ろにいる人?」

 

 小瀬川白望がそう言って藤田靖子の事を指差すと、竹井久は「正解よ。あの『捲りの女王』、藤田プロに来てもらったわよ」と答えるが、小瀬川白望はポカーンとした表情で「え……誰」と言ってしまった。それを聞いた二人は思わずズッコケてしまう。

 

「白望さん、プロ麻雀とか見ないの?」

 

「インターハイくらいしか見てないから、プロとかは全然……」

 

 そう言うと藤田靖子が咳払いをして「一応これでもトッププロの藤田靖子だ。よろしく」と言って小瀬川白望に握手を求めると、小瀬川白望は「小瀬川白望、よろしくお願いします……」と言って藤田靖子の手を取る。藤田靖子が異変を感じたのはまさにその時だった。

 

(……なんだこいつ……握手の仕方がおかしい……ただ親交を深めるための握手というよりかは、まるで相手がどんな人間かを探るような握手みたいだ……何が何だか分からんが、とにかくこいつが人とは違うってのは分かった……)

 

「なるほど……久の言っていたことが何となくわかったよ」

 

 そう藤田靖子が後ろにいる竹井久に向かって言うが、竹井久は心の中で(そんなレベルじゃないわよ……靖子。油断したら靖子といえども、捲ろうとする前にトバされるわ)と警告しながら、「さあ、早速打ちに行きましょうか」と言って二人を引き連れて最寄りの雀荘へと向かった。




次回に続きます。

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