宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続き久回。
そろそろ久回も終わりですかね。


第282話 高校一年編 ㉖ 転校?

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視点:神の視点

 

「……」

 

「久?どうしたの?」

 

「い、いや!?何でもないわよ!?」

 

 竹井久がぼーっとしたまま小瀬川白望の事を見ているのに小瀬川白望が気付いたのか、小瀬川白望が竹井久に声をかけると竹井久は驚きのあまり声を裏返らせて叫ぶようにして返事をする。

 

(……なるほど。青春というものか。まだまだ若いな……小瀬川くんは気付いていないようだが)

 

 そしてそんな光景をニヤニヤした表情で見ながら自分の若い頃を想起し、小瀬川白望と昔の自分を照らし合わせ、麻雀に対する熱も実は小瀬川白望よりは薄かったかもしれないと今更ながら思い知った。

 

 

「じゃあ私はそろそろお暇するかな。いい経験ができたよ、久。お前も色々頑張れよ」

 

「えっ、え?ああ……靖子もプロ、頑張りなさいよ」

 

 竹井久に向かってそう言った藤田靖子は、今度は小瀬川白望の近くまで向かって握手を差し伸べてこう告げた。

 

「君は今のところはインハイには出ないらしいが……君の目標に向かって頑張ってくれ。……あと、本来私は君から教えてもらう側なのだが、これだけは年上の人間として助言する。人間関係には気をつけた方がいいぞ」

 

「……?は、はい」

 

 小瀬川白望は藤田靖子の助言に首を傾げならも、藤田靖子のアドバイスを聞き入れる。それを見て(私にできる事といえばこれだけだ。後は久、お前が自分で頑張れよ)と竹井久に心の中でエールを送りながら、キセルを片手に雀荘をあとにした。

 

「……久」

 

「な、なに!?白望さん!」

 

 またもや声が裏返る竹井久であったが、小瀬川白望は気にせず「私たちも雀荘から出ようか」と言って立ち上がる。すると竹井久は小瀬川白望の手を握って「そ、そうしましょうか」と言った。

 

 

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(……あいつら、手を繋いではいるが……やはり心の距離はまだまだ遠いな)

 

 雀荘を出た小瀬川白望と竹井久を遠くから見ている藤田靖子は、カツ丼を片手に二人の様子を眺めていた。二人は手こそ握ってはいるが、肝心の小瀬川白望がそういう恋愛の対象として竹井久を見ていないため、まだまだゴールは遠そうに見えた。

 

(しかし……なんだあの黒尽くめの男。怪しいのがバレバレじゃないか……)

 

 そして藤田靖子は、自分とは反対側の所で小瀬川白望と竹井久を見張っていると思われる黒服の男の存在に気づいた。そんな黒服を藤田靖子はバレバレだと批判していたが、実は黒服はそれと同じ感想を藤田靖子に対して抱いていた。

 

 

(あのお方……藤田靖子プロ雀士か。見張りなのにカツ丼を持ってちゃあ怪しいのは明白じゃないか……)

 

 互いに互いを批判していたが、一般人からはどちらも限りなく怪しいと思われている二人であった。

 

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「それでさ、久」

 

「な、なに?白望さん」

 

 小瀬川白望は竹井久と共に竹井久の家に向かっている途中、手を強く握りしめる竹井久に向かってこう話しかけた。

 

「清澄……だったっけ。どうなの、麻雀部は」

 

「ああ……麻雀部ね……」

 

 麻雀部の話になった途端、竹井久の表情が若干曇ったが、すぐに表情を明るくして小瀬川白望にこう返した。

 

「正直、幽霊部員しかいなくてまともに部活にならないのよ。何人かはたまに来たりもするけど……大会とかを目指してる感じではないわね。残念ながら……」

 

「ふーん……私も塞と胡桃とで麻雀部を立ち上げたけど、部員が集まらないから結局私達の集まり場みたいになってるかな。もちろん麻雀は打つけど、三麻だからな……」

 

 小瀬川白望がそう言うと、竹井久は冗談交じりに「じゃあ私が宮守で四人打ちできるように転校しようかしら?」と言うと、その数十秒後に竹井久の携帯電話が鳴る。竹井久は携帯電話をとってメールを確認すると、それは辻垣内智葉からのメールであった。恐る恐る本文を確認すると、そこにはただ一言「そうなればお前の首は飛ぶ」と書かれていた。何故聞こえていたのかは分からないが、竹井久は恐怖に襲われてこう撤回する。

 

「じょ、冗談よ冗談!」

 

「え?ああ……まあそりゃあね」

 

 

 

 

 

 

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「なるほど……私が宮守に行くという選択肢が……!?」

 

 そして所変わって東京では、携帯電話を見ながらそんな事を呟いたが、それはメガン・ダヴァンを始めとした臨海女子のメンバー、挙げ句の果てには監督のアレクサンドラ・ヴィントハイムも辻垣内智葉の事を止めようとしていた。

 

 




お題箱も宜しくお願いします。

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