宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。


第283話 高校一年編 ㉗ 危機感

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視点:神の視点

 

 

(……どうしよう。何も見えないから下手に動けないし……)

 

 雀荘を離れてから早くも数十分経った今だが、小瀬川白望は大いにある事に対して困っていた。

 何に対して困っているのかといえば、それは小瀬川白望が目隠しをされたまま部屋の真ん中で放置されている事に対してだ。小瀬川白望は目が見えないため下手に動くこともできないので、結局部屋の真ん中で座ったまま時間がすぎるのを待つしかなかったのだ。

 

(はあ……一体どうしたんだろう……)

 

 何故こんな事になってしまったのかといえば、それは今小瀬川白望が取り残されてる部屋の主であり、尚且つこの場に居ない竹井久が原因であった。そんな竹井久に対して早く戻ってきてほしいと言った願望を心の中で送りながらも、目が見えないという事から若干の戸惑いと不安を感じる小瀬川白望であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……白望さんもあんな表情するんだ)

 

 そしてそれを部屋の扉の向こう側から少しほどドアを開けて竹井久は眺めていた。どうしてこんな状況が作り出されてしまったのかといえば、それは10分前に遡る事となる。

 

『ねえ、白望さん』

 

『ん……なに?』

 

『ちょっと白望さんに見せたいものがあるんだけど、驚かせたいから目隠ししても良いかしら?』

 

『うーん……まあ、いいよ』

 

 これがきっかけで今のような状況になってしまったのだ。もちろん竹井久は見せたいものなどあるわけもなく、ただただ小瀬川白望目隠しをしてやり、そんな状況下に置かれた小瀬川白望を観察したかっただけであった。随分と不純な行為ではあるが、一応同意してやった事だと竹井久は自分に言い聞かせ、少しほど困惑する小瀬川白望をじっくりと目に焼き付ける。

 いつもは冷静沈着で絶対強者のオーラを放つ小瀬川白望も、視界を奪われた挙句放置されてしまった事で若干戸惑っているのが分かる。それが竹井久にとっては最高にたまらないものであった。竹井久はそっと携帯電話を取り出すと、無音カメラでそんな戸惑う小瀬川白望をこっそり撮影する。そしてこれは後でじっくり見ようと心に決めると、今度は小瀬川白望の危機感のなさについて心配になっていた。

 

(でもまさかあんな理由で何の警戒もせず承諾するなんて……ちょっと危なっかしいわね)

 

 自分でもお粗末であると言わざるを得ない誘導であったのにもかかわらず、小瀬川白望はあっさりと受け入れてしまったのだ。小瀬川白望の性格上、まさか自分だけには無警戒というわけでも無いだろう。そういう異常なまでの危機感のなさが、竹井久は心配と同時にもしかしたらという妄想を走らせる。

 

(もし、誰かに襲われたらどうするつもりよ……!?それこそ、辻垣内さんとかにでも狙われてたとしても、多分気付かないわよ……)

 

 そんな妄想をしながらも、そろそろ頃合いだと言った感じに竹井久はドアを開けて部屋の中に入る。その音を聞いたのか、小瀬川白望は見えない状態ながらも竹井久の方を向いて、安堵したような表情になる。そして安全が確保されたと思ったのか、すぐに小瀬川白望はいつものダランとした姿勢に戻り、竹井久が目隠しを外すのを待っていた。

 

「どこまで行ってたの、久」

 

 小瀬川白望はなかなか帰ってこなかった竹井久に向かってまず初めにそう質問した。もっとも竹井久はどこにも行っておらず、ドアの向こう側から覗き見をしていただけなのだが。

 無論そんな事を小瀬川白望に伝えるわけにもいかない竹井久は誤魔化すようにして「ああ……探したんだけど見つかんなくてね……今日はちょっと無理だわ。ごめんなさいね」と架空の謝罪をした。

 

「ふーん……それならいいけど」

 

(良いんだ……)

 

 そしてあっさり架空の謝罪を認めた小瀬川白望に対して竹井久は心の中でツッコミを入れる。そう言った小瀬川白望は背後を向いて竹井久に「ダルいからこの目隠しとって……」と言うと、またダルそうに姿勢を崩した。

 

「分かったわよ……」

 

 

(全く……どうしてこんなにも危機感が無いのかしら。まあただ好意を持たれてるって気付いていないだけなんでしょうけどね)

 

 そう推測する竹井久であったが、ここから彼女の思考がどんどん良く無い方へと捻じ曲がってしまう。

 

(でも……そんなに危機感が無いのなら、この場で襲っても……)

 

 そこまで思考して、竹井久はさっきまで目隠しに手をかけていたが、急に目隠しから手を離す。小瀬川白望は後ろを振り返って「……久?」と尋ねるが、小瀬川白望が言い終わる頃には既に小瀬川白望は竹井久に押し倒されていた。

 

「……ッ、久?」

 

 あくまでも平静を保ってる小瀬川白望であったが、流石に動揺しているという様が見て取れた。竹井久は静かな声で小瀬川白望に「もし、私が今白望さんを襲うとしたら……白望さんはどうする?」と聞き、小瀬川白望の腹部に手を当てる。

 

「襲うって……久が私を?」

 

 小瀬川白望は竹井久にそう聞き返す。竹井久は「そうよ。仮にそうだとして、白望さんはどうする?」と質問する。小瀬川白望はしばし悩んだようにしていたが、そんな彼女を見て竹井久は急に熱が冷めてしまった。

 

(……分かってるわよ。仮に私が襲うとしたとしても、白望さんは断れない。いや、断りはするんだろうけど、暴力を振るって逃げるなんて結論が出ないほど、白望さんは優しすぎる。それを分かってるのに、私は何を期待してたんだか……)

 

 そう竹井久が考えている間に小瀬川白望も一応の解答が出たのか、「……ダルいから襲うのは止めて欲しい」と言う。全くもって竹井久の予想通りであった。

 それを聞いた竹井久はどこか安心したような表情で「冗談よ、冗談。襲うわけないでしょ」と言って目隠しを外す。小瀬川白望は久々に光を見たせいか、しばらく目をショボショボさせていた。そんな彼女を見ながら、竹井久はあそこで強引に襲っていればと冗談交じりに少しばかり後悔していた。




そろそろお題箱のリクエスト消化もしたいですね。
因みに宮守の神域に関連しないリクエストはpixivの方でアカウントを作成して投稿しようと考えております。
お題箱以前のリクエストは…………すみませんでした(焼き土下座)

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