宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。


第294話 高校二年編 ⑩ 覗き

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視点:神の視点

 

「ふう……やっと作り終わった……」

 

 小瀬川白望達が愛宕姉妹の部屋で談笑なりで時間を使い潰してくれている間に全速力で六人分の夕食を作り終えた愛宕雅枝は、エプロンを身体から取り外すと、疲弊しきった体を椅子の上へ押し込むようにして座った。愛宕雅枝の旦那もくたくたに疲れたようで、ぐったりとしながら愛宕雅枝にこう言った。

 

「……どうする?自分らの夕食も作る?」

 

「……アンタ、この状態からまたキッチン立ちたいんか?」

 

「それは勘弁や……せやったらもう今日は飯抜きでもええわ……」

 

 そう言って立ち上がり、フラフラと寝室に向かって歩き出した旦那の事を見送りながら、部屋にいる自分の娘達を呼び、夕食を振る舞った。

 

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「ふう……オカン、いつも以上に美味かったで!」

 

 夕食を終え、食器を片付けている愛宕洋榎が愛宕雅枝に向かってそう言うと、愛宕雅枝は力無い声で「ああ、せやったか……そら良かったわ」と返した。愛宕洋榎はそんな母を見て「いきなりですまなかったな。後でなんか親孝行するわ」と言うと、愛宕雅枝は笑って「覚悟しときいよ……」と言って愛宕雅枝は栄養ドリンクを飲んでいた。

 

「風呂沸き次第入ってはよ寝ろな、お前たち」

 

 そして愛宕雅枝が六人に向かってそう言うと、了解の返事を言ったあと六人は愛宕姉妹の部屋に行った。それを見送った愛宕雅枝は、糸がプツリとと切れたかのようにソファーに倒れるようにして横たわり、そのまま眠ってしまった。

 

 

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「さー……お前ら、風呂どうする?」

 

 部屋に戻ってきてまず最初に愛宕洋榎が放った言葉はそれであった。それを聞いた他の五人はどうしようかと首を傾げる。言った愛宕洋榎と、真瀬由子と小瀬川白望は別にどうでもいいと思っていたのであったが、それ以外の愛宕絹恵、末原恭子、上重漫の三人にとっては重要な問題であった。どういう事が重要かといえば、簡単に言ってしまえば小瀬川白望と一緒に風呂に入るか否か、という事であった。流石に愛宕家が広いとはいえ、そんな五人や六人入れるようなスペースは存在していない。せいぜい二人が限度であり、小瀬川白望とそのもう一人になれるかどうかで三人は非常に険しい表情を浮かべていた。

 が、その三人の熱い思いを断ち切るかのように小瀬川白望がこんな事を言い放ってしまった。

 

「まあ一人ずつでいいんじゃない……一気に入れるわけじゃないし、皆ゆっくりお風呂に入りたいでしょ……」

 

(((なっ……!?)))

 

 そう言った途端三人は驚愕して小瀬川白望の事を見る。愛宕洋榎と真瀬由子も流石にこの発言に目も当てられないような反応を示していた。しかしそれに反対するとあまりにも不自然なので、結局小瀬川白望の案は通ってしまった。小瀬川白望のあまりにも人に寄せられている想いに気付けなさに若干呆れていた愛宕洋榎だったが、ここで妙案が浮かんだようで、愛宕洋榎が「よし……そうするか。じゃあシロちゃん、先入ってくれるか?」と小瀬川白望に向かって言った。

 

「うん……じゃあ先入ってくるね」

 

 小瀬川白望がそう返事をすると、パジャマと下着を持って風呂に入るべく部屋を出て行った。その姿をただ見ていた愛宕絹恵と末原恭子と上重漫は悲しそうな表情をしていたが、愛宕洋榎がその三人に向かってこう提案した。

 

「……よっしゃ、覗きに行くか」

 

「はっ、はあ!?」

 

 末原恭子が驚きのあまり声を上げるが、その末原恭子を制して愛宕洋榎がこう言った。愛宕洋榎も自分なりに末原恭子、愛宕絹恵、上重漫が小瀬川白望と一緒に風呂に入りたかったのだろうと気遣っているからの話であった。が、それはあくまでも建前であり、本音は小瀬川白望の裸を見て恥じらう三人を見て楽しみたかっただけであったのだが。

 

「まあ裸の付き合いっていうやろ。絹は一度やってるんだし」

 

「そう言う事じゃないわ……って絹ちゃん!?ホンマか!?」

 

「えっ、いや……その……」

 

「ホンマなのか!?」

 

 そう言って末原恭子は愛宕絹恵に問い詰めるが、愛宕絹恵は顔を赤くしながら「いやー……そんな……」とまともに答えようとはしなかった。そんな二人を引きずるようにして「じゃあ行くか。シロちゃんのナイスバディーを拝みに行くで」と言い、小瀬川白望の通ったであろう道を辿っていった。

 

 

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「ホンマにこんな事して大丈夫なんか……」

 

 洗面所と廊下を隔たるドアの目の前まで来た末原恭子は頭を抱えながらそう呟くが、真瀬由子は「多分白望ちゃんは気にしないと思うから大丈夫なのよー」と言って説得する。

 

(シロさんの身体……どんだけ成長しとるんやろ)

 

(服着てた時点で凄かったしなあ……どない感じなんやろ)

 

 

 そして一方の愛宕絹恵と上重漫は小瀬川白望の裸体に対して期待が次第に高まり、妄想に耽っていた。そんな二人を見て(……乗り気やな)と愛宕洋榎はニヤけながらも、目の前にあるドアをそっと開けるべくドアに手を伸ばした。音を立ててしまっては小瀬川白望にバレてしまうため、音を立てないように最大限集中してドアをそっと開ける。

 

(う、うわー……すっぽんぽんやんけ)

 

 あれだけ言っていた末原恭子も、1cmもないような隙間からしっかりと小瀬川白望の着替えシーンを見ていた。無論他の四人もそれぞれ小瀬川白望の身体を覗き、愛宕絹恵と上重漫は顔を赤くしながらじっくりと見ていた。

 

(確実にデカなっとるな……少しくらいウチにも分けてくれや)

 

(超ナイスバディーなのよー)

 

 愛宕洋榎と真瀬由子は小瀬川白望の身体を見て率直に感想を心の中で述べていたが、愛宕絹恵と上重漫はそれどころではなかった。

 

(やばい……あんな身体反則やろ……)

 

(なんやあの胸……)

 

 確実に小瀬川白望の身体に見惚れていた二人であったが、小瀬川白望が着替え終わったのか、浴室に入った後もその余韻に浸っていた。

 そのあとは部屋に戻った五人であったが、末原恭子と愛宕絹恵、上重漫の三人は悶々とした表情で小瀬川白望の次に風呂に入る人を決め、小瀬川白望の風呂上がりを待つのであった。

 

 

 




次回に続きます。

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