宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。


第301話 高校二年編 ⑰ 未来視

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視点:神の視点

 

 

「未来……やて?」

 

 清水谷竜華が、園城寺怜から告げられた意外すぎる告白に驚きを隠せず、思わず聞き返してしまう。流石の小瀬川白望も唐突すぎたのか、若干驚いたような表情を見せた。園城寺怜は清水谷竜華の問いにもちろん首を縦に振る。

 

「……未来って、あれやろ?何秒後とか……何日後とか……」

 

「それ以外に何があるねん」

 

 清水谷竜華の天然ボケに対し素早くピシッと突っ込む園城寺怜。その様子を見るに、どうやら本当に体調は良くなったらしい。ほんの数十分前に突然倒れ、救急車で搬送された人間とは思えないほどピンピンしている。

 

「未来ねえ……今も見えるの?」

 

 そしてそんな園城寺怜に小瀬川白望がそう尋ねると、園城寺怜は「どうやろな……偶々見えたから、どうやって見れるかは分からん……それに、その未来が見えた所為で倒れて死にかけたしな。さっき倒れたんはその未来視が原因や」と答える。確かに園城寺怜の言葉も尤もな事だ。未来が仮に見えるようになったとして、それを意図的に見る為にはどうすれば良いのか分からないのは当然の事だ。そしてその上で更に意図的に見る事ができたとしても、未来を見たのが原因で今回の事件を引き起こしてしまったのだ。もしもう一度見ようとすれば、それこそまた死にかける恐れがある。

 

「まあ……それが麻雀で生かせれるなら強いだろうね……」

 

「ちょ、シロさん!」

 

 清水谷竜華が小瀬川白望を制止するように発言する。勿論の事、小瀬川白望としても園城寺怜に無理はさせたくはないのだが、小瀬川白望の言う通り未来を見る事が麻雀に生かせれるならかなり強い部類に入るという事に関しては間違いはないだろう。無論、園城寺怜にかかるリスクはまた別の話としてだ。

 

「……せやね……そら未来視ができたら強いわ。……やるよ。ウチ。麻雀で試してみるわ」

 

「怜!?」

 

 が、しかし。園城寺怜は自分でできるかどうかも、本当に大丈夫なのかも分からないのを知ったその上でそう提案した。無論、その提案を真っ先に拒否したのは清水谷竜華であった。清水谷竜華は園城寺怜の肩をガッと掴むと、ここが病室である事も忘れて声を上げる。

 

「ダメや!怜!もう見たらアカン!」

 

「……りゅーか。ここは病室や。いくらウチらしかいないからといって騒いでええ事じゃないで。……それに、何言うとるんや」

 

 しかしいつも病弱だなんだのと言っていた園城寺怜もここは引き下がらず、清水谷竜華に反発する。ここで理にかなっているのは当然清水谷竜華の方であり、危険であるという事は十分園城寺怜は理解していた。当然、園城寺怜の言葉が嘘だと思っている人物などいるわけがなく、またそれを園城寺怜も良く分かっている。証明する事が目的でないのなら何故、園城寺怜はそこまでしてやろうというのか。そんな皆の疑問に答えるようにして園城寺怜は口を開く。

 

「安心せえ……まだ麻雀で見れると決まった訳やあらへんし……それにな?イケメンさんや竜華達が頑張ってるところ見ると……切なくなるねん。ウチもああいう風に皆と闘いたい、ってな」

 

「怜……」

 

「それに、イケメンさんは小学校の頃一度死にかけたやろ?……まあイケメンさんはその前も強かったけどな。……まあ、そんならウチもそれ位の努力をせんといかん……分かってくれ竜華。ウチにとってこれが高校最後のチャンスやねん」

 

 園城寺怜がそう言うと、清水谷竜華は黙りこくる。園城寺怜の身体を優先するべきか、園城寺怜の意思を優先するべきか。その二択で大いに迷っていた。しかし清水谷竜華が迷っていたところを横切るようにして小瀬川白望が、「いいよ。怜にその覚悟があるならやってみようか」と園城寺怜に向かって言った。

 

「ありがとうな、イケメンさん」

 

「大丈夫なんか?シロ」

 

 その話を先ほどまで黙っていた江口セーラが初めて口を開き、小瀬川白望に尋ねる。江口セーラもこの事に関しては園城寺怜の意向に任せるといった姿勢を保っていたものの、いざやるとなると本当に大丈夫なのかどうか怪しくなってくるものだ。

 

「どうだろうね……私も未来視なんて初めて聞いた事例だし……」

 

 無論、小瀬川白望も初めての事であるのでどうなのかは疑問だ。しかし、園城寺怜がやると言った以上ベストを尽くすのみだ。そう江口セーラに答える。

 

「……シロがそう言うんなら、ウチもサポートするで」

 

「じゃあウチはそのデータを採らせていただきます。もしかしたらその未来視に何か法則性が見えるかもしれませんしね」

 

「セーラ、船Q……」

 

「……分かったわ。分かったわ怜!怜がそこまで言うんやったら付き合うわ。但し怜、危なくなったら直ぐに言うんやで」

 

 そう清水谷竜華が忠告すると、園城寺怜は「ありがとうな、竜華」と微笑むと、愛宕雅枝が病室へ入ってきた。愛宕雅枝が入って開口一番に行った言葉は「怜、何か異変はあったか!?」であった。

 そして愛宕雅枝に園城寺怜に起こった異変を言うと、愛宕雅枝は「成る程なあ……あの医者の言う通りや」と答えた。

 

「それで、ウチはいつまでこの病室へいるんですか」

 

 園城寺怜は愛宕雅枝にそう尋ねる。ああは言ったものの、病室で寝かせられている状態で更に体に負担がかかるかもしれない事などできるわけがない。最低限ここから出られるまでは足踏みを食らう事になると思って園城寺怜が愛宕雅枝に尋ねたのだが、愛宕雅枝からは意外な答えが返ってきた。

 

「ああ、もう帰ってもいいそうや」

 

「えっ……?」

 

 清水谷竜華が思わずそう口に出すが、愛宕雅枝は「医者さん曰く、一時的なものだからもう治療や安静にする必要はないそうや」と説明する。

 

「ふーん……」

 

「ま、これで良かったんちゃうんか?シロがいる内に試せて」

 

「せやね……」

 

 そう言ったあとは園城寺怜が帰りの支度を始めるため、小瀬川白望らは病室から出る。そして小瀬川白望がトイレに行くという名目で誰もいない空間に来ると、赤木しげるに対してこう問い掛けた。

 

「ねえ、赤木さん」

 

【……例の嬢ちゃんの未来視の事か?】

 

「そうなんだけど……赤木さんがいた頃に未来視できる人っていた?」

 

 小瀬川白望がそう聞くと、赤木しげるは少し思い返すような間を空け、【どうだかな……曽我のは能力っていうより、長年の経験と勘によるものだからな……】と答える。

 

「……成る程ね」

 

【ま、あの嬢ちゃんに無理はさせないこったな。あの嬢ちゃんの未来視は麻雀でも十中八九使える。が、その後が問題……】

 

「というと?」

 

【要は『何処まで見えるか』という事……何秒見えるのかといった時間的な問題から……仮に見た未来と違った行動をした場合、その時はどうなるのか……まあ、何にせよ嬢ちゃんの身体じゃあせいぜい一……いや、二巡分の時間が限度だろうな。それ以上はそれこそあの嬢ちゃんの生死に関わる……】

 

「……分かった」

 

 そう小瀬川白望が言うと、赤木しげるは【まあ、自分の命を棒に振るような覚悟があるならやらせても面白いかもな……ククク……】と笑った。




次回に続きます。

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