宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。


第303話 高校二年編 ⑲ 改変

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視点:神の視点

 

 

「まあ……やっぱ慣れない分しんどいな……」

 

 園城寺怜はそう言いながら大きく一息つく。清水谷竜華はそう呟く園城寺怜に対して「大丈夫か?ちょっと休むか?」と声を掛けるが、園城寺怜は「まあ取り敢えず一局打とうや。流石に一巡もしないで休んでちゃ話にならん」と首を横に振った。

 そうして園城寺怜はもう一度息を吐くと、ゆっくりと手を伸ばして山から牌をツモってくる。ツモってきた牌が未来で見た通りなのかといちいち確認する必要はなく、園城寺怜はそれほど自分の『未来視』に対して自信を持っているという事だ。そしてやはりツモった牌は未来で見た通りの{六}であり、園城寺怜はフッと笑って手牌から{西}を切る。

 

(イケメンさんの手はかなり速そうやな……セーラと竜華はウチと同じくらい……未来が見えるからといってリアルラックが上がるわけやあらへんけど……まあこの力を加えて五分五分って感じか。……セーラと竜華に限っての話やけどな)

 

 そんな事を考えながら引き続き未来を見ようと試みる。その瞬間一気に世界がグリーンに染まるが、最初に見えたのは江口セーラがツモっている姿であった。どうやら局所だけを見る事は出来ないらしく、しっかり最初から見ないと先の未来は見えないようになっているらしかった。

 

(成る程な……永続的に見る事はウチの体力的に出来ないから、もーちょい先の未来を見るのは無理って事か。まあ局所だけ見れるとしたら和了った時のところを見ればそれで終わりやし、当然の話やな)

 

 園城寺怜は納得して江口セーラが打牌する所を見る。しかし、江口セーラが何を切るか分かっている園城寺怜にとっては見る必要のないものだが、それでも視覚的情報として入れておいた方が良いと思った怜は江口セーラの打牌を見ていた。

 

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(三萬を切ったらセーラに振り込むと……えらい使い勝手がええなあ)

 

 そして局が中盤に差し掛かろうとしていた頃、園城寺怜は最速で一向聴に到達する。確かに体力は消耗するが、それでも体力と引き換えに裏目と振り込みという危険が解消されるという事は大きいものであった。当然園城寺怜は{三}を切らずに{7}を切る。

 が、しかし。ここで小瀬川白望がアクションを仕掛ける。{7}を二枚晒してポンを宣言すると、{9}を打牌する。その事に園城寺怜は驚いていたが、直ぐに自分の能力についての穴を見つける事ができた。

 

(そうか……ウチが見た未来はウチがセオリー通り三萬を切った後の事だけやから、その未来から外れた場合の別の未来までは見てへんから危険っちゅうことか)

 

 園城寺怜は冷静に自分の能力を分析し、取り敢えずもう一度未来を見ようとした。が、今度はどれだけ見ようとしても一向に見れる事はできなかった。園城寺怜は一瞬焦るが、それだけで揺らぐほど園城寺怜の自信はヤワではない。直ぐに何故見れないのかを推理し、こういった結論に達する。

 

(……もしかすると、未来を変えた場合は当分は未来は見えへんって事か。これはもうこの局は未来が見えへんと考えた方がええな……)

 

 仮定の話なのだが、それに納得する園城寺。しかしその瞬間小瀬川白望に対しての園城寺怜の警戒心が高まる。未来が見えない以上、小瀬川白望がどのタイミングで和了り、どこで仕掛けてくるのかが分からない。それだけでなく、清水谷竜華と江口セーラも今の園城寺怜は地力だけなので、まともに対抗できる術はないのだ。

 

(こりゃあ致命的やな……未来を変えるのは本当に考えてからやな。今回はまだええけど、重要な時には振り込みもやむなしやな)

 

 そうして未来が見えなくなってから二巡が経過し、園城寺怜が再びツモをしようとした時、突然再び未来が見えるようになった。園城寺怜は先ほどまで全く見えなかったのにいきなり見えたので若干ビックリしたが、(ほーん……未来を変えたときに未来が見えなくなる期間はだいたい二巡くらいって事か)とだんだん自分の能力について理解を深めていた。

 

(……あっ)

 

 しかし、園城寺怜はそう心の中で声を漏らして固まる。園城寺怜が見ていた未来では、見事に江口セーラのツモの次に小瀬川白望がツモ和了をしていた。未来をまた変えようかとも思ったが、江口セーラが打った牌は自分は鳴けない。万事休すかと思われたが、園城寺怜はここで最後の賭けにでる。

 

(……セーラか竜華が鳴くことを期待して別の牌を切るしかないな)

 

 そう、園城寺怜は自分が切ろうとしていた牌を切らずに、未来を変えて先程のように予測外の鳴きが入ることを狙うという事であった。園城寺怜は祈って手牌を崩して打牌するが、江口セーラと清水谷竜華は何もアクションを起こそうとはしなかった。

 

(あー……やっぱ無理か。そんなに上手くはいかんなあ)

 

 誰も鳴いたり和了ったりしないのを見て、園城寺怜は諦めて手牌を伏せる。それを見た江口セーラと清水谷竜華は驚いて身構えていたが、小瀬川白望はニヤッと笑いながら園城寺怜の事を見つめていた。

 

(はは、流石やな……未来が見えてなくても、イケメンさんには関係無し、か)

 

 小瀬川白望の事を改めて尊敬し、称賛した園城寺怜は小瀬川白望がツモっている姿を見つめる。もちろん小瀬川白望はツモ和了をした。そうして局が終わり、園城寺怜は一度立ち上がろうとしたが、そこで一度フラつく。後ろにいた船久保浩子は園城寺怜を支え、皆が園城寺怜の周りに集まる。

 

「大丈夫?怜」

 

「イケメンさん……心配ありがとな。でもこの一局でウチの未来視について、大体分かったで。そして未来を見るのがめっちゃしんどいって事もな……」

 

 そう言って小瀬川白望に倒れ込む。小瀬川白望は慌てて園城寺怜を抱擁し、園城寺怜は小瀬川白望の胸の中でスヤスヤと寝息を立てていた。未来を見るという事がとても疲れる事なのだと皆が理解している中、園城寺怜は夢の世界へと旅立っていった。

 




次回に続きます。

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