宮守の神域   作:銀一色

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1日振りです。見事に夏風邪を引いてしまいました……
怜が病弱だのなんだの言う前に自分の健康管理をしっかりしなければ行けませんね……


第304話 高校二年編 ⑳ 宿泊

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視点:神の視点

 

 

「しっかしまあ……ごっつええ寝顔やな」

 

 江口セーラは先程の疲れのあまり眠ってしまっている園城寺怜を見ながら、ため息まじりにそう呟いた。そんな江口セーラに言葉に対し、園城寺怜の頭を膝に乗せている、いわゆる膝枕を園城寺怜にしていた清水谷竜華は園城寺怜の頭を撫でながら「寝る子は育つって言うしな。なあ?シロさん」と小瀬川白望の方を見て言う。いきなり振られた小瀬川白望は少し返答に迷ったが、暫くして「まあ竜華が言うならそうなんじゃない……?」と返す。

 それを聞いた江口セーラは小瀬川白望と清水谷竜華の首から腹までの部分を凝視し、「満更間違いでもないな……もっと寝とけば良かったわ……」と敗北感を抱きながらそう呟いた。すると愛宕雅枝はハハハと笑いながら休憩室に入ってきた。

 

「あー……なるほどな。だからウチの洋榎は絹恵と違ってあんなんなのか」

 

「おば……監督、それウチにも言うてないですか?」

 

 愛宕雅枝の後ろからフラフラとした足取りで部屋に入って来た船久保浩子がそう言うと、愛宕雅枝は後ろを振り向いて「なんや。めっちゃしんどそうやん」と声をかける。

 

「……小瀬川さんと打っただけでも既に心が折れそうになってるのに、その牌譜を整理なんてしたらそりゃあトラウマで頭痛くなりますよ」

 

「なんか……ごめんね。船久保さん」

 

 小瀬川白望がソファーに凭れ掛かりながら船久保浩子に向かってそう謝ると、船久保浩子は遠い目で何処かを見つめながら、「謝らんで大丈夫です……これも一種の修行ですわ……はは」と呟く。

 

「そういや、シロちゃん。アンタこの後どうするんや?またウチの家に泊まる訳でもないんやろ?」

 

 愛宕雅枝が思い出したかのように小瀬川白望に向かって尋ねると小瀬川白望は「あー……どうしよう」と相変わらず麻雀以外はポンコツな無計画ぶりを露呈したが、ここで清水谷竜華が「あれ?シロさんって辻垣内さんのとこから泊まるとことか用意させて貰ってるって怜から聞いてたけど……違ったんか?」と聞く。

 

「前はそうだったんだけどね。でも散々キャンセルしたから、高校になってからは必要になった時だけ言えって……まあ行くたびにキャンセルされたらそうするよね……」

 

(多分キャンセル自体が原因やなくてそのキャンセルの理由がアカンと思うよ……シロさん)

 

 清水谷竜華は辻垣内智葉の色々な苦労を心の中で察しながら、「ははは……そうやったんか」と笑いながら誤魔化した。多分言っても小瀬川白望には理解できないだろうと思ったのだろうが、全くもってその通りなので仕方がないといえば仕方がないのであろう。

 

「じゃ、じゃあ……オレの家に泊まるか?」

 

 それを聞いていた江口セーラは胸をバンと叩いて満を持してそう小瀬川白望に言った。いかにも今日は泊まっていけという姉御感でるセリフではあったが、緊張のあまり詰まる言葉の他にも、額に走る冷や汗と震える足がその威厳を掻き消しているという事は言うまでもなかった。

 

 

「……なんやてっ!?」

 

「怜!?」

 

 するとさっきまで清水谷竜華の膝を枕にしてスヤスヤと眠っていた園城寺怜が突然起き上がってそう叫ぶ。園城寺怜がいきなり起きたものだから、清水谷竜華は驚いて体が仰け反る。

 それを見ていた小瀬川白望は「どうしたの、怜」と声を掛けるが、園城寺怜は目に血を走らせるような勢いで小瀬川白望に詰め寄り、「イケメンさん……ウチの家に泊まっていこうや」と小瀬川白望のことを誘った。

 

「え、でも……」

 

「……どうかしたんか?」

 

「セーラが先に……」

 

 

 そう言った小瀬川白望は江口セーラの方を見ると、園城寺怜も「え?」と驚いて江口セーラの方を向く。見られた側の江口セーラも困惑したような表情を浮かべており、そしてその困惑の裏には微かな不安が隠されていた。そのことを読み取った小瀬川白望は「……セーラも一緒に怜の家に泊まる?まあ逆でもいいけど……それでいい?怜、セーラ」と江口セーラと園城寺怜、両方に提案する。

 

「オ、オレは別にそれでいいけど……」

 

「ウチもやで。先に言ったセーラから横取りするってのも後味悪いしな」

 

「じゃあそうしようか」

 

「ふふ……ありがとな、イケメンさん」

 

 園城寺怜は不敵な笑みを浮かべて小瀬川白望にそう言い残すと、ゆっくりとソファーに座り、息を切らす。清水谷竜華はそんな園城寺怜を見て「大丈夫か?怜。いきなり起きてあんなにはしゃいだから疲れとるんちゃうか?」と心配の声を掛けるが、園城寺怜は息を切らしていただけではなく、「ふ……ふふ……イケメンさんのカラダ……」と喜びに喘いでいただけであった。それに気づいた清水谷竜華は呆れたような目で園城寺怜のことを見て、それと同時に勝手に心配していた自分に馬鹿らしくなったのか船久保浩子の肩をガシッと掴み「さ、さ。ウチらははよ帰るで」と言って部屋から出て行った。

 

「何するんですか!?清水谷先輩!」

 

「いいから帰るで!

 

 愛宕雅枝も清水谷竜華と船久保浩子の後に続くように「まあまた暇になったらくるんやで、千里山のメンバーも、姫松のメンバーもいつでも待っとるからな、ほな」と言い残して部屋から去っていった。

 

「……それじゃあ、怜の家に行こうか。二人とも」

 

 そして部屋に取り残された小瀬川白望は園城寺怜と江口セーラにそう言うと、荷物を纏めて校舎から出て、校門の前まで来たところで「じゃあ……オレは泊まる用意してくるから、先行っててくれ」と江口セーラが言うと、その瞬間ダッシュで江口セーラは向こう側へ駆けて行った。そんな江口セーラを見送った園城寺怜はふっと笑い、心の中でこう呟いた。

 

(あんなガチガチになるくらいなら、なんで泊まろうなんて言ったんかな……ま、それほど愛してるってことなんやろうなあ)

 

「さ、ウチらは先に行くで!イケメンさん」

 

 小瀬川白望に向かってそう言った園城寺怜は小瀬川白望の腕を引くと、まるで病弱な人とは思えないほど軽快に歩き出す。小瀬川白望は園城寺怜に引っ張られるようにして園城寺怜の家へと向かっていった。

 




次回に続きます。

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