宮守の神域   作:銀一色

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まーた体調崩してしまいました。
よりにもよって休日に……いや、風邪を引いたところで休日の生活は変わらなかったですね(白目)


第317話 高校二年編 ㉝ 報告

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視点:神の視点

 

 

「ところで豊音。そろそろ帰らないと最後のバスに間に合わないんじゃないかい?」

 

 熊倉トシが手に掛けてある腕時計をチラと確認しながら小瀬川白望達と談笑していた姉帯豊音に向かって質問すると、姉帯豊音は熊倉トシに言われてそのことに気付き、もう二度とやってこないというわけではないと分かりつつも、今の幸せな時間が一時的に失われてしまう。そう思って少しほど泣きそうになりながらも「う、うん……そうだったよー……」としんみりとした口調で呟くと、立ち上がって帰りの支度をし始めようとするが、小瀬川白望が少しほど何かを考えたような仕草をとると、姉帯豊音に向かって「……別に、良いんじゃない」といった。

 姉帯豊音はそれを聞いて目を丸くしながら「え……?」と言ってソファーに背中を預ける小瀬川白望の方に視線を下ろすと、小瀬川白望はさも当然かのように姉帯豊音にこう言った。

 

「帰るのが嫌なら……泊まっていけば」

 

「ちょ、シロ!?」

 

 それに意を唱えるかのように叫んだ臼沢塞に小瀬川白望はダルそうに「どうしたの……塞。豊音とは知らない仲じゃないんだし、別に良いでしょ」と説得しようとするが、臼沢塞は「……そうじゃなくてっ!と、豊音が泊まるなら……わ、わ……」と途中まで言いかけ、しどろもどろになってしまう。小瀬川白望は「わ……?」と臼沢塞に疑問そうに言うと、臼沢塞は顔を赤くしながら「わ、私も泊まるわ!」と叫んだ。

 

「さ、塞が泊まるなら私も!」

 

「ワ、ワタシモ……!」

 

 臼沢塞に便乗するように鹿倉胡桃とエイスリンが手を挙げると、熊倉トシはふふっと笑いながら赤木しげるに向かって「おやおや。どうやらあなたの弟子さんはたいそう人気そうじゃないか?」と言うと、赤木しげるは笑って、【どうやらそうらしいな……いつか誰かに背後から刺されなきゃいいがな】と半ば呆れたような口調で言った。

 

「おっかない事言わないでおくれ。この麻雀部で死人が更に増えるなんて笑い話にもならないよ」

 

【確かにそうだが……嫉妬に塗れた女ほど厄介なものは無い……そう聞いた事がある。まあ嫁を二人ももらってたやつがいたから、実際にどうなのかは知らねえが……】

 

 赤木しげるがそう言うと、熊倉トシは小瀬川白望の周りにいる四人を見て「あの娘達に限ってそれは無いと信じたいね……」と若干冷や汗をかきながら呟いた。そして姉帯豊音に向かって「それで、白望の家に泊まるのかい?」と質問するが、姉帯豊音の真っ赤な顔を見て答えを聞く前に察した熊倉トシはこう言った。

 

「全く、村に連絡するこちらの身にもなっておくれよ?」

 

「あ、す、すみません……」

 

「ふふ、冗談だよ。めいいっぱい楽しんできておいで」

 

 頭を下げる姉帯豊音に向かって熊倉トシがそう告げると、姉帯豊音は笑顔を輝かせて「熊倉先生、ありがとうございます」と再び頭を下げた。そして今度はエイスリンに向かって「あなたの事も後で寮長に言っておくから、行ってきなさい」と言い、エイスリンが「ア、アリガトウ、ゴザイマス……」と答えると、最後に「白望」と、小瀬川白望の事を呼ぶ。

 

「エイスリンと豊音の事を頼んだよ」

 

「……分かりました。じゃあ、行こうか。みんな」

 

 熊倉トシに二人の事を頼まれた小瀬川白望は赤木しげるの墓石の欠片が入ってる巾着袋を持つと、四人を引き連れて部室を去っていった。そうして部室に取り残された熊倉トシは窓から五人の事を見送ると、携帯電話を取り出して姉帯豊音の村に電話をかけた。

 

 

 

 

 そして小瀬川白望が四人を連れて自らの家に向かっている最中、急に小瀬川白望は足を止めた。そんな彼女を見て、四人がハテナマークを浮かべていると、小瀬川白望は不意にこんな事を臼沢塞と鹿倉胡桃に向かって呟いた。

 

 

「……そういえば、来年大会出るって事、皆に伝えておこう……忘れない内に」

 

「そ、そうだね……」

 

「ま、まァ。良いんじゃない?改めて敵になるんだし!」

 

(……塞、なんかいつもより寛容……?)

 

 小瀬川白望が臼沢塞の反応に若干首を傾げていると、エイスリンが小瀬川白望の腕を引っ張って「ミンナッテ……ダレ?」と聞く。それに続くように姉帯豊音も「私も気になるよー」と問いた。小瀬川白望は「うーん……まあその話は家に帰ってからでいい?」と切り上げ、再び家に向かって歩き始めた五人であった。

 

 

 

 

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「……」

 

「どうしたんデス、サトハ。ケータイ握り締めテ」

 

 

 所変わって東京。家の庭の中で携帯電話を握りしめながら空を見上げていた辻垣内智葉の背中を見つけたメガン・ダヴァンが背中越しに質問すると、辻垣内智葉はゆっくりと振り向き、メガン・ダヴァンに持っていた携帯電話を投げつける。

 

「ワ、ワッ!?」

 

 メガン・ダヴァンは慌てながらも携帯電話を落とす事なく受け取る。いきなり投げてきた辻垣内智葉に文句を言おうとするが、それを黙殺して辻垣内智葉が「……やっとだ」と呟いた。メガン・ダヴァンは言っている意味が分からなかったが、携帯電話の画面を見て納得した。

 

「なるホド……そういう事でしタカ」

 

「……そういう事だ。来年が楽しみだよ」

 

 

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「……照。お前の言っていた事が本当になったな」

 

「うん……そうだね」

 

 同じく東京の白糸台では、宮永照と弘世菫が頬と頬を合わせながら二人で一つの携帯電話の画面を見ていた。すると宮永照が弘世菫に向かって「……菫、尭深と誠子呼んできて」と言った。弘世菫が「照が呼べば……いや。わかったよ。呼んでくる」と言い、部屋を出て行った。

 

(……最後の最後に立ちはだかるのはやっぱり、白望なんだね)

 

 

 

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「なになに……ほーん?オカン、聞いたか?」

 

 

 大阪の愛宕家では自分の部屋から飛び出してきた愛宕洋榎が、千里山から帰ってきたばかりで疲れている様子の愛宕雅枝にそう言葉をかける。愛宕雅枝は「なにがや?」と動きを止めると、愛宕洋榎が差し出した携帯電話を見る。

 

「シロちゃん、来年大会に出るって!」

 

「……は、ハア!?」

 

 それを聞きつけてきたのか、居間にいた愛宕絹恵が「ほ、ホンマかお姉ちゃん!」と言って自分の携帯電話にも届いているのにも関わらず、愛宕洋榎の携帯電話を見た。

 

「やっとや……ウチが求めてたんがやっとこれで実現したわ!」

 

 

「……勘弁してや」

 

 

 右手でガッツポーズをとり、意気込む愛宕洋榎とその対称に顔を引きつらせる愛宕雅枝。そして愛宕洋榎の携帯電話を握り締めていた愛宕絹恵は、敵が増えたというのにも関わらず、姉とはまた違った理由でどこか嬉しそうな表情をしていた。

 

 

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次回はお泊まり回です。

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