宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。


第335話 地区大会編 ⑬ 記録更新

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視点:神の視点

 

 

『ツモ。2000、4000で終了……ありがとうございました』

 

 

 

 

「シロ、流石だねー……圧倒的トップだよー」

 

「いくら地区大会とはいえ……これだけ暴れれば注目を受けるだろうねえ……うちの最終兵器なんだけど」

 

 観客席から小瀬川白望の対局、もとい虐殺を呆然と観戦していた熊倉トシが呆れたようにため息をつきながらそう言う。隣にいた臼沢塞が「まあ全国にシロを知ってる人はいますし……今更な気もしますが」とフォローをすると、熊倉トシは諦めたように「まあそうなんだけどね……」と呟いた。

 

「シロと一緒に打ってる人が可哀想な気もするけど……」

 

「ミンナ、メガシンデル……」

 

 そして鹿倉胡桃とエイスリン・ウィッシュアートが小瀬川白望と一緒に対局していた人たちに対して同情の意を述べていると、その元凶である小瀬川白望がしんどそうな体勢で皆の元へと戻ってきた。それを見た姉帯豊音が「最後の試合、お疲れ様だよー」と言うと、小瀬川白望は「うん……豊音もお疲れ」と言い、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。

 

「フタリトモ、オツカレサマ!」

 

「まあやっぱりシロと豊音のワンツーフィニッシュだったね」

 

「えへへ……まあシロにはボロ負けだったけどー」

 

 姉帯豊音が口ではそう言いつつも、照れ臭そうにして答えていると、小瀬川白望は「まあ……思いっきり打てたから楽しかったよ」と言う。先ほど姉帯豊音を泣かせて罪悪感を感じていた人物の発言には思えないが、だからと言って手を抜くわけにもいかないのは小瀬川白望からしてみれば当然のことだ。

 

「……一体今日だけでシロはいくつ記録を塗り替えたんですか?」

 

 そんな小瀬川白望を若干呆れたような表情で見ていた臼沢塞が熊倉トシに向かって尋ねると、熊倉トシは自身の持っていたタブレット端末を臼沢塞に差し出し「今のところで確認したのはこれくらいだね。まあ、もうちょっとあるかもしれないけど。大半の岩手県の個人戦記録が今日だけで塗り変わっちまったよ」と驚きと呆れを言葉に含ませてそう言った。そう言われて臼沢塞の持つタブレット端末を全員で見て、小瀬川白望のことを感嘆した。

 

 

 

 

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「お疲れ様デス、サトハ」

 

「サトハ、気合入ってるね!」

 

 所変わって東京では、辻垣内智葉がつい先ほど個人戦の地区予選を終え、無事にインターハイ出場を決めていたところであった。辻垣内智葉は体に巻いていたサラシを取りながら、「まあシロとの前哨戦のようなものだからな。団体戦では当たる事はないし、気合いを入れるのも当然だ」と答えた。

 

「その白望さんですけど、ついさっきインターハイ出場を決めたようですね。先ほどネットニュースで大幅に記録を更新したとか載っていましたし……」

 

 

「まあ、記録更新くらいやってくるだろうな。当然と言えば当然だ」

 

(そう言ってるサトハもさっき自分の記録を更新していましたケドネ……)

 

 メガン・ダヴァンがそんなことを心の中でつぶやいていると、郝慧宇が辻垣内智葉に向かって「その『シロ』とは一体何者なんですか?過去のインターハイや世界大会でも聞いた事がないんですけど……」と質問する。

 

「そういえばお前は知らないんだったな。……まあ、この中にいる誰よりも強いやつって言えば分かるか?」

 

「智葉よりもですか?」

 

「まあな……勝った試しがないしな」

 

 それを聞いた郝慧宇が「そうなんですか……中国麻将でも勝てませんかね?」と言うと、アレクサンドラ・ヴィントハイムが横から「役とルールさえ覚えれば多分ハオでも勝てないだろうね。彼女は底無しだよ」と言う。

 

 

「まあそうだろうな。シロにどんなハンデを背負わせても勝てはしないだろうからな」

 

 そんなことを話していると、メガン・ダヴァンと雀明華、そして辻垣内智葉の携帯電話が鳴った。辻垣内智葉が携帯電話を開いて誰からのメールかを確認すると、「やはりな」と呟いた。

 

「シロサンですネ」

 

「まあ、そうだな。そしてどうやら宮永と愛宕もインターハイ出場を決めたようだ」

 

「その面子というと……あの時以来ということか?」

 

 アレクサンドラ・ヴィントハイムが辻垣内智葉に向かってそう言うと、ネリー・ヴィルサラーゼがメガン・ダヴァンに向かって「あの時ってどの時のこと?ネリー聞いたことないけど」と質問する。

 

「ワタシもサトハから聞いた話ですケド……どうやら六年前に全国大会の決勝で当たったメンツらしいデス」

 

「ふーん……そうだったんだ」

 

「そしてその内の一人は明華、団体戦ではお前と同じ中堅らしいぞ」

 

 辻垣内智葉が雀明華に向かってそう言うと、雀明華は少し嫉妬したような声色で「そうですか……じゃあその人と当たったら全力で潰しに行きますね……」と呟いた。そんな雀明華を尻目に、ネリーはメガン・ダヴァンに耳打ちするようにこう聞いた。

 

「……なんで明華、ちょっと怒ってるの?」

 

「……タブン、嫉妬してるんじゃないんデスカ?その人がシロサンの事をどう思ってるかは知りませんケド……」

 

「ふーん……まあ、その気持ちは分からなくもないけどね」

 

 

(ネリーは温厚で本当に良かったデス……)

 

 

 ネリーの何気ない返答がメガン・ダヴァンの胃の痛みを治めていたりするのだが、メガン・ダヴァンの胃を痛くする元凶の一人である雀明華はメガン・ダヴァンの隣で嫉妬で静かに心を燃やしていた。

 




次回に続きます。

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