宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。
隔日になってきてますね……


第353話 一回戦編 ⑤ ファン

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視点:神の視点

 

 

「んん〜……やっぱり東京の朝は違うっすね!先輩」

 

「ふふ。そうだな、長野とはまた違った清々しい朝だ」

 

 前日から東京へやってきていた鶴賀女子の東横桃子が背筋を張りながらインターハイの会場へと向かって加治木ゆみと東京の街を歩いていた。その前を蒲原智美と津山睦月と妹尾佳織が歩いているという構図の中で、加治木ゆみは自身も高校生になってからは訪れたことのなかった東京の街を見回しながら歩いていた。

 

「ワハハ。ゆみちんがこんなにはしゃぐなんて珍しいな」

 

「そ、そんなにだったか?」

 

「そうには見えませんでしたけど……」

 

 蒲原智美の発言に妹尾佳織と本人の加治木ゆみが驚いた表情で意を唱えると、蒲原智美はチッチッチ、と舌を鳴らして「ワハハ……甘いなゆみちん。いつからの付き合いだと思ってるんだ?」得意気に言うと、図星だった加治木ゆみは羞恥で少し顔を赤らめながら、蒲原智美に「いいから前を向け……別にいいだろう。少し興奮したって」と指で前を指すと、顔をスッと蒲原智美から逸らした。

 

(ちょっと子供っぽい先輩もいいっすね……)

 

 そんな加治木ゆみを微笑ましく……いや、何方かと言えばいやらしい目で見ていた東横桃子は心の中で半ば興奮気味にそう呟いた。加治木ゆみはそう思われている事には気づいていなかったが、恥ずかしさのためか覚束ない足でインターハイの会場まで向かっていった。

 そうして眼前にインターハイの会場の入り口が広がったところで、突如加治木ゆみの足が止まった。前を歩いている蒲原智美達は気づかず、そのまま入り口へと向かって行ったが、東横桃子は加治木ゆみが足を止めている事にいち早く気づいた。疑問そうに加治木ゆみの表情を見てみれば、加治木ゆみは驚愕したような表情で立ち尽くしていた。

 

「ま、まさか……」

 

「……先輩?」

 

 東横桃子が声をかけようとしたその刹那、加治木ゆみは振り返って「……そこの君!」と、声を上げた。東横桃子もいきなり声を上げた加治木ゆみに対して驚きながらも、加治木ゆみが呼び止めた人間を見る。すると、そこには白銀の髪色の小瀬川白望がいた。向こう側を向いていた小瀬川白望は自分が呼ばれたと感じ、振り返って加治木ゆみの方を見ると、「……何方様」とどこか素っ気ない返事をする。

 

「……もしかして、名前は小瀬川白望だったりするか?」

 

「そうだけど……それが?」

 

 小瀬川白望が聞き返すと、加治木ゆみはどこか満足したような表情で「いや……合ってるなら良いんだ。引き止めてすまなかったな」と言って東横桃子に「じゃあモモ。行こうか」と声を掛けて会場の入り口に向かって行った。急に声を掛けられて急に帰られた小瀬川白望は何のことだと思いながらも、(……ま、なんでもいいか)と前向きに捉えて近くにある自動販売機の方へと向かって行った。

 

 

 

 

「せ、先輩!どうしたんすかいきなり!」

 

「ん、モモ。……さっきの人か?」

 

「勿論その人の事っす……先輩の知り合いっすか?」

 

 一方の東横桃子が加治木ゆみにさっき声を掛けた意図を聞いて見ると、加治木ゆみは「いや、そんなんじゃないさ。何て言えば良いのかな……私の憧れの人、って言えばいいか」と返す。しかし、ますます訳の分からなくなった東横桃子は首を傾げているが、加治木ゆみは心の中で満足気にこう呟いていた。

 

(……もう何年前になるだろうか。小さい頃、私と同じくらいの子がテレビの向こう側で死闘を繰り広げていたのを見たのは)

 

(もっとも……私も智美を介して麻雀に触れ合うまで記憶がすっかり消えて無くなっていたんだがな。麻雀を続ける内に段々と思い出してた……まあ、名前と、当時言っていたセリフ……『その嶺上取る必要なし』。それしか思い出す事しかできなかったが……まさかこんなところで出会えるとは)

 

 幼少期に見た小瀬川白望に感銘を受けた加治木ゆみが、まさかその本人に思い掛けない形で出会えるとは思っていなかった。勿論、声を掛けた人物が小瀬川白望だと確信していたわけでもない。直感。会場に入るときに感じたあのオーラを頼りに思わず声を掛けてしまったのであった。

 

(……全く。世界は狭いな)

 

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「はい、豊音。どうぞ」

 

「わーい!ありがとうだよー!」

 

 インターハイの一回戦目、先鋒戦を終えてきた姉帯豊音に先ほど自販機で買った飲み物を小瀬川白望が渡す。やはりインターハイといえども、姉帯豊音を止めるという事は相手にとってかなり難しいらしく、終始姉帯豊音のムードであった。熊倉トシが「豊音。お疲れ様」と労いの声をかけると、次鋒戦に出て行くエイスリンに向かってこう言った。

 

「エイスリン。できる限りでいいから、余裕があったら中堅戦まで回してくれないかしら?二回戦を見据えて胡桃と塞の調整をしたいんだけど」

 

「ウーン……ムズカシイ、ケド、ガンバル!」

 

 エイスリンはそう意気込んで部屋から出て行くと、小瀬川白望が熊倉トシに「……調整とか必要かな。エイスリンに自由にやらせた方がいいと思うけど……」と言うと、熊倉トシは「確かにそうだけど、塞も胡桃も、あんたのような強心臓じゃないんだ。重圧に慣れてもらうためだよ」と説得するように言った。

 

「……そういえば。さっき知らない女の人から声を掛けられたんだけど」

 

「!?」

 

 不意に小瀬川白望がそう発言すると、臼沢塞は驚いて咳き込む。鹿倉胡桃はそんな臼沢塞を心配しながら「何もされなかった?大丈夫?」と小瀬川白望に尋ねると、小瀬川白望は「いや……名前確認されただけで、後は満足して帰ってったよ」と言うと、姉帯豊音は「多分、シロのファンじゃないかなー?シロ、有名人なんだよー!」と言った。

 

「そういうもんかな……」

 

「……何処の馬の骨かも分からないやつにシロを渡せない……」

 

「塞、目が笑ってないよ!怖いよ!」

 

 鹿倉胡桃が臼沢塞にそう言っていると、モニターではそろそろ次鋒戦が始まる様子で、エイスリンが既に卓についていた。無論、先鋒戦で大量に削られた他校の生徒の表情は良くはない。いくら点棒の差があるとはいえ、最初の心構えの時点でエイスリンの一人勝ちになる事は明らかであった。

 

 

 

 




次回に続きます。
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