宮守の神域   作:銀一色

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今回から二回戦A編です。


第358話 二回戦A編 試合前

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視点:神の視点

 

 

(ん、宮永んやつからメールが早速帰ってきたばい)

 

 時同じくして、ホテルの部屋で鶴田姫子と共にゆったりとした時間を過ごしていた白水哩は、早速宮永照からメールの返信が届いたことに気づき、携帯電話を取り出して中身を確認する。そこには宮永照の性格が顕著に表れていると言えばいいのか、簡潔で淡白な文章が送られてきた。そんなメールを見ながらふふっと笑った白水哩は(相変わらずやんね……)と心の中で声を漏らしていると、鶴田姫子から「ぶちょー。どうしたとです?」と聞かれると、白水哩は携帯電話をしまい、「チャンピオンからのメールばい」と言った。

 

「てっきり白望さんのメールかと思っとったです。ニヤついてましたし……」

 

 白水哩の言葉に対し鶴田姫子がそう呟くと、白水哩は思わず噎せてしまう。そして顔を若干赤くしながらも「な、何言っとるばい。姫子……」と言うが、鶴田姫子は「まあ、そうじゃないならそれはそれで良かとです」と言ってペットボトルの中に入ってある清涼飲料水を飲む。そんな鶴田姫子を見ながら、白水哩はこんな事を考えていた。

 

(姫子が分かるほど顔にでとったんかさっき……)

 

(というか、私がシロの事ば考えとる時はいつもニヤついてるんか……!?)

 

 そう考えれば考えるほど白水哩の頭の中は羞恥心でいっぱいになっている。そんなベッドの上に寝転がって悶えている白水哩を、鶴田姫子は微笑ましそうな表情で見ていた。

 

 

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視点:神の視点

 

 

 翌日。昨日の時点で団体戦一回戦が終了したため、今日からはいよいよシード校のお出ましとなる二回戦が始まる事となっていた。しかも、その二回戦第一試合は昨年のインターハイで王者となっていた宮永照率いる白糸台が出場する事となっており、早朝ながらも会場は人で埋め尽くされていた。観戦客はもちろん、テレビや雑誌、新聞などに携わっている人達もチャンピオンである白糸台の活躍を見に、沢山の人がやって来た。

 

 

「……結構人が多いね。朝早くから……」

 

「そりゃあ、昨年優勝校の白糸台が出るんだもん、そりゃあいっぱいくるよ」

 

「まあ胡桃の言う通りかあ……」

 

 そしてこの宮守女子も他と同じように昨年優勝校である白糸台の試合を見にこの会場まで足を運んでいた。しかし、小瀬川白望は白糸台も勿論のこと、白水哩と鶴田姫子、そして花田煌がいる新道寺の事も気になっていたのだ。故にテレビ中継ではなく、こうしてわざわざ会場まで足を運んできたのである。……実のところ、今日の朝も小瀬川白望は起きれずに臼沢塞から叩き起こされたのだが。

 

「豊音は白糸台の宮永さん、ちゃんと見ておかないとね」

 

「そうだねー。当たるとしたら決勝だけど、しっかり見ておかないといけないよー」

 

 臼沢塞にそう言われた姉帯豊音がこう返すと、エイスリンが「ドウシテ?」と首を傾げて疑問を投げつける。

 

「ああ、エイスリンは知らないんだっけか。白糸台の先鋒の宮永さんは、昨年のインターハイの優勝者なんだよ」

 

 臼沢塞がエイスリンの疑問に答えると、エイスリンは耳にかけていたペンを取り出して、ホワイトボードにサラサラと何かを書くと、「チャンピオン?」と言って臼沢塞に王冠の絵を見せる。それを見た臼沢塞は「そうそう。だから豊音にとって一番の強敵になるかもね」と言った。

 

「白望の方はどうだい、新道寺の大将の子は知ってるからまあいいとして、白糸台の大将の子。あの子のことは知らないんだろう?」

 

 そんな話を聞いていた熊倉トシが少し心配そうに白糸台の大将……それを担う一年生の大星淡の事について小瀬川白望に問い掛ける。が、小瀬川白望は澄ました表情で「まあ……全然知らないですけど、相当『できる』子だと思いますよ。大将を任されるくらいですし……」と答えた。

 

「まあ、この試合を見ないとどうかは断言できないですけどね……」

 

「確かにそうだけど、まず大将戦まで見れるのかい?」

 

 熊倉トシが小瀬川白望にそう言う。熊倉トシがそんな事を言ったのにはある理由があった。それは大将戦に行くまでに決着がつく可能性が高いと熊倉トシが読んでいたからであった。確かに、先鋒戦の時点で白糸台は宮永照、それに対して新道寺は花田煌と、既に大きな力量差が存在している。残りの二校も、宮永照の独壇場に待ったをかけられるような人材はいない。そして先鋒戦が終われば次鋒の弘世菫、中堅には渋谷尭深と、新道寺の要である白水哩、そして鶴田姫子の二大エースがいる副将戦にまで勝負が縺れ込むかどうかすら怪しい状況である。もっと言えば、宮永照が大暴れして先鋒戦だけで終わってしまうかもしれない。そう言った意味で小瀬川白望にそう言ったのだが、小瀬川白望は「どうでしょうね……」と案外気にしてなさげな声色でそう言った。

 

「どうなるかは分かりませんけど……まあそんなもしもの話をしても、埒があかないですよ」

 

「ま、まあそりゃあそうだけどね……」

 

「……でも、少なくとも先鋒戦では終わらないと思いますよ」

 

 小瀬川白望がそう言うと、熊倉トシは興味深そうに「……どう言う事だい?」と小瀬川白望に尋ねる。小瀬川白望は「新道寺の先鋒……あの人、追い込まれれば追い込まれるほど強くなるのか……それともそういう能力なのか。それは分かりませんでしたけど、飛びませんよ。多分照相手でも」と語った。

 

「そんな凄い子には地区大会や一回戦を見てもそう見えなかったけど……そうなのかい?」

 

「……ええ。一回だけですけど。私が飛ばそうとしても、飛ばなかったですから。花田さん」

 

 熊倉トシは驚いたような表情で「あんたでもかい?そりゃあ本物だね」と言う。が、小瀬川白望は「まあ……普通の麻雀の腕はまだまだでしたけど」と付け加える。

 

「成る程ね……まあ、その点も注目だね」

 

 そんな話をしているうちに、あと少しで二回戦第一試合が始まろうとしていた。会場の大きなモニターでは、既に先鋒戦の四人が対局会場に立っていた。




次回から対局が始まる(予定)です。

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