宮守の神域   作:銀一色

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今回は分量が少ないです。


第366話 二回戦A編 ⑨ 役満前提

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視点:神の視点

南二局 親:白糸台 ドラ{中}

新道寺  103600

白糸台  153500

柏山学院  67600

苅安賀   75300

 

 

 

 

「ポン」

 

渋谷尭深:三巡目

{一二六六七八八③⑥24} {⑦横⑦⑦}

打{一}

 

 

 中堅戦の前半戦、二回目の親番となった渋谷尭深は三巡目というかなり早い段階から自分の手に見切りをつけて鳴きに行く。それを見た江崎仁美は(……やっぱり、哩の言ってた事は本当やね)と心の中で呟きながら、()()()()()()()()を凝視していた。

 

渋谷尭深:捨て牌

{北1一}

 

 彼女が渋谷尭深の捨て牌に注目していたのは、渋谷尭深の能力収穫の時(ハーベストタイム)に理由があった。収穫の時と書いてハーベストタイムと呼ぶこの能力は、常時発動されるものではなく、オーラスの時のみその真価が発揮される事となる。オーラスまでの東一局から南三局、それまでに捨てられた一番最初の牌。それがオーラスに一気に戻ってくるというものだ。渋谷尭深のオーラスでの役満和了率が常軌を逸した数字になるのはこの能力のせいであった。

 そして、渋谷尭深が今こうしてやけに速攻をしようとしているのにもこの能力が大きく関わってくる。最初に捨てた牌が全て戻ってくるのだから、当然局数が増えればその分戻ってくる牌は増えるから、親の時はできるだけ連荘を続け、それ以外の時は失点を抑えつつできる事ならば親に和了らせる。そうする事によって彼女のオーラスの配牌の九割を決定させる事ができる。原理はとても簡単で、彼女の行動も至極当然な話ではあるが、彼女と同卓している者からしてみれば溜まったものではない。故に、どうにかしてでも彼女の連荘を防がなければいけないのだが、江崎仁美は頭の中で思考を巡らせる。

 

(……こん南二局で九局目。最低でも十三牌中十牌が渋谷ん仕込んだ牌。……正直、役満ば止めれるとは思っとらん。……だから)

 

 そう、だからこそ渋谷尭深の速攻に無理に対抗するよりかは、渋谷尭深の役満に備えて、それまでにどれだけ点棒を保持できるかにかかっている。江崎仁美の言う通り、オーラスでは圧倒的に渋谷尭深が有利であり、彼女の役満を止めるのはほぼ不可能だと言っても過言ではない。だから正直なところ、オーラスまでの局数など、オーラスでの圧倒的不利な状況で渋谷尭深を抑えるほどの力を有していない江崎仁美には些細な話であった。

 

「ロン、1500……」

 

渋谷尭深:和了形

{六六七八八③③234} {⑦横⑦⑦}

柏山学院

打{七}

 

 

 結局この局は速攻に重きを置いた渋谷尭深が順当に柏山学院から撃ち取り、連荘へと繋ぐ。江崎仁美と同じように、オーラスで直接渋谷尭深をどうにかするというよりかは、オーラスまでに点棒を集めて役満に備えるというもはや『渋谷尭深が役満を和了る前提』の空気となりつつあった。本人もその空気の変化には気付いており、(……そういう事なら。私も思う存分やらせてもらいますけどね)と、俄然やる気を出していた。

 

(……収穫の時は、どうやらまだ先の話になるようです)

 

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「……オーラスまでに十二局、かあ」

 

「今まで見てたけど……それが何か関係があるの?そうには思えないけど……」

 

 小瀬川白望がそう呟くのに対し、鹿倉胡桃は未だに渋谷尭深の能力の詳細については何も分かってはいなかった。鹿倉胡桃が小瀬川白望に尋ねてみると、小瀬川白望は「……尭深が、各局に何を一番最初に捨てた牌か、十二局分覚えてる?」と鹿倉胡桃に向かって質問する。

 

「え?最初に捨てた牌?……えーっと……って、十二局分って、そんなに覚えてないよ!?」

 

「……そっか。それはごめん……最初に言っておけば良かったね。まあ、尭深はこれまでに{東}二回、{北}二回、{西}二回、{南}三回、{中}三回……それらを尭深は一番最初に捨ててる。今ので覚えた?」

 

「う、うん……でもそれが?」

 

 鹿倉胡桃が小瀬川白望にそう言うと、小瀬川白望はモニターの方を指差して「……オーラスの尭深の配牌。それを見れば分かるよ」と言う。そう言われ、鹿倉胡桃だけでなく、他の宮守メンバーもモニターをじっくりと見始める。すると、渋谷尭深の配牌には{東、北、西}が二枚、{南、中}が三枚集まっていた。鹿倉胡桃が感嘆の声を漏らすと、小瀬川白望が「これが尭深の能力……局の最初に捨てた牌がオーラスに一気に集まってくる能力」と呟いた。

 

「まあ局数が十三以上になったり、それまでに捨てた牌が同じ牌で5枚以上になった時どうなるのかは尭深にしか分からないと思うけど……それでも尭深の能力は脅威だね」

 

 そう淡々と呟く小瀬川白望。だがその一方で、鹿倉胡桃は思わず気が滅入ってしまった。確かに白糸台と当たるとなれば決勝以外ないのだが、もし当たったとしたらかなり大変な事になる。そんな気がして、今から疲れていた。

 

(……そう思うと、胡桃も結構大変なところだよなあ……尭深に洋榎、セーラに久に明華。中堅でも強敵揃いな事には変わりないか……)

 

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