宮守の神域   作:銀一色

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第369話 二回戦A編 ⑫ 屈辱

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視点:神の視点

東二局 親:新道寺 ドラ{白}

柏山学院  47300

新道寺  111800

苅安賀   43200

白糸台  197700

 

 

 前局の東一局では既に二副露していた亦野誠子に対し、白水哩が一気に三副露をしかけてそのままの勢いで満貫和了。当の白水哩は満貫をツモれるならリザベーションをかけても良かったかと若干後悔していたのに対し、亦野誠子は自分の御株である三副露後の和了を自分が披露する前に奪われ、憤慨していた。

 

(くっ……まさか先に三副露された上に和了られるなんて……これ以上の屈辱があるか!)

 

 亦野誠子は心の中でそう叫びながら、自分のスカートをギュッと力一杯握り締める。彼女にとって今の和了は屈辱以外の何物でもなかった。まるで、自分に出来ることは白水哩であれば何でもできる。そのような格の違いを思い知らされたような気がしてならなかった。

 

 

白水哩:配牌

{三赤五六八八①③⑤⑥789白}

 

(……こん配牌、流れも良か。亦野の情報ば得るのも大事やけど……ばってん、ここは攻め時……!)

 

 一方の白水哩はというと、亦野誠子が内心で屈辱を味わっていることなど何処吹く風、白水哩は既に次の手を考えていたところであった。手牌を伏せると同時に、白水哩は意識を集中させる。

 

(リザベーション……二飜(ツー)!)

 

 

 

 

 

 

「……ッ、〜!!」

 

「お、来たばい」

 

 白水哩が心の中でリザベーションの発動を宣言すると同時に、鶴田姫子の身体を言葉では言い表すことのできぬ感覚が覆い尽くす。通常ならば突然何事かと心配されそうな事態であるが、幾度となくこのような光景を見てきた新道寺メンバーの反応は意外とドライであった。

 

(いつみても姫子のあれは慣れないですね……色々とすばらくない)

 

 が、若干名この光景に慣れぬ者もいるにはいる。まあ、慣れない花田煌が正常なのであって、むしろこの光景に慣れる方が異常なのだが……

 

「……今のはどんくらいやった?」

 

「そ、そうですね……二飜くらいかと……」

 

「まあそんくらいか。いつもよか抑えめやったからね」

 

 江崎仁美がそう言って平然とカップの中にある飲み物をストローで啜る。やはり花田煌がこれに慣れるには時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……冷静さを欠いてるな。よっぽど屈辱的だったか」

 

 一方、亦野誠子の様子を控室で見ていた弘世菫は若干心配そうに見ながらそう呟く。すると渋谷尭深から菓子類を食べさせてもらった……言い方を変えれば餌付けされていた大星淡は「でも、亦野先輩の気持ちも分かるかも!私もダブリーで和了られたらちょっとイラッとくるし!」と言う。

 

「それに、菫先輩だってさっきシンドージから中々直撃が取れなくてイライラしてたでしょ?」

 

「いや、まあ……確かにそうだったんだがな……」

 

 大星淡に痛いところをつかれた弘世菫は少し恥ずかしそうに顔を逸らしてそう言うが、その直後に咳払いをして「しかし……私はそれでも無事に終わったが……誠子の場合はそうはいかんぞ……」と言ってモニターに映る白水哩の事を見つめる。そう、弘世菫はまだ相手が安河内美子と、何とかなる範囲の敵であったからこそ弘世菫が冷静さを欠いても無事で済んだのだ。然し乍ら、亦野誠子は状況が違う。相手は負けはしたが宮永照とまともに闘える程の実力の持ち主。エースの中のエースなのだ。

 

「……これはちょっと危ないかも」

 

「そう、照の言う通りだ……いくら十万近い点差があるとはいえ、どうなるかはまだ分からん……淡、お前には予め言っとくが、あまり感情的になるなよ」

 

「分かってますってー!この淡ちゃんにお任せくださいなー!」

 

 大星淡が胸を張ってそう高らかに宣言する。弘世菫はそれを見て若干胃が痛くなるが、それよりも何よりも今の亦野誠子。そのことが気になって仕方がなかった。

 

 

 

 

「ポン!」

 

 

亦野誠子:五巡目

{四②②③④④赤56} {二二横二} {2横22}

打{四}

 

 

(後……一つ……!)

 

 

 五巡目ながらもこれで二副露目と、前局と合わせてかなりハイペースに手を仕上げる亦野誠子。しかも今度の手は上手く和了れば断么対々和三色同刻も夢ではない好手。しかし、白水哩はそれを上手く封じ込める。

 

 

「ロン。四十符三飜は5200」

 

 

白水哩:和了形

{三赤五六六七七八八⑥⑥678}

 

白糸台

打{四}

 

 

(リザベーション……クリア)

 

 

 

 

(なっ……嵌{四}待ち……!)

 

 

 {二}をポンして余った{四}を捨てる。亦野誠子からしてみれば当然の判断だが、白水哩はまさにそれを待っていたかのように嵌張{四}待ち。完全に亦野誠子の思考は白水哩に読み切られていた。

 

 

(……プライドからかは分からなかけど、ムキになっとるね。まあ、お陰でかなりやりやすか)

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり白水にやられちゃった!」

 

「流石に感情的になって勝てるほど、甘くはないね……」

 

 時同じくして白糸台の控え室では、亦野誠子の振り込みに対して大星淡が残念そうな声を上げていた。それを聞いていた弘世菫が「……淡、やけに誠子が気になっているな。白水の和了が大将戦で響いてくるからか?」と大星淡に質問する。

 

「いや?別に新道寺の大将がどんな手を和了っても何にも気にしないよ!ただ、亦野先輩がボコボコにされているのが見たいだけだからね!」

 

「……成る程、お前らしいな。色んな意味で安心したよ」

 

 弘世菫が若干呆れたような声色でそう言うと、大星淡は「むっ、ちょっと失礼じゃないですかそれ!」と抗議する。が、弘世菫はまともに取り合わず、宮永照に向かってこう提案した。

 

「どうする?前半戦が終わったら私が行こうか?」

 

「そうだね。……その前に誠子の心が折れてなければいいけど……」

 

(全く……縁起でもないこと言わないでくれ……お前が言うと本当にそうなりそうで怖いんだよ……)

 

 

 

 


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