宮守の神域   作:銀一色

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第371話 二回戦A編 ⑭ 100パーセント

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視点:神の視点

東二局 親:苅安賀 ドラ{②}

柏山学院  48200

苅安賀   50900

新道寺  125700

白糸台  175200

 

 

 

「ポン!」

 

亦野誠子:七巡目

{⑨456中} {1横11} {横234} {8横88}

打{⑨}

 

 

 

(……ヒット)

 

 

 

「……」

 

 白水哩はじっと亦野誠子の事を睨みつけるようにして見つめながら、視線を自分の手牌へと落とす。亦野誠子は今の鳴きで自分の能力の発動条件を満たす三副露目であるというのに、自分は未だに二向聴。流石にこれは止めることができないなと考えていると、次巡のツモで亦野誠子が和了ってみせる。

 

 

「ツモ、混一色!700-1300!」

 

 

 

 

 

「おー!いつもの亦野先輩だ」

 

「まあ、息を吹き返したようで何よりだ」

 

 大星淡と弘世菫はモニターに映る亦野誠子を見ながら、安堵、安心の声をあげる。隣で見ていた宮永照も、どこかホッとした表情だ。結果的に和了ったのはバカ混ではあったが、亦野誠子は前半戦を合わせて初めて自分らしい和了ができたと感じていた。

 また、前半戦までの亦野誠子とはてんで違うという事を白水哩も後半戦が始まる前から薄々察知しており、そのことを今の和了で確信した。

 

 

 

(……釣り人さん、これで二連続……前半戦までのとは意識がまるで違っとる。……多分、宮永がなんかしとったんやね)

 

 白水哩は心の中で宮永照に対して密かに『余計な事を』と悪態を吐く。事実、東一局では白水哩が2900ながらも亦野誠子に対して振り込んでいた。が、その反面本気の状態の亦野誠子をここで見ることができて良かったとも思っていた。そうすれば、次勝ち上がった時に突然本領を発揮されても不意を突かれる心配もない。そう言った意味では白水哩にとって、これは長い目で見れば有り難いものではあった。

 

 

(こいでお待ちかね100パーセント……やね。私も全力以上の力でいかんと)

 

 そう心の中で呟いた白水哩はコキっと首を鳴らす。ここからは精神的なハンディキャップなど存在せず、ただ単純な力と技量、そして流れや時の運。その差で勝敗が分かれる事となる。そしてようやく新道寺の不動のエースVS白糸台のフィッシャーの闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

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「ぶちょー、お疲れ様とです」

 

 

「ん。ありがとう……」

 

 

 副将戦の後半戦、亦野誠子との対決を終えて控室に戻ってきた白水哩を、まず鶴田姫子がそう言って迎える。そしてそれに続くように花田煌、安河内美子、江崎仁美、更に補欠メンバーの友清朱里達が迎える。迎えられた白水哩は各校の点棒状況を気にしながら、鶴田姫子に「すまんな、姫子。流石に一位ば取るのは厳しかったばい。後半戦で拮抗したのが痛か」と申し訳なさそうに言うが、鶴田姫子は「全然大丈夫とです、部長。キーも充分もろうとりましたし」と言う。

 

 

「そうか。……任せたぞ、姫子」

 

 

「……お任せ下さい。部長」

 

 そう二人は言葉を交わすと、鶴田姫子は白水哩と入れ替わるようにして控室を出て行き、対局室へと向かって行った。白水哩は鶴田姫子に思いを託すと、ソファーにゆっくりと腰を下ろした。

 

 

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「お疲れ様ー!亦野先輩!」

 

「あ、ああ。ありがとう……」

 

 一方の白糸台も、帰ってきた亦野誠子を大星淡が迎える。亦野誠子は弘世菫と宮永照に向かって「すみません……結局差を戻すどころか、競り負けてしまって……」と謝罪の意を述べる。

 

「まあ、相手が相手だ。前半戦はまあアレとしても、後半戦の出来はかなり良かったじゃないか。格上相手にあれだけできれば十分過ぎる活躍さ」

 

 弘世菫がそう言って亦野誠子に労いと励ましの言葉をかけると、宮永照は「……準決勝は相手に対策されてくるだろうから、更に厳しい闘いになると思うけど……それは相手も同じ条件。……任せたよ、誠子」と亦野誠子を鼓舞するような発言をする。すると亦野誠子は勢いよく「任せて下さい!」と答えた。

 

 

「じゃあ、私もそろそろ行ってくるかな!」

 

「頑張ってね、淡ちゃん」

 

「淡……何度も言うようだが、相手はお前の能力を持ってしても確実にお前より格上の相手だ……気圧されるなよ」

 

 弘世菫が大星淡に念を押すようにそう言う。が、しかし。その心配はいらないと言わんばかりに大星淡は「大丈夫だよ、菫先輩。これまで一体何のためにテルーに虐げられてきたか……!」と言って若干宮永照の事を睨みつける。それほど宮永照にされてきた特訓が彼女にとって激しく辛かったのだろう。その当の宮永照はというと、お菓子を食べながら目を逸らし、誤魔化そうとしていた。大星淡はそれを見て「フン!」と言うと、こう続けた。

 

 

「今こそ高校100……いや、10000年生の負け犬根性、見せてあげるよ……シンドージ!」

 

 そう言って自らを鼓舞しながら控室を出て行った大星淡。が、そんな大星淡を、弘世菫はやはり頭を抑えながら見届け、そしてこう呟いた。

 

「……負け犬根性の使い方、どう考えても間違ってるぞ。全く……負け犬になったらダメだろうが……あいつらしいと言えばあいつらしいんだがな……」

 

 恐らく宮永照にボコボコにされ、負け続けたおかげで多少相手に何かしてやられたとしても、そうそう動揺したり、精神的に崩れたりする事はないという事を言いたかったのだろうか。しかしそれを言葉で言い表せなかったのであろう。色々と残念な大星淡であった。


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