宮守の神域   作:銀一色

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第373話 二回戦A編 ⑯ 絶対安全圏

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視点:神の視点

東二局 親:新道寺 ドラ{2}

柏山学院  37300

新道寺  133500

白糸台  183900

苅安賀   45300

 

 

 大星淡が最初から二つの能力をフルパワーで使用して跳満をツモ和了り、副将戦で白水哩が『リザベーション』をクリアした東二局へと場は進行する。親である鶴田姫子はリザベーションクリアによって白水哩から貰った鍵のような物を呼び寄せる。

 

(……東二局。満貫キー!)

 

 鶴田姫子は心の中でそう叫ぶと満貫キーをグルリと自分の腕で回し、天に向けて雷光……というよりも光焔をキーの先端部から勢いよく発砲させる。光焔は天を切り裂いたと思えば、その切り裂いた天から焔を纏った牌が天から降り注いだ。鶴田姫子はそうして揃った配牌を開く。

 

(……三向聴。大星ん絶対安全圏が発動しとると仮定すれば、リザベーションで大星の絶対安全圏ば破れるって事になる……!)

 

 大星淡が果たして絶対安全圏を使用しているのかは鶴田姫子からは確認できる由もないが、大星淡は最初から『ダブリー』はまあその場の状況に応じてだが、『絶対安全圏』は終始フルで使うと心に決めているため、鶴田姫子と白水哩のリザベーションは大星淡の『絶対安全圏』を破った。そういう事となった。控室から見ていた弘世菫も、これには少々度肝を抜かれたような表情で「三向聴!馬鹿な、淡の絶対安全圏を破っただと!?」と声を荒げる。

 

「……そんなに驚くことでもない。……たしかにあれは一人の力で破れるような中途半端なモノじゃない。けど……白水さんと鶴田さんの力が一緒になって発動してるから、その結果淡の支配力を上回った……多分そんな感じ」

 

「そ、そうか……いや、でもいくらなんでもアイツの支配圏を破るなんて相当だぞ?」

 

 弘世菫が宮永照に向かってそう言うと、宮永照は少しばかり鶴田姫子の事を羨むような目で見つめながら、「……二人の地力をそのまま足し算……いや、それ以上の力になるほど、二人の絆が強いんだと思う」と呟いた。

 

 

 

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(親満か親ッパネか……どっちにしろダメージ大きいし、何よりリザベーションを止めたいとも思ったり……!)

 

 大星淡はこの局は『ダブリー』は使わず、単純に手を作っていた。『ダブリー』を使わなかった理由として、最後の山の角前まで待たなければならないというのが大きな理由であり、そして大星淡は純粋に『リザベーション』を阻止したいとも思っていた。宮永照でさえも「止めるのは多分無理」と言わしめた鶴田姫子と白水哩のリザベーション。どうせ和了れることができなかったとしても、確認も兼ねてここは敢えて攻めに行った。

 そして四巡目、大星淡が投じた{⑤}を鶴田姫子は狙い撃った。鶴田姫子がロンと発声した瞬間、大星淡は一瞬固まってから鶴田姫子の手牌を見た。それも当然の事で、大星淡はいくらリザベーションを発動させているとは言え、よもや自分の絶対安全圏は破れまいと思っていたため、この和了は完全なる死角からの攻撃であった。

 

(……!?門前四巡目……私の『絶対安全圏』が効いてない……いや、破られた……!)

 

「……ロン、12000」

 

 鶴田姫子が点数を申告すると、大星淡は俯いたまま点棒を差し出す。鶴田姫子はそれを見て(……自分の『絶対安全圏』ば破られたんが、そいほどショックだったんか……?)と疑問に思いながら山を崩すと、大星淡は鶴田姫子の予想を斜め上に越えて、目を輝かせて顔を上げると心の中で鶴田姫子を称賛した。

 

(新道寺……良い!私の『絶対安全圏』を完璧に破るなんて最高、最高、最高だよ!)

 

 確かに自分の『絶対安全圏』を破ってきた鶴田姫子と白水哩の『リザベーション』は脅威以外の何物でもない。ただでさえ格上の鶴田姫子に、自分の庭までこうも?荒らされてしまってはたまったものではない。が、それ以上に自分の能力を破ってきた事に対して、非常にワクワクしていた。まさかチームメイト以外でこれほどまでに強い敵と闘えるとは、と。大星淡は自分よりも格上の相手と相対して非常に嬉しそうであった。

 

(……いいねいいね!流石新道寺、新しい事尽くしだよ!……でも)

 

 大星淡は口ではそう賞賛し、鶴田姫子と闘えるのを心から楽しんでいるようにも見えたが、松山学院の点棒をチラリと見ると、(今まともにシンドージとやったら二位陥落も普通にある……ここは準決勝に対策を備えるためのゼンショーセンにしようか!一先ず勝ちを先決に取れって菫先輩に言われちゃったし!)と言い、視線を露骨に松山学院の方へと向けた。それに気付いた鶴田姫子は(大星んやつ……松山ば飛ばして終わらす気か!)と大星淡の意図をいち早く掴み取る。

 

(……シンドージは早速気付いちゃったか。まあ全力でぶつかりたい気持ちはアリアリだけど……今度はシンドージが私を止める番だよ!)

 

 そう言って白糸台の超新星はニヤリと微笑む。ここで敢えて新道寺とは闘わず、薄氷の松山学院を飛ばして強引に試合を終わらせようとするのは言うなれば逃げの一手かもしれない。だが、これは後ろ向きな撤退ではない。大星淡はあくまでも前を見据えながら、撤退している、言わば戦略的撤退。準決勝で万全な状態で攻勢をしかけるための一つの布石であった。そして鶴田姫子はそれをさせまいとリザベーションのキーを生かして追撃しようと試みる。一位で準決勝進出と、二位で準決勝進出ではまた大きく異なってくる。ただでさえ違いが大きいのに、一位新道寺、二位白糸台という構図になれば準決勝以降もかなり有利に事を運べる。それは勿論白糸台側の思惑も同じであり、だからこそ大星淡にそうアドバイスしたのだ。両者の一位通過を賭け、大星淡と鶴田姫子の卓上のカーチェイスが今まさに始まった。

 




ここの淡ちゃんはアホの子というより、若干戦闘民族のような感じになってますね。

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