宮守の神域   作:銀一色

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第374話 二回戦A編 ⑰ 逃げ切り

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視点:神の視点

南三局二本場 親:白糸台 ドラ{1}

柏山学院   7800

新道寺  164100

白糸台  187000

苅安賀   41100

 

 

「ロン!混一色、中。7700の二本場!」

 

大星淡:和了形

{一一一四五六六中中中} {横三二四}

柏山学院

{六}

 

 

 

 

(強引に柏山を潰しに行ったからかなり新道寺に詰められて焦ったけど……ギリギリセーフだった……亦野先輩がもうちょっと削られてたら一位通過は危なかったかも……)

 

 首位の白糸台が親の前半戦南三局二本場、大星淡は薄氷の柏山学院から7700に二本場の600を加えた8300の直取りで柏山学院をハコテンにし、二回戦を強引に終了せしめた。大星淡はもう少し長引いていたり、大将戦が始まる時点でこれ以上点差が縮んであったらまだどうなるかは分からなかったと鶴田姫子の事を危惧していたが、取り敢えず首位を守りきるという最優先事項を達成することができて安堵していた。

 一方、一時は約十万点もあった点差を三万点程まで詰め寄ることができた新道寺の逆襲の立役者の一人である二大エース、鶴田姫子は唇をキュッと噛みながら不満足そうに心の中でこう呟く。

 

(この勝負、確かに私は大星ん事ば押していたけど……そいはあくまで大星が勝負に乗らんかったからで、そいでいて結局大星に上手く逃げられとった……部長が5万点近く詰めとってくれたっちゅうのに、申し訳なか……)

 

 鶴田姫子の言う通り、確実に鶴田姫子は大星淡の事を猛追して行った。しかし、大星淡の強引な柏山狙いによって結果は及ばず、大星淡の作戦勝ちであったと言わざるを得ない。二位に甘んじることとなってしまったこの結果に歯痒さを感じていたが、それは大星淡も同じであった。

 

(シンドージ……正直、本気でぶつかってたら私が潰されてた……でも、準決勝までに対策を練って、シンドージを一万回倒す……!)

 

 大星淡は鶴田姫子の力を目の当たりにして今の自分との力量差が顕著に現れていたのを感じており、今のような大量リードの状況で回ってきたからこそどうにかなったものの、準決勝では流石にここまで大量リードでは回ってこないであろう。やはりどうしても今のままでは足りない。その事に対して非常に悔しさを滲ませていたが、それと同時に鶴田姫子との再戦に今から燃えていた大星淡は、ダッシュで控室へと戻って行った。そんな大星淡の事を見ていた鶴田姫子も、心の中でこう誓った。

 

 

(次こそは……大星ば倒して決勝に進むばい……)

 

 

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「ただいまーテルー!結構ギリギリだったよ!」

 

「お疲れ……鶴田さん相手によく頑張った……」

 

 控室に勢いよく戻ってきた大星淡を、つい先程からお菓子を食べ始めようとしたのか、包装紙を破っていた宮永照が労いの言葉をかける。弘世菫もとりあえずは一安心といった感じでお茶を口にして「良くやった……お疲れ様だ」と声を掛ける。しかし、大星淡はバンとテーブルを叩くと、宮永照に向かって「テルー!今から打とう!」と言う。宮永照は大星淡が先ほどの対局で屈辱を味わっていたのだろうと推測しつつも、わざとらしくこう返す。

 

「淡から誘ってくるなんて珍しい……」

 

「いいから!早く打とうよ!」

 

「……分かった。尭深、誠子。ちょっとこの後付き合ってくれる?」

 

「構いませんよ」

 

「勿論です」

 

 そう言って了承する渋谷尭深と亦野誠子の言葉を聞いた宮永照はふっと微笑してまるで良いものを見たと言わんばかりに弘世菫に「……白糸台は前途有望な後輩が多くて頼もしいね」と言うと、弘世菫もそれに同調して「ああ、全くだ。……頼もしい奴らだ」と言った。

 

 

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「申し訳なかとです……部長」

 

「何言うとんね姫子。姫子は十分役割を果たせとったよ。……柏山や苅安賀ば削らず、白糸台を一点集中しんかった私の責任ばい」

 

 同じく控室に戻ってきた鶴田姫子は白水哩に励まされながら抱擁されていた。悔しさを募らせる鶴田姫子に向かって白水哩が「それに、次もあっとね。そこでリベンジばい」と前向きな言葉を投げかけ、鶴田姫子を鼓舞する。その気配りの上手さは流石新道寺という看板を三年間背負ってきただけはあり、頼れる主将であった。

 

「……花田。次はもっとキツうなると思う。ばってん、無理に気負いする事はなか。お前もポジティヴに行かんとな」

 

「……は、はい!お任せください!」

 

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「……結果は白糸台の勝ち、かい。皆、どう感じたかい」

 

 白糸台と新道寺の激闘を観戦し終えた宮守メンバーは、熊倉トシに質問を投げかけられる。それに対して臼沢塞は「流石王者白糸台って感じですけど……新道寺も十分負けてなかったと思います」と答える。

 

「そう、確かに先鋒こそチャンピオンの圧勝だったけど……それ以外は新道寺とほぼ互角。副将に至っては確実に競り勝っていた。……つまり、いくら王者白糸台とはいえ先鋒さえどうにか切り抜ければ勝機は十二分にある。……そのためには、豊音が頑張らないといけないけど……どうだったかい?チャンピオンは」

 

「ちょー凄かったよー……シロの話によればあれ以外にもオカルトを持ってるっていうし……シロとは違った怖さがあるよー」

 

 姉帯豊音がそう言うと、小瀬川白望は「確かに照は強いけど……切れるカードの多さで言えば豊音……六曜を駆使すれば一方的な勝負にはならないと思うよ……」とフォローをかける。

 

「あんたの方はどうなんだい、大将の二人は」

 

「……姫子はともかく、大星さんの方は実際に打ってないから何とも言えませんけど……配牌が悪くなるのは正直鬱陶しい……流れを悪くしているのか、それとも流れ云々を無視して配牌だけ悪くしているのかは分かりせんけど、後者の場合一番流れが読みやすい配牌で流れの良し悪しを推し量る事ができなくなるから、他の指標で見定めるしかないです……」

 

「成る程ね……」

 

「まあ、まだ当たるかどうかも分からない状況でこんな話、するだけ無駄……無意味ですけど……」

 

 それを聞いていた鹿倉胡桃が「どう言う事?」と尋ねると、小瀬川白望は「白糸台も私達もまだ決勝に進めるかどうかは分からない……そんな中で決勝の話をするのは慢心でしかない……油断、慢心した人から消えていくこの勝負の世界……兎に角今は目の前の敵を倒す事に専念した方が良いってこと……」と答えた。そんな小瀬川白望を、微笑ましそうな表情で熊倉トシは見つめていた。

 

(……そうは言いつつも、あんたが見てるのはいつだって赤木しげるの事じゃないか……全く。まあこれとは若干違う話かね)

 

 

 

 


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