宮守の神域   作:銀一色

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第378話 二回戦A編 ㉑ 賭す覚悟

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視点:神の視点

 

東三局 親:千里山 ドラ{7}

阿知賀  94800

越谷  100000

千里山 105200

劔谷  100000

 

 

 

「リーチ」

 

 

「「「!!」」」

 

 

 園城寺怜がリーチ棒を垂直に立ててそう宣言する。その宣言に、松実玄を含めた他の三人は一斉に園城寺怜の方を向き、そして戦慄する。彼女らは、この園城寺怜のリーチがどのような意味を持っているかをよく知っている。知っているが故に、彼女のリーチ宣言はまさに死刑宣告以外の何物でもなかった。

 

(リーチってことは……一巡する前に誰かが鳴かないと……!)

 

 彼女らに残された時間は次の園城寺怜のツモまで。つまり一巡しか残されていない。しかも、その間に彼女らに出来ることといえばその一巡の間に誰かが鳴いて園城寺怜のツモをずらすことのみである。それが出来なければ、園城寺怜がリーチ一発ツモがその時点で確定してしまうのだ。松実玄の指先が嫌な汗で湿る。緊張と恐怖のあまり、発汗という形で体が危険信号を示したのだ。しかし、彼女はそれでも立ち向かわなければいけない。

 が、当然ながら、鳴きによってツモをずらして園城寺怜のリーチ一発ツモを防ぐという事はそうそう狙ってできるものでは無い。他者を鳴かせようにも、自分が鳴こうにもどちらにせよ容易では無いのは明らかである。それでも松実玄含めた三人は望みを託してツモっては牌を切り、ツモっては牌を切り、ツモっては牌を切り……が、それでも誰からも声が発せられる事はなく、園城寺怜のツモ番へと回ってしまった。

 

(これが、あの荒川憩さんのいる三箇牧高校を打ち破った千里山のエース……一万人の頂点に近づくと……)

 

「ツモ、4000オール」

 

千里山:和了形

{三四六七八②③④⑤⑥⑦33}

ツモ{二}

 

 

(とんでもない人がいる……!)

 

 

 結局園城寺怜が視た未来通りの結末となり、園城寺怜が親満をツモって連荘、一本場とした。これで三連続和了とした園城寺怜ではあったが、これで攻撃の手を緩めるほど園城寺怜も甘くはなかった。

 

(……大人しくするのは別にええけど、どうなってもウチは知らんからな……)

 

(ど、どうにかしないと……)

 

 松実玄は頭の中で必死に抵抗策を練ろうとするが、未来が視えている園城寺怜を前にして萎縮している松実玄が、有効な策を見つけることなどできるわけもなく、必死に考えれば考えるほど、何も出てこない事に対して危機感が煽られ、どんどん精神的に追い込まれてしまうのだ。

 

(……これ以上やらせたくは無いけど、止めようにも止められない……っ!)

 

(どうすれば止められるのこれもー……)

 

 

 それは他校の二人も同じ事であり、越谷女子の新井ソフィアと劔谷高校の椿野美幸も足掻こうとはするものの、三連続和了で勢いづいた園城寺怜は止められず、点棒が溶けていく……いや、園城寺怜に溶かされていくのをただ黙って見ている事しか彼女らにはできなかった。

 

 

 

 

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南四局 親:劔谷 ドラ{⑤}

阿知賀  73800

越谷   89100

千里山 145800

劔谷   81300

 

 

 

 

 

「リーチ」

 

 

(((……っ!)))

 

 

 

千里山:和了形

{八八③④⑥⑦⑧234888}

ツモ{②}

 

「……ツモ、ありがとうございました」

 

 この和了で最終収支をプラス53700という文字通りの虐殺を終えた園城寺怜は、点棒を受け取った後そう呟いて対局室からさっさと出て行った。一方の公開処刑から解放された三人は恐怖と疲労のために暫くそこを動くことができなかった。特に最下位の松実玄は園城寺怜のドラを封じているという圧倒的優位な位置で闘っていたのにも関わらずこの結果であり、そのショックは計り知れないものであるのは言うまでもなかった。

 

 

(ふー……()()()()()()()使()()()()()っつっても……二半荘フルで使うのはしんどいなあ……)

 

 扉から廊下に出た園城寺怜は、若干足をふらつかせながら壁に寄りかかる。己の体力の無さを痛感した園城寺怜ではあったが、自分の体が病弱であるからこそ今の能力があると考えると、一概に否定する事はできない。が、それでも尚園城寺怜は危機感を抱いていた。

 

(このまま勝ち進めば準決勝……チャンピオンとの勝負。……能力を加味してもチャンピオンの方が数枚上手なのは分かっとる……問題はウチの体が能力の酷使に耐えられるかどうかや)

 

 先ほどの勝負でさえ若干疲労が見えていたというのに、次の勝負はチャンピオンである宮永照。当然、先ほどよりも園城寺怜の負担は大きくなる。『奥の手』を使えばその負担は更に倍、三倍と積み重なっていく。正直なところ、耐えられるかどうかは怪しいところであった。が、園城寺怜はそれを理解しつつも心の中でこう語る。

 

(……覚悟はできとる。どうなっても構わん)

 

 全てを賭す覚悟、己が破滅すると分かっていながらもそれを顧みず突き進む狂気。その境遇を楽しむというところまでは行ってはいないものの、この時園城寺怜は無意識の内にその領域に僅かながらではあるが片足を突っ込んでいた。

 

 

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「ただいま帰ったで」

 

「怜!」

 

 ゆっくりと控室に戻ってきた園城寺怜をまず最初に清水谷竜華が迎える。清水谷竜華に抱きしめられた園城寺怜は驚いて仰け反るが、がっちりとホールドされているため逃げられなかった。

 

「おい、竜華。そこまでにしときい。怜が窒息死するで」

 

 江口セーラにそう言われてようやく清水谷竜華が園城寺怜を解放すると、「す、すまんな?怜。つい……」と声をかける。すると園城寺怜は呆然としながらも、「……胸枕も案外いいかもな」と呟く。

 

「先輩、身体の方は?」

 

「めっちゃ柔ら……いや、苦もなく勝てたから、そんなに疲れたわけでも無いで」

 

 一瞬冗談で返そうとした園城寺怜の事を目線で一蹴した船久保浩子は「そうですか。そんなら良かったです……あと」と言い、園城寺怜の事を呼び出して皆から少し離れた位置で耳打ちでこう質問した。

 

「……今回、『二巡先』は?」

 

「いや、使うてへんよ。使うと竜華にすぐバレて怒られるからな。それに使うほどでも無かったしな」

 

「……ちなみに、準決勝では」

 

 そう聞かれた園城寺怜はふふと笑うと「さあ、そん時次第やろな」と言って誤魔化す。それを聞いた船久保浩子は「そん時次第って……ホンマに使うつもりなんですか?」と再び尋ねると、園城寺怜は船久保浩子の肩を掴んでこう言った。

 

「すまんな……ウチはこの大会、麻雀と心中しても構わんくらいの覚悟で立っとるんや……ベタな引き止めは無駄やで」

 

 船久保浩子にそう言った園城寺怜は真剣な表情から一転、いつもの表情で「ま、ホンマなら麻雀よりイケメンさんの方がいいんやけどな?」と言う。船久保浩子が若干言葉に詰まりながらも、「そ、そんな縁起でもない事言わんといて下さいよ……」と返した。そして園城寺怜は心の中で船久保浩子に向かってこう呟いた。

 

(……すまんな、船Q)

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