宮守の神域   作:銀一色

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第382話 二回戦A編 ㉕ 乙女

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視点:神の視点

 

 

「……あ、憧ちゃん」

 

「宥姉、ハルエから伝言!」

 

 時を同じくして、控室から走ってきた新子憧は松実宥の事を見つけると、名前を呼んで松実宥の所へと向かう。松実宥が赤土晴恵の伝言と聞いて何事だと思っていると、息を切らしながらも新子憧は赤土晴恵の伝言を伝える。

 

「あの千里山の二条さん、別に宥姉の能力に対策を打ってるわけでもないし、全ツッパ状態だから気にしなくて良いって!」

 

「そっか……やっぱり、通りで萬子を強打し始めたと思ったら……」

 

 松実宥が先ほどのいきなりの二条泉の萬子強打に対しての不信感を思い出しながら、そう呟く。いきなり人が変わったかのような打ちまわしになり松実宥自身混乱していたが、今の伝言でようやくその謎が解け、納得したように呟くと、わざわざ伝言を伝えるためだけに走ってきた新子憧に「憧ちゃん、ありがとうね」と言った。

 

「大丈夫大丈夫!これくらいどうってことないって!それに、気付いたのはハルエだし!」

 

「でも、来てくれただけでも嬉しいよ……」

 

 松実宥がそう言って新子憧の事を抱きしめると、新子憧は驚きながら「ちょ、宥姉!暑い、暑いって!?」と訴えかける。松実宥はそう言われてサッと離れると、「うう……ごめんね?私は今の、凄いあったかくて良かったんだけど……」と新子憧に向かって弁明をした。

 

「だ、大丈夫だよ?でも、今八月だし……ちょっと宥姉の服装じゃ暑かっただけで……」

 

「そっか……でも、私からしてみればむしろ憧ちゃんの服装、とても寒そうだけどね……」

 

「宥姉が寒がりすぎなんだってば……まあ、後半戦頑張ってね!宥姉!」

 

「うん……頑張る」

 

 松実宥が新子憧にそう返すと、新子憧は控え室へと歩いて戻って行く。松実宥は彼女の後ろ姿を見つめながら(……玄ちゃんの為にも、私が頑張らなきゃ……)と妹の思いを背負い、新子憧が角を曲がろうとしたのと同時に対局室へと向かって行った。

 

 

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「ツモ、3000-6000です」

 

 

阿知賀:和了形

{一一二三四赤五六八八八中中中}

ツモ{四}

 

 

(くそっ……すんでのところで届かなかったか……)

 

 それから一時間が経ち、松実宥がオーラスで跳満を和了って次鋒戦を終了せしめる。後半戦からは松実宥が二条泉の強打の理由を知っていたため、二条泉の策はあまり松実宥には通じず、結果的に少し押される形となってしまった。二条泉がその事に対して悔しさを募らせるが、それでも全体の収支ではプラスで、今の跳満和了こそあれど終始安定した闘牌をすることができていた。しかし、あの阿知賀を仕留めることができなかったこと、それだけが唯一の心残りであった。

 

「お疲れさんです……」

 

「お、お疲れ様です……」

 

 それによって若干不機嫌そうな表情をしていた二条泉は小さい声でそう呟くと、サッサと対局室を後にする。松実宥はそんな彼女を見ながらも(前半戦の内に気づけていたら……もっと違っていたかも……)と、新子憧を通じて赤土晴絵の伝言を聞くまで翻弄されていた事に対する自責の念にかられていた。いくらこれで二位に浮上したとはいえ、トップとの千里山とはまだまだ離されている。これで勝ち上がれたとしても、今度はもっと強い王者白糸台と当たる事になる。これでは全然ダメだと心の中で自分にダメ押しをしながら、松実宥もまた対局室から出て行った。

 

 

 

 

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「お……終わったな」

 

「そうですね。最後に跳満和了られましたけど」

 

 一方の千里山の控え室では、次鋒戦の終了を確認した江口セーラがそう言って立ち上がると、船久保浩子に向かって「かまへんかまへん。12000程度、すぐにオレが倍以上にして返してくるから」と強気な発言で返すが、船久保浩子が「いや、そう言う事やなくてですね……最後の跳満をキッカケに、準決勝で目覚められたら厄介だなと……」と言うと、江口セーラは「ほーん……まあ、関係無いやろ。泉はそんなヤワな奴やない」と二条泉への評価を滲ませながらそう返した。

 

「んじゃ、ちょっくら行ってーーー」

 

「はいストップ。その格好で行く気かいな」

 

 江口セーラが意気揚々と学ラン姿で対局室へ向かおうとしていたところを、船久保浩子がすんでのところで止めにかかる。江口セーラは「……やっぱあかん?」と言うと、船久保浩子は江口セーラに制服を渡して「二時間ガマンや。先輩もいい加減慣れて下さいよ」と言う。

 

「い、いや……シロも見とるやろうし、流石に恥ずかしいわ……」

 

「何言っとんのやセーラ。多分去年も一昨年も、イケメンさんはとっくにセーラのその姿、見とると思うで」

 

 横から園城寺怜がそう呟くと、江口セーラは顔を真っ赤にして「ほ、ホンマかそれ!?」と叫ぶようにして問いかけると、園城寺怜は「ホンマかどうかは知らんけど……多分見とるんやない?」と返す。すると江口セーラはさらに顔を赤くするが、船久保浩子に「先輩、早よ着て下さいって」と言われると、恥ずかしさを極限まで押し殺しながら「あ、ああ……せやな……」と言って着替えに行った。

 

「ほぼ毎回やな、セーラの制服のやりとり」

 

「毎回毎回やってますからね……っていうか園城寺先輩、余計なこと言わんといて下さいよ」

 

 船久保浩子が園城寺怜に向かってそう言うと、園城寺怜はニヤニヤと笑みを浮かべながら「えー?ウチは多分そうやろなっていう話をしただけやで?」と言うと、船久保浩子は心の中で(……この人、小瀬川さんに対して独占欲があるのかないのか分からんわ……)と若干疑問に思っていると、着替え終わった江口セーラが三人の前に出てきた。

 

「くそっ……スースーする」

 

「そういうもんですって。お似合いでございますよ」

 

 江口セーラは船久保浩子に対して「うるせえ……」と言うが、いわゆる乙女モードのせいか言葉に覇気が感じられなかった。江口セーラがそうしてもじもじしていると、次鋒戦から戻ってきた二条泉が「ただいま戻りましたーって、お、乙女モードや」と開口一番にそう言うと、江口セーラは恥ずかしさのあまり廊下へ飛び出して行った。

 

「あー、行ってしもた」

 

「行っても衆目に晒される事になるんやけどな。かわいそうに」

 

 

 園城寺怜がそう言っていると、廊下では沢山の記者とカメラに囲まれた江口セーラが顔を真っ赤に染めていた。江口セーラは柄にもなく何も言葉を出せぬまま、記者から逃げるようにして対局室へと向かって行った。

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