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視点:神の視点
東二局 親:阿知賀 ドラ{②}
千里山 157100
阿知賀 98000
劔谷 65300
越谷 78600
「ツモ!1000オール!」
阿知賀:和了形
{一一五七②③④} {中横中中} {横⑥⑦⑧}
ツモ{六}
阿知賀の親である東二局、トップの千里山とはおよそ60000点ほどあり、易々と流されてはならない状況下で新子憧は二副露の後ツモ和了で連荘に望みを繋げる。これもまた七巡目での和了であり、彼女の武器である副露センスを遺憾なく発揮しての和了であった。
(……後もうちょいやったな)
千里山:七巡目
{二二二六七⑤赤⑤⑤46777}
一方、聴牌まで後少しの一向聴まで来ていた江口セーラは若干惜しそうに手牌を伏せる。やはり江口セーラのような火力で相手を叩き潰すような雀士が新子憧のようなスピードで押してくるタイプの雀士を相手にするとこのような場面が見られたりするのはどうしても仕方のない事ではある。そう言った得手不得手が存在するのはどうしようもないのだ。
しかし、江口セーラはそれを踏まえても(まあ……その小回りの効いた麻雀はアホじゃできないやろうな……)と、心の中で評価する。が、あくまでも江口セーラから見れば、新子憧のようなタイプは非常に勿体無いと思っているのだが。
(ま……本人の自由やし、強制するつもりはないけどな。ただ……ウチはそんなチマチマ和了るよりも、どデカい手を和了る方が好き……それだけや)
そうして阿知賀の連荘となった東二局一本場であるが、江口セーラは配牌を開いてニヤリと笑う。新子憧もその笑みに気付いたが、江口セーラの配牌がどうなっているのか分からないため、ただただ不気味でしかなかった。しかし、その謎もすぐに明らかになる。江口セーラのツモ和了とともに。
「リーチ!」
千里山:捨て牌
{中八⑦横1}
(は、はっやあ……)
「ち、チー」
阿知賀:五巡目
{二八九③④⑧⑧3南発} {横123}
打{南}
想像以上の江口セーラのリーチの速さに驚きを隠しながらも鳴いてどうにかしようと試みるが、この時点でもう既に遅く、もはや今の新子憧の鳴きはただの一発消しとしての意味しか持ち合わせていなかった。
「ツモ!3100、6100!」
千里山:和了形
{三四五六六②③③④④⑤34}
ツモ{5}
(これやこれ……こういうのが麻雀の醍醐味や)
まるでお手本のようなメンタンピン三色に赤1を合わせて跳満をツモ和了る。流石に裏ドラは乗らなかったようで、倍満などにはならなかったが、それでも阿知賀からしてみればこの跳満の親っ被りは痛い。それが、今背中を必死に追おうとしている千里山からの和了であれば尚更のことである。
(流石にそう上手くはいかないか……)
(……確かに、そーいうのも賢い打ち方なんやろうけど……団体戦はあくまでも最終的な収支で全てが決まるんや。それじゃあ一位は獲れへんよ……)
江口セーラは心の中で新子憧に向かって語りかけるようにして言う。一方の新子憧も、このままでは一位を奪取することは不可能だということを感じており、自分の武器であるスピードは若干殺さなければならないが、それでも尚正面衝突の殴り合いを挑まなければならないと決心していた。
(より多く奪う……)
(来いや……同じ土俵に……叩き潰したる)
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視点:神の視点
中堅終了時
千里山 182400
阿知賀 97900
劔谷 60700
越谷 59000
結果から言って仕舞えば、中堅戦は江口セーラの一人勝ちであった。ただでさえ圧倒的な点棒状況の中で25400のプラスで更に点差を広げ、逆に他の三校はただでだえ大きい首位との差を更に開けられてしまった結果となってしまった。プラスで終えることができた新子憧も、終始圧倒されっぱなしであった江口セーラの事を頭の中に思い浮かべては、ただただ悔しさを募らせるだけであった。
「おい、阿知賀の……なんだっけ、新子だったか?」
「……なんですか」
そんな中で、江口セーラは気分が落ち込んでいた新子憧に声を掛ける。新子憧からしてみればもう顔も見たくもないという感じではあったが、それに反応する。
「……前半戦の東三局からの、本来の打ち方やないんやろうけど、オレは良かったと思うで」
「そ、それは……どうも」
「それじゃ、ほな、またな」
そう言って去っていく江口セーラの事を見ながら、いきなりそのような事を彼女から言われた新子憧は呆然としていたが、江口セーラが対局室から出ていくとき、江口セーラは心の中でこう呟く。
(思っとったよりも稼げなかったな。……阿知賀、か。オレも竜華やあらへんけど、準決勝でまた打ちたいなあ)
面白い相手を見つけた、そう思っていた江口セーラだったが、対局中に高められたボルテージが対局室から出たことによって下がり、それによってふと我に返ると、今の自分の格好に対する羞恥が今になって再び込み上げてきた。そうして顔が真っ赤になった彼女はダッシュで控え室へと戻っていく。理由ははやくこの制服を脱ぎたいためである。そして走っている最中、この先ほどまでの姿が全国に晒されていたと思いはじめ、より一層顔を熱くする江口セーラであった。