宮守の神域   作:銀一色

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久々に登場します。


第386話 二回戦A編 ㉙ バカヅキ

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視点:神の視点

東一局 親:劔谷 ドラ{③}

劔谷   60700

千里山 182400

越谷   59000

阿知賀  97900

 

 

 

「ツモ!8000オールでーー!!」

 

劔谷:和了形

{六七八③③④⑤赤⑤33888}

ツモ{④}

 

裏ドラ表示牌

{七}

 

 

 

 

(まずい……この和了で点差が5200……三位転落も有り得る……)

 

 

 副将戦東一局、先に口火を切ったのは千里山の船久保浩子でもなく、阿知賀の鷺森灼でもなく、劔谷高校の森垣友香であった。リーヅモ断么一盃口ドラ2赤1裏1の親倍満を和了り、副将戦は少々派手な幕開けとなった。この和了で劔谷高校が二位の阿知賀女子に対して点差が5200と、直撃なら2600以上で文句なしに二位に浮上するまでに大きく詰め寄った。鷺森灼はこの一局だけで大きく三位転落が現実的な話となり焦りを覚えるが、それと同時に船久保浩子も危機感を抱いていた。

 

(……親倍かあ。バカヅキなだけかは分からんけど、乗せると面倒なタイプなんは間違いないな)

 

 千里山と劔谷とではほぼ10万点近い点差があり、もはや逆転は不可能な状況ではあるが、それでも親の役満に振り込んでしまえばその差は一局で96000も詰まる事となる。劔谷高校が都合良く役満を聴牌する事も、船久保浩子がみすみす振り込む事も可能性としてはごくごく僅かではあるが、それでも無いわけではない。起家でいきなり親倍を和了った劔谷高校がツイている今、一番用心しなくてはならないのは阿知賀よりも劔谷高校である。このまま乗せていては役満直撃でなくとも逆転される事も有り得る話となってくる。

 

 

(本来は後に備えてデータ収集だけに力を注ぎたいところやけど……そうは言ってられへんな。……仕方ない。全力で迎え撃って全力でしゃぶり尽くしたるわ……!)

 

 

 

 

 

「ロン!2000の一本場や!」

 

 

「でー!?」

 

 

千里山:和了形

{一二三1179南南南} {横②①③}

劔谷

打{8}

 

 

 続く東一局一本場、これ以上劔谷高校の好きにさせるのは面倒だと感じた船久保浩子は森垣友香からチャンタ南の2000に一本場を合わせた2300点の直撃を取る。この局もどれだけ低く見積もっても満貫以上は和了れるといった勝負手を引いていた森垣友香からすれば猛烈なブレーキとなったが、和了った船久保浩子は少し安堵の表情を見せると、今度は視線を鷺森灼に向けてジロッと睨みつける。

 

(劔谷がこれで大人しくなってくれたらそれはそれでええんやけど……そうなったとしたら今度はこっちが問題やな……阿知賀ぁ……)

 

 船久保浩子はそんな事を呟きながら鷺森灼の配牌を記憶から抜き出して頭の中に映し出す。あの筒子に偏りながらも全容の掴むことのできない何とも言えぬデータ。松実姉妹の方は姉の方でプロファイリングの誤りこそあれど、まだ大体の全容は掴むことができた。長年データを集めてきた船久保浩子にとって、オカルトの識別は十八番であったのだ。故に、ここで全てを解明してみせる。そのような信念を滲ませていた船久保浩子は、今ある情報だけで何とか結論を出そうとしていた。

 

(何となくボウリングに関連しとるってことは分かっとる。……せやけど、参ったな。ボウリングに疎いウチからしてみれば全然分からへんし、何より対策の取り方が分からへん……)

 

 

(この勝負で情報を引き出せるだけ引き出させるしかあらへんな……まあ、阿知賀も三位転落間近やから出し惜しみがないやろうし、そう考えれば劔谷はナイスな働きやったな……)

 

 無論、この二回戦だけで鷺森灼の能力を完璧に理解することは難しい。しかし、ここでどれだけ解明できるかによって今後が大きく変わってくる。相手に出し惜しみするほどの余裕が無い今、船久保浩子の腕の見せ所であった。

 一方の鷺森灼も、ここで全力で行けば千里山の頭脳こと船久保浩子にマークされるのは理解はしている。だが、それよりも最低でも二位を守り抜くこと。それの優先度の方が高いのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

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(……ん。阿知賀の副将の人……赤土さんに似てる……)

 

 一方、副将戦を見ていた宮守の小瀬川白望は鷺森灼に阿知賀の顧問である赤土晴絵とどことなく似ている点を発見した。もちろん、その類似点とは麻雀の打ち方であり、一度赤土晴絵と対戦したことのある小瀬川白望がそれに気付くのはあまり時間はかからなかった。

 そうして小瀬川白望が「熊倉さん」と赤土晴絵と面識のある熊倉トシの名前を呼ぶと、熊倉トシもそれに気付いていたのか、「そうだねえ……まだ粗いけど、確実に受け継いでいるねえ……」と呟く。

 

 

「シロー、どういうことー?」

 

 その話を聞いていた姉帯豊音が小瀬川白望に向かって聞く。口には出していなかったが、臼沢塞も鹿倉胡桃もエイスリンも、一体どういうことだと言う感じで小瀬川白望のことを見つめていた。聞かれた小瀬川白望はモニターに映る鷺森灼の事を指差しながらこう言った。

 

「あの阿知賀の副将の子が……私が昔打ったことのある人と打ち方が似てたから……」

 

「因みにその似ている人は阿知賀の顧問だよ」

 

 熊倉トシの注釈を聞いた臼沢塞はなるほどといった表情で「そうですか……つまり師弟関係みたいなものですかね?」と言うと、鹿倉胡桃が「なんか、シロみたいな人だね!」と小瀬川白望に向かって言う。

 

「ははは。あの子と白望じゃあ師弟関係っていう点では似てるかもしれないけど、全く別物の話だよ」

 

 

 そう言う熊倉トシの側で赤木しげるが【あの鷺森ってやつは教わったっていうよりも模写に近いからな】と付け加える。そして更に鷺森灼の赤土晴絵流の打ち方がまだ粗いのは、それが原因だと語る。

 

「ジャア……ワタシ、シロノ『デシ』二ナリタイ!」

 

 その話を聞いていたエイスリンがそう言うと、小瀬川白望は少し照れくさそうに「……まだ私だって赤木さんに届いていないから。何なら赤木さんの弟子になりなよ」と言ってやんわりと断った。エイスリンは不服そうであったが、それを聞いていた赤木はクククと笑って【二人目を取る気は無えな……そもそも、もともと弟子ってもんを取る気は無かったんだが】と言った。

 

 

 

 

 


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