宮守の神域   作:銀一色

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第387話 二回戦A編 ㉚ 竜の圧力

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視点:神の視点

副将戦終了時

劔谷   89100

千里山 185100

越谷   32300

阿知賀  93600

 

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとうございました……」

 

 

 副将戦が終わり、最初こそ劔谷高校の森垣友香の親倍ツモという和了のせいで一時は場が大きく荒れると予想されたものの、船久保浩子の徹底的なマークがあってか、後は順当に局が消化され、結果として順位に変更は見られなかった。

 しかし、順位に変更が見られなかったとはいえトップの千里山は倍満を喰らっても尚更に点棒を重ね、逆に二位の阿知賀は若干ではあるが点棒を減らしてしまった。それに加えて劔谷高校の怒涛の追い上げもあり、阿知賀はトップはおろか、二位を守り抜く事さえ厳しい状況に追い込まれていた。

 

(結局収支ではマイナス……これじゃ不甲斐ない……)

 

 鷺森灼は自分の成績に満足できていない様子で、三位に詰められたということに関しても収支がマイナスだということに関しても自分の不甲斐なさに歯噛みしていた。

 そして一方、船久保浩子は対局室から出て行こうとする鷺森灼を見つめながら、彼女の能力に対してこう考察を始める。

 

(あの独特な牌の待ち……ボウリングでいう、なんやったっけか……そうや。せやせや、スプリットや。そんな感じの変則待ちになる偏りがあるな……)

 

 船久保浩子は、鷺森灼が麻雀の筒子をボウリングのピンに例えて、待ちをスプリットの形にする傾向が見られる。そう考察する。それに加えて、船久保浩子は(確かにスプリットもあるけど……それ以外にも、何かあるな)と前置きしてから頭の中で考え始める。

 

(なんていうか……古いな。スプリットを考慮しても全体的に打ち方が。いや、そんなド古い打ち方ってわけやないけど……十、二十数年前くらいの感じが……)

 

 そうして考えているうちに、船久保浩子はある一人の人物を思い出す。それは鷺森灼の顧問でもあり、過去に阿知賀のレジェンドとしてインターハイに出場していた赤土晴絵の存在であった。

 

(赤土晴絵……確かにちょうどその時代と同じくらいやな……一度牌譜に目を通してもええかもな)

 

 鷺森灼の能力、打ち方の謎を解明するためのカギを手に入れることができた船久保浩子だが、それと同時に森垣友香の事についても考察を始めようとしていたところ、突如として目の前が真っ暗になった。驚いて「うわっ!?」と言って後ろに退がると、そこには清水谷竜華が立っていた。

 

「あ、清水谷先輩……」

 

「船Q、お疲れ様なー」

 

 清水谷竜華はそう言って船久保浩子の頭を撫でると、船久保浩子は少しほど照れている様子を見せて「……先輩も、油断せず頑張って下さいね」と告げると、清水谷竜華はふふっと笑って「任せときや」と言って対局室へ向かおうとする。

 

 

「あと、最後に良いですか」

 

「んー?なんかあった?」

 

 

 船久保浩子に引き止められた清水谷竜華が振り向いてそう尋ねると、船久保浩子は「先輩に限ってないとは思いますけど……手加減したりしないで下さいね」と清水谷竜華に進言する。試合が始まる前も阿知賀の事を運命だの素敵だの言っていた清水谷竜華が、彼女の優しさから変に手加減しようとしたりするのを危惧してのことだろうが、清水谷竜華は心配御無用といった感じで「あったりまえや」と答えた。

 

「確かに、今もウチらと阿知賀があそこで出会ったんは単なる偶然なんかやなくて、何かの巡り合わせかと思ってる。……けど、勝負はまた別の話や。阿知賀が二位になろうが三位になろうが、ウチは全力やるだけや」

 

「……それに、全力でやらんと侮辱する事になるからな。怜の頑張りも、インハイっていう勝負も」

 

 それを聞いた船久保浩子は「そうですか……疑ってすみません」と謝罪を入れると、清水谷竜華は「大丈夫や。こっちこそそう思われるようなこと言ってすまんかったな」と言うと、今度こそ対局室へと向かって行った。

 

 

 

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「シズ!後は任せたからね!」

 

 

 一方の阿知賀の控え室では、高鴨穏乃が阿知賀のメンバーに送り出されているところであった。新子憧にそう言われた高鴨穏乃は「おう、任せとけ!」と意気込みを示しながら飛ぶようにして対局室を出て行く。

 

「穏ちゃん、大丈夫かなあ……」

 

「大丈夫大丈夫!シズならなんとかやってくれるって!」

 

 心配する松実玄を元気付けるためにそう言った新子憧だが、彼女も実際かなり厳しい局面に追い込まれているのは理解している。だが、それを表に出してはチームの士気にも関わってくる。故に、前向きな発言をするしかなかった新子憧は、高鴨穏乃に全てを託すしかなかった。

 

 

 

 

 

(千里山の大将……清水谷竜華さん……!)

 

 そうして対局室にダッシュでやってきた高鴨穏乃は、既に対局室入りしていた清水谷竜華の事を見据えながら、ここの場面では静かに雀卓のある中央へと向かって行く。自分の目の前にいる人間こそが、今の自分にとっての最大の敵であることを認識しながらキッと見つめる。

 

(お……阿知賀のジャージの子……高鴨さんとか言っとったか)

 

 一方の清水谷竜華も高鴨穏乃の存在に気付き、目線だけで高鴨穏乃の事を捉える。パーキングエリアで出会った事を昔のように思い出していた清水谷竜華ではあったが、開始の時間に近づくにつれ、友好的なオーラから一転、急に攻撃的な威圧感へと変貌させる。

 

(これが……全国二位……千里山の大将……!)

 

 そのプレッシャーをビリビリと感じていた高鴨穏乃は少し身震いしながらも、しっかりと正面から清水谷竜華と対峙していた。

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