宮守の神域   作:銀一色

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第389話 二回戦A編 ㉜ 山奥

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視点:神の視点

東一局一本場 親:千里山 ドラ{一}

千里山 188900

劔谷   87800

越谷   31000

阿知賀  92300

 

 

 

 

「ロン!5200の一本場!」

 

 

阿知賀:和了形

{二三四九九①②②③④234}

劔谷

打{③}

 

 

(ふ、振り込んじゃった……)

 

 

 高鴨穏乃が山の支配に目覚めた直後の東一局一本場、ノリに乗っているはずの清水谷竜華がいながらも、局が終盤まで縺れ込み、最終的に阿知賀の高鴨穏乃が劔谷から{③}をもぎ取った執念の和了によって千里山の親を蹴ることに成功する。清水谷竜華は高鴨穏乃の事を見ながら、こう心の中で呟く。

 

(……序盤に和了りきれなかったんが痛かったな。それに……ウチにはあんま関係ないかもしれへんけど、多分、終盤になるにつれて阿知賀の支配力が上がっとるな。成る程……山の深くまで行けば行くほど、あんた(高鴨穏乃)のテリトリーに近づくって事か)

 

 

 この東一局一本場、清水谷竜華は何かに目覚めた高鴨穏乃の様子を見ていたというわけではない。普通に攻めに行った結果、それが裏目になってしまい終盤まで縺れ込んでしまったというだけであって、別に様子見でもなければ、高鴨穏乃が清水谷竜華に何らかの影響を与えたという事でもないのだ。言うなれば、この局は完全なる清水谷竜華のちょっとした裏目で阿知賀の和了を招いてしまったのだ。

 しかし、その明らかなる裏目の中で清水谷竜華は高鴨穏乃が放つ『山の支配』が、局が終盤になればなるほどそれの支配力が高まっているということに気付いた。牌山を山と見て、その山奥……言うなれば牌山の最後に近づくにつれて、彼女の支配が強力となっていくのを感じたのであった。

 だが、支配力が高まっているとは言っても、未だ何も清水谷竜華に実害を与えていないが故に、具体的にどんな作用を持つのか分からないため、現時点では然程脅威としてはいなかったのだが、ここで清水谷竜華は思考を終了させることなく、ある一つの仮定を出した。

 

(今のウチに全く影響がないってことは……阿知賀の支配は能力妨害系か……それとも他の系統か……今んところ能力妨害系が怪しいな)

 

 

 そう清水谷竜華は仮定を出すと、正直に手強い相手だと感じた。無能力者に近い清水谷竜華にとって、その仮説が当たっていれば殆どと言っていいほどの人畜無害な支配ではあるが、それでも尚手強いと感じていた。それは、彼女の爆発力に対してである。

 いくら目覚めたとは言っても、東一局と東一局一本場という僅か二局で、ここまで人は変われるものだろうか。東一局では清水谷竜華に対して驚愕の顔を隠せていなかったあの高鴨穏乃が、一本場でこうも、さも対等に戦っているかのような表情でいられるだろうか。明らかに別人であり、天と地ほどの差がある。清水谷竜華は支配や、支配力よりも彼女の未曾有の可能性、そして先程から得ていた確固たる信念、自信を評価していたのだ。その彼女の心構え、気迫に比べれば山の支配や、支配力増加など副産物に過ぎないのであった。

 

 

 

(これで差が開いた……って言ってもまだ点差は15000ちょっと……気は抜けない……)

 

 一方で、和了ることのできた高鴨穏乃は意外にも冷静に現状を確認しながら、次にどのように動くべきかを吟味していた。

 恐怖や不安、驚愕などのあらゆるマイナスの思考を搔き消した事によって、動揺や焦りを生む事なく、自然体のままで麻雀を打つ事ができる彼女に対し、振り込んでしまった事によって段々と焦りを感じ始めていた劔谷。どちらが勝負事において優位かはもはや言うまでもなかった。

 が、だからといって確実に勝ちになるかと言われると必ずしもそうとも言えないのが事実であり、現にこの勝負は高鴨穏乃と劔谷との一騎打ちではない。越谷もいれば、千里山もいるのだ。そしてその中で一番脅威となるのは劔谷ではなく、千里山であるのだから、目先の劔谷に気持ちを引っ張られているといつ足元をすくわれてもおかしくない。しっかりと警戒を敷かなくてはならないのだ。

 

(全力全開で挑む……!)

 

 そう意気込んだ阿知賀の高鴨穏乃は、千里山の清水谷竜華の事を見据えながら牌山を崩し、新たな『山』を生成させるのであった。

 

 

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「どう思う?白望、あの子……なんか変な感じが……」

 

 

 観客席で二回戦の様子を見ていた臼沢塞が隣で座っている小瀬川白望に向かって尋ねると、小瀬川白望は「あー……」と空返事のように口を開くと、高鴨穏乃の事を指差しながらこう言った。

 

「多分……なんかの支配を働かせてると思う……東一局の竜華の和了をきっかけに、実際に穏乃の中で何があったのかは分からないけど、今の穏乃は全くの別人である事は確か……」

 

「それに、竜華に何も影響が無いのを見ると、もしかしたら塞に近い感じの支配かもね。……似てるってだけで、本質は全然違うだろうけど」

 

 小瀬川白望がそう言うと、鹿倉胡桃が「塞に近い支配?」と聞き返す。すると小瀬川白望は少し考えると「……近いっていうか……塞は真っ向から相手の能力を塞ぐけど、多分穏乃はそんな感じじゃないと思う。無効化っていうか妨害みたいな……そんな感じ」と、もはやニュアンスの違いではあったが、小瀬川白望はしっかりと答える。だが、それを聞いていた皆が頭の中で『一体何が違うんだ』とクエスチョンマークを浮かべていた。それに気付いた小瀬川白望は「まあ……阿知賀と当たったとしても、別に私が相手するからあんまり関係ないんだけどね……」と言って強引に話を終わらせる。

 

 

(……それに、山が深くなれば深くなるほど支配は強まるのか。……能力持ちの人からしてみれば、これ以上にダルい支配はないね……)

 

 

 

 


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