宮守の神域   作:銀一色

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第394話 二回戦B編 ③ 先勝

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視点:神の視点

東一局一本場 親:清澄 ドラ{東}

清澄 112000

宮守  96000

姫松  96000

永水  96000

 

 

清澄:和了形

{六六七七八八②②⑥⑦678}

ツモ{⑤}

 

 

(今の和了、明らかにツモをズラされたじぇ……やっぱりそう簡単には行かない……!)

 

 出だしの東一局で親満貫をツモ和了り、一見、流石東風の王と呼ばれるだけの好調な滑り出しを見せたかに思われた片岡優希は、今の和了を見て今一つな表情を浮かべる。本来、今の手牌と流れからして、この東一局は{⑧}を一発でツモって合計八飜、親倍満を和了る手筈であった。しかし、それは現実にはならなかった。姉帯豊音が切った{5}を神代小蒔が鳴いてしまったため、片岡優希の思い描いていた理想はあっさり阻止されてしまった。

 いくら片岡優希といえども、今の鳴きは偶然だとは微塵も思っておらず、姉帯豊音はツモをズラすために神代小蒔を鳴かせようとし、また神代小蒔はその意図を察して鳴いたと、そう気付いていた。明らかに警戒されていた片岡優希だが、それに悲観する事なく、むしろ視点を変えてポジティヴに捉えていた。

 

(……それほど警戒されてるということは、裏を返せば誰も私の速さについてこれないってことだじぇ……)

 

 心の中でそう意気込んで賽を回す片岡優希ではあったが、そんな彼女を見て姉帯豊音は笑みを浮かべていた。

 

(先負も良いけどー……多分片岡さんに追い付かないだろうし、それだったら先勝で追いかけっこが良いねー……)

 

 

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「……そろそろ動くな。宮守のあのデカイの」

 

 その一方で、控室で先鋒戦の様子を見守っていた姫松の愛宕洋榎がいきなりそう呟く。隣で聞いていた真瀬由子が「あの人って何かオカルト持ちなのー?」と末原恭子に向かって尋ねると、末原恭子は少し困ったような表情で「それが……全然分からんかったんや……」と答えた。

 

「末原ちゃんの頭脳を持ってしてもか〜?」

 

「代行は少し黙ってて下さい。……バカ強いってことは分かるんやけど、具体的にどんな能力を持ってるかまではまだ……それに、持っとるかどうかも分からんです」

 

「そっか〜残念やわ〜」

 

 赤阪郁乃がそう言うと、愛宕洋榎が「そうか……でも、何か仕掛けてくるのは間違いないと思うで」と言ってモニターに映る姉帯豊音の事を見る。末原恭子も「せやな……前半戦が終わるまでに、何か傾向を掴んでおきたいな……」と呟き、ジッと対局を見つめていた。

 

 

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「リーチ!」

 

清澄:捨て牌

{白3⑦横9}

 

(また……今度は四巡……!)

 

 

 東一局一本場、東一局と同じように、対局が始まってすぐに展開に動きが見られた。清澄の片岡優希が今度は四巡目での親リーチと、先程の悔しい結果を払拭するかのような速度で追撃を放とうとする。上重漫は頭の中で(……誰かしらが鳴かんと、マズい……!)と考えながら姉帯豊音のツモを見守る。

 幸いこの局は上重漫の配牌はともかく、手がかなり速く仕上がってきているので、運が良ければ一発や高め回避だけでなく、和了って親を蹴ることもできるかもしれない。よって先程のように姉帯豊音がピシャリと鳴けるような牌を打ってくれることを望んでいた上重漫であったが、姉帯豊音がはこの場にいる全ての人間が予想していなかった一打を放った。

 

 

「リーチッ!」

 

「「「!?」」」

 

宮守:捨て牌

{東西①横9}

 

 まさかの姉帯豊音による追っかけリーチが放たれた。上重漫や神代小蒔は勿論、先に放った片岡優希でさえも(そんな……東風で私と同じスピード……!!)と心の中で愕然とする。確かに、流れが極端に良ければこういった四巡や三巡でのリーチや聴牌は有り得ないというわけではない。しかし、今は状況が違う。片岡優希という、いわば東風の王がいる状況で姉帯豊音が並ぶということは、姉帯豊音が何かをした、それ以外に可能性は無いのだ。

 

(良い度胸だじぇ……その勝負、受けて立とう……)

 

 一旦は驚かされた片岡優希ではあるが、すぐに気を取り直して姉帯豊音との一騎討ちに意欲を見せる。まだまだ一年坊の片岡優希ではあるが、東風戦に関してはプライドというものがある。自分の庭を荒らされた片岡優希にとって、姉帯豊音は倒さなければならない相手となった。

 

 

(マジか……姉帯がリーチをかけた以上、ウチと永水でどうにかせんと……)

 

 対する上重漫は、姉帯豊音のリーチを見て少しほど驚きというよりも絶望したような表情を浮かべながら牌を切ろうとする。ただでさえ片岡優希が暴れ回ろうとしているこの状態で、姉帯豊音にまで場を荒らされたらたまったものではない。いつ永水の神代小蒔が動き始めるか分からないこの状況で、まさに四面楚歌の状態であった。

 

(……鳴かへんか。しゃあない、あとは頼みの神代に任せるしかない……)

 

 上重漫が切った牌に神代小蒔は何も反応を示さず、山から牌をツモろうとする。上重漫は今や唯一の頼みの綱である神代小蒔に期待を寄せていたが、神代小蒔は姉帯豊音と片岡優希、どちらにも危ない{8}を切ってしまった。

 

(あ、ああ……!?神代、何考えとるんや……?)

 

 それを見て上重漫は信じられないといった表情で神代小蒔の方を見る。姉帯豊音と片岡優希が直前に切った手出しの{9}の裏スジである{58}はいわば危険牌の筆頭。まず切ってはいけない牌なわけではあるが、神代小蒔は平然と切ってしまった。上重漫はその神代小蒔が平然としていることから(それとも……これが通るっていう根拠があるんか……!?)と淡い期待を抱くが、姉帯豊音が「ロン!」と発声し、その期待はわずか二秒で打ち砕かれた。

 

 

宮守:和了形

{二二七八九③④⑤⑥⑥⑥67}

永水

打{8}

 

裏ドラ表示牌

{①}

 

「リーチ一発、2600の一本場だよー」

 

 

(言わんこっちゃない……!まあ、思いのほか点数が低かったからええけど、一歩間違えたら大変なところやったで……)

 

 

 上重漫は額に手を当てながら、しかしそれと同時に安堵しながら姉帯豊音の和了形を見る。宮守に和了られはしたが、2600とかなり低い点数で片岡優希の親を蹴れたため怪我の功名とも言える結果に安心する上重漫ではあったが、片岡優希がそれを許さなかった。

 

「ロン!頭ハネだじぇ!」

 

 

清澄:和了形

{三三三③④赤⑤⑨⑨⑨2228}

永水

打{8}

 

 

「リーチ一発三暗刻赤1、12300!」

 

 

 

(き……清澄……!)

 

 片岡優希が頭ハネで姉帯豊音の和了を無効化させる。頭ハネされた側の姉帯豊音は(惜しかったなー……でも、次は勝つよー?)と、然程悔しそうな表情は浮かべていなかったが、和了った側の片岡優希は若干焦りを覚えていた。

 

(……宮守の黒いおねーさん、点数はそんなに高くはないけど、脅威な事には変わりないじぇ……{9}で待ってたら直撃も有り得たけど、それ以外だったら確実にやられてたじぇ……)

 

 しかし、それでも勝ちは勝ちである。この和了をキッカケに更なる加速を狙って意気込む片岡優希ではあったが、次局の東一局二本場では姉帯豊音にあっさりと和了を許し、結果として親を流されてしまう。片岡優希は魂が抜けたような表情を浮かべていたが、対照的に、親番が回ってきた姉帯豊音は怪しい笑みを浮かべていた。




漫ちゃんのモブ敵というか解説キャラ感が否めませんね……

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