宮守の神域   作:銀一色

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第395話 二回戦B編 ④ 火はついた

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視点:神の視点

東二局 親:宮守 ドラ{九}

清澄 122500

宮守 100800

姫松  94500

永水  82200

 

 

「……厄介な清澄の親番も蹴れたし、とりあえず大丈夫そうだね」

 

 東二局、親を蹴って自分の親番とした姉帯豊音をモニター越しに見つめながら、一先ずは安心といった口ぶりで臼沢塞が呟く。それに同調するように鹿倉胡桃とエイスリンが「豊音、楽しそう!」「トヨネ!」と言う。確かに今のところ厄介な片岡優希の親を二本場で蹴ることができ、かなり良い状況となっているが、小瀬川白望に限ってはいまだ厳格な表情で対局を見ていた。

 それに気付いた熊倉トシが「……まだ、何かあるのかい?」と小瀬川白望に向かって聞くと、小瀬川白望は「まあ、今のところは大丈夫ですよ……今のところは」とまだ何かが隠されているような口調でそう答えると、臼沢塞は「もしかして、永水の人?牌譜で見たけど、たまに凄く強くなってた……」と小瀬川白望に向かって言った。

 

「……それはまだ大丈夫。まだ()()()()()()

 

「寝てない?どう言うこと?」

 

 鹿倉胡桃が横から話に割って入る。エイスリンもホワイトボードに神代小蒔が眠っている事を表している絵を見せながら「ネムッテル?」と小瀬川白望に質問するが、小瀬川白望は「まあそれはその時になってから言うよ……それよりも、気になってるのは姫松の方……」と言ってモニターの方に視線を向ける。

 

「姫松って、あの上重さんって人?」

 

「うん……」

 

「そんなに凄そうな能力とか持っているようには思えないけど……」

 

「見かけではね……でも、いつその導火線に火が付くか分からない……小蒔のはいくら神様って言ってもいつくるかは大体分かるし、それだけで見たらいつくるか分からない漫の方が面倒……」

 

 

(……こんなことならあの時、一度見ておくべきだったかなあ。あの時は洋榎もいたし漫がそれを発揮したらダルい事にはなっただろうけど……)

 

 小瀬川白望は皆に説明し終わった後、頭の中で去年上重漫を含む姫松メンバーと打った時の事を思い出す。あの時は自分が勝つために爆発させる隙を与えることなく封殺したのだが、そのせいで彼女の真の力を見れなかったのである。その事を今になって悔やんでいた小瀬川白望であった。

 

 

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視点:神の視点

 

 

「ツモ!」

 

宮守:和了形

{三三②③④④赤⑤⑥⑧⑧⑧67}

ツモ{赤5}

 

「3900オールっ!」

 

 

 続く東二局、宮守の親番の姉帯豊音は引き続き先勝を使用して速度で片岡優希に勝って和了。これで東二局一本場となったわけだが、何度も同じ戦法で連続で和了られるほど片岡優希は白痴ではない。門前の勝負では互角のスピードであるため、片岡優希は鳴きを駆使して和了を目指す。するとそれが功を奏したのか、東二局一本場では片岡優希に軍配が上がった。

 

 

「ツモだじぇ!」

 

 

清澄:和了形

{三四四五赤五⑥⑦⑦⑦⑧} {②横②②}

ツモ{六}

 

 

「600、1100!」

 

 

 片岡優希と同じようにあまり積み棒を増やす事なく親を流されてしまった姉帯豊音であったが、(……やっぱりこうでなくちゃねー、ちょー頑張るよー!)とあまり悔しがっている様子はなく、むしろこの状況を楽しんでいるようにも見えた。が、そんな楽しんでいる様子の姉帯豊音であったが、少し気にかかる事があった。それは今、何やら様子がおかしい上重漫であった。姉帯豊音は上重漫の事を見ながら(上重さんに何か異変があったら仏滅を優先的に使ってってシロは言ってたけど……今がその時なのかなー?)と首を傾げていた。

 

(おかしいじぇ……姫松の人、なんだかイヤに大人しいじぇ)

 

 同時期に片岡優希も上重漫の異変……とまではいかなくとも彼女に対してどこか引っかかりを覚えていた。まだ片岡優希が親であった時の彼女はあらゆる事に対して驚きの色を見せていたが、この局と前局ではその反応が一切見られなかった。この異常な空間に慣れてしまったのか、何が原因かは分からないが、上重漫は大人しいというか、集中状態にあるというか、言葉で言い合わらせぬ状態であった。

 

 

 

 

 

 

「あかんな……ここまでの五局、清澄が三回に宮守が二回……永水の神代はまあアレとしても、漫が蚊帳の外やな……」

 

 一方で姫松サイドでは末原恭子が険しそうな表情を貼り付けたままそう呟く。末原恭子は未だ上重漫の異変に気づいていなかったようではあるが、何かが起こっている事に気づいていた愛宕洋榎が「いや……そうとも限らへんで」と言う。

 

「……どう言う事なん?お姉ちゃん」

 

 妹である愛宕絹恵が姉にそう質問すると、愛宕洋榎は「今の漫の手牌もその前の手牌も……和了れはせんかったけど、789の牌が偏り始めとる」と皆に向かって話す。愛宕洋榎は上重漫の爆弾の特徴を完璧に理解しており、それに加え上重漫の手牌に常に注意しながら見ていたからこそ気づいた些細な偏りではあるが、偏り始めているのは事実であった。

 

「確かに〜……言われてみればそうかもな〜。流石主将さんやで〜」

 

「……それってもしや、漫ちゃんの爆弾が爆発するかもしれないってことー?」

 

 真瀬由子が愛宕洋榎に向かってそう言うと、愛宕洋榎は笑みを浮かべながら「ああ……そう言う事やな。一番の課題やった導火線に火はついた。……後は漫次第やで。もしかしたら、どデカい爆弾が破裂するかもなあ……」と言い、モニターに映る上重漫の事を眺めた。


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