宮守の神域   作:銀一色

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第398話 二回戦B編 ⑦ 一度寝

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視点:神の視点

南一局 親:清澄 ドラ{西}

清澄 119400

宮守 117800

姫松  83600

永水  79200

 

 

 

 

 

 当たり前の話ではあるが、各校の控室の構造はどこも大概は同じである。それは無名強豪関係無く皆等しく同じであり、そこに格差は生じない。そのはずなのだが、そんな当然の事を一切合切無視するかのような、一際異彩を放つ控室があった。そこの造りはまるで別世界にいるかのような空間。謎の橋がかけられていたり、日本の伝統とも言える『和』という言葉が一番最初に出てきそうな木造建築物……もとい控室が設けられていた。いや、外装を見るにもはや建てられていた、と表現した方が正しいか。

 そんな異質な空間の中では姫松高校を押さえつけてシード校に成り上がった永水女子の面々が先鋒戦の様子を眺めていた。現在、永水女子は神代小蒔が一度も和了れておらず、そのせいあってかトップを走る清澄とそれを猛追する宮守に三万点以上離されて最下位に落ち込んでいる。今もせっかく回ってきた神代小蒔の親もあっさりと流されてしまった。完全に蚊帳の外である。シード校の風格もへったくれもない凄惨な状況ではあるが、永水メンバーに焦りの色は見られなかった。

 

 

「あら……あっさり小蒔ちゃんの親が流されちゃったわね……」

 

「姫様はまだ頑張り屋さんモードですからね……いくら基礎力を上げたと言っても、相手が相手ですし……」

 

「これは次鋒戦までにかなり離されそうですねー。トバされなければ良いんですけどねー……」

 

 薄墨初美が少し心配そうな、しかしそれでいて未だ焦りはしないといった声色でそう呟くと、滝見春が「でも姫様が二度寝すれば……形勢逆転とまではいかなくても……何とか……」と、神代小蒔の真骨頂とも言える、『九面』と呼ばれる九種類の神をその身に降ろして神の力を振るうという反則技と言われてもおかしくないトンデモ能力さえ発揮できれば取り敢えずは大丈夫だと示唆するように言う。

 確かに、いくら相手があの先鋒のメンバーだと言っても、神様相手となれば話は違ってくる。打開策と思えた姉帯豊音の仏滅も、先ほどの流局で分かった通りあまり期待はできない。実は小瀬川白望が一番危惧していたのは神代小蒔の『九面』の事で、流石の姉帯豊音と雖も、神様相手では分が悪い。神代小蒔のそれ次第では一発で点差が吹っ飛ぶ。そう予想するほどであった。

 

 

「そうね……一応、降りてくる神様は調整してなるべく強い神様が降りるようにしてるから、大丈夫だとは思うけど……」

 

「……使うんですか?」

 

 石戸霞が意味有りげにそう呟くと、狩宿巴が深刻そうな表情でそう質問する。何を言わんとしているのかを直ぐに気付かれた石戸霞は少し誤魔化そうと思考したが、すぐに諦めて「ええ、勿論よ。……ここで使わずに、いつ使うって言うのかしら?」と答える。

 

「……いつか壊れても知らないですよ」

 

「あらやだ。それは怖いわね……でも、生憎あちら側も気合が入ってるみたいだし、……そうでしょう?」

 

 石戸霞がこの場にいない『誰か』に声を掛けると、どこからか『当然じゃ……』と声が聞こえてくる。石戸霞以外の者は少しびっくりして周りを見渡すが、そこには誰もいない。しかし、はっきりと声が聞こえてくるのだ。その言葉に含まれているのは、明らかなる怒気。

 

『あの白髮を見る度に否が応でも思い出す……儂の憎き宿命の敵……赤木しげる……!!』

 

「……でも、実際問題、シロは赤木しげるさんでは無いでしょう?」

 

『そう……確かに!儂と闘った数年後……いわば奴の臨界点……その時期に比べればまだ生温い……が!あやつはもう既に……鷲巣麻雀で儂が奴と殺し合ったあの時の奴に限りなく近い……遜色無いと言えるほどに……!だからこそ目障りなのだ……!』

 

 そう怒声を響かせる声の主こと鷲巣巌に対して、石戸霞は「そうかしら?可愛いと思うのだけれど」と冗談混じりに言うと、その言葉に過激に反応した鷲巣巌が『戯け!アレのどこが可愛いんだッ!?あんなもの、神も悪魔も震える恐ろしい何かでしか無いわ!』と言う。

 

「まあ、冗談はそこまでにして……どうかしら?今の私があなたの力を借りて、シロと闘って勝てるかしら?」

 

 石戸霞がヒートアップする鷲巣巌を宥めるために話題をぶった切ってそう尋ねると、鷲巣巌も少し冷静さを取り戻したのか、少し考えた後にこう言った。

 

『……その時だけなら五分、だな』

 

『貴様の上達は限りなく早い……流石神を従える一族の血統を継ぐ者ではある……それこそ今の儂の五割から七割……鷲巣麻雀でアカギと打った時の力くらいは無理をすれば出せるじゃろ……そして、あやつがその時のアカギ程度だとすれば……五分と言わざるを得ん』

 

「成る程……分かったわ」

 

 鷲巣巌の答えに納得するように頷く石戸霞であったが、鷲巣巌は『……四局だ』と直ぐに付け足す。石戸霞が「四局?」と聞き返すと、鷲巣巌が『今の貴様が儂の力を思う存分使えるリミット……それを越えたら知らんぞ』と警告する。

 

「あら、優しいのね。麻雀ではあんなに怖いのに」

 

『張り倒すぞガキが……貴様が死ねば、儂は雪辱を張らせなくなるんだ……最初の契りを忘れるなよ小娘……』

 

「分かってるわよ」

 

 

 そう石戸霞と鷲巣巌が会話していると、モニターに映る神代小蒔の様子に変化が起こった。先ほどまでいかにも麻雀下手な打ち筋だったのが、一気に変貌したのだ。それは二度寝ほど劇的なものではなかったが、それの予兆……神代小蒔は一度目の眠りに就いたのだった。それに気づいた滝見春が「姫様……眠った……」と呟く。

 

「そのようね……でも、もう前半戦が終わっちゃう……」

 

 石戸霞が点棒状況に目を向けながらそう言う。確かにもう前半戦のオーラスで、後は後半戦しかないのだが、それでも大丈夫といった感じのムードではあった。

 

『しかし……本当に『九面』とやらであやつらを圧倒できるのか?儂にはどうもそうは思えんのじゃが……』

 

 鷲巣巌が怪訝そうに神代小蒔の『九面』について聞くが、それはあくまでも神を下に見る事の出来る鷲巣巌だからこそ言えるだけの話で、それこそ神を相手に闘える者など彼と宿敵である赤木しげる、そしてその弟子小瀬川白望くらいしかいないのだ。隣で聞いていた石戸霞が少し呆れたような声色でこう呟く。「……そう思うのは、多分あなただけよ……」と。




結局永水の控え室はなんだったのでしょうね……
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