宮守の神域   作:銀一色

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第401話 二回戦B編 ⑩ 自責の涙

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視点:神の視点

先鋒戦終了時

宮守 108700

清澄 125600

永水  79400

姫松  86300

 

 

 

「わああああああああ〜……!」

 

「大丈夫だよ……豊音。よく頑張った……」

 

 先鋒戦が終わった後、サインを貰う事も忘れてすぐに姉帯豊音が戻って来たと思えば涙を流し、声を上げながら小瀬川白望に抱き着いた。小瀬川白望はそんな姉帯豊音を真正面で受け止め、労うようにそう慰めの声をかけて手を彼女の頭にポンと置くと、姉帯豊音は泣き噦りながら「で、でもっ……だって……ひぐっ、役満に振っちゃって……二位に、なっちゃった……」と、若干支離滅裂ながらも後悔の念を述べていく。今の姉帯豊音の状況から察するに、相当先ほどの役満が姉帯豊音にとって効いたのだろう。

 確かに姉帯豊音は小瀬川白望との特訓によって精神面は鋼と言わんばかりに磨き上げられて来た。当然、ちょっとやそっとのことで疑心暗鬼に陥ったり自信を喪失したりする事のないように重点的に鍛え上げられて来たのは間違いない。しかし、それはあくまでも勝負の時だけの話であり、勝負が終わった今、姉帯豊音は至って普通の少女と何ら変わりはないのだ。そんな彼女にとって、あろうことか一番注意しなくてはいけない役満に振ってしまった、皆の期待を背負って先鋒を任されたのに、最後の最後で二位に転落してしまった、といった自責、呵責は耐え難いものだったのだろう。内容では終始圧倒していただけに、最後の振り込みだけが彼女を大きく責め立てたのだ。

 

「大丈夫、大丈夫だから……」

 

「ううう……」

 

 小瀬川白望が語りかけるかのようにそう言い、姉帯豊音の事をより一層強く抱き締めると、姉帯豊音はようやく心の落ち着きを取り戻せたのか、涙を拭い始めた。

 

「豊音!シロの言う通り、大丈夫だよ!失ったものは皆で取り返せばいいだけなんだし」

 

 

「そうそう、これまで一番頑張ってたのは豊音だって、ウチらが一番分かってるから。役満の一つや二つ、豊音の功績に比べればどうって事ないわよ」

 

 

「胡桃……塞……」

 

 鹿倉胡桃と臼沢塞の言葉に精神的に救われた姉帯豊音は心打たれ、先ほどとは違った意味の涙を流す。それを微笑ましく見ていた小瀬川白望は、エイスリンに向かってこう言う。

 

「……エイスリン」

 

「?」

 

 

「豊音が流した涙の分まで……全力で頑張ってきて」

 

 

「ウン!トヨネノ、カタキ、トル!」

 

 

「任せたよ」

 

 小瀬川白望はそう言ってエイスリンの事を送り出すと、未だに感動の涙を流して泣いている姉帯豊音の方に視線を向けながら、(……立ち直れたみたい。トラウマになってないようで良かった……)と安堵するが、そうも言ってられないのも事実である。仮にこの二回戦を突破したとして、姉帯豊音が闘うことになるのは九分九厘辻垣内智葉だ。確かに神代小蒔のような超強烈な一発を持ち合わせているというわけではないが、総合的な強さで言えば辻垣内智葉の方が数段上である。無論、姉帯豊音よりも、だ。仮に姉帯豊音が六曜をフル活用したとしても、辻垣内智葉はそれらに上手く対応し、立ち回ることができるだろう。彼女はそれほどの技量を持ち合わせているのだ。

 そう言った意味で、神代小蒔よりも厄介であり、姉帯豊音に今以上に深い傷を負わせるのではないかと今から若干心配になっていたが、まだ未定の準決勝よりも、今の二回戦に焦点を合わせるべき。姉帯豊音以外にも心配な要素はまだ残っている。そう頭の中で考えた小瀬川白望は、次鋒戦の相手の牌譜に目を通す。

 

(確かにエイスリンの能力は強い。それは間違いない。……だけど、エイスリンはそれに頼り過ぎてるところがある。だから予期せぬ事態に上手く対応できてない場面が多かった……)

 

 

(……困った時、あのアドバイスが役に立つと良いけど)

 

 

 

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「ただいまだじぇ……」

 

 

「お帰りなさい。一位で終わるなんて、よく頑張ったじゃない!」

 

 一方で、片岡優希が一位で先鋒戦を切り抜けてきた事に対して祝福する清澄メンバー達だったが、その対照に片岡優希の表情は晴れない。宮永咲がそれに気づいて「優希ちゃん、どうしたの?」と声をかけると、片岡優希はこう語った。

 

「……あの一位はまぐれだじぇ」

 

 

「まあ確かに、神代の一発があってこその一位だったのお」

 

 

「あの黒いおねーさんがやられてくれたから良かったけど……実際は完敗だったじょ……」

 

 そう言って落ち込みを見せる片岡優希。やはり自分の庭とも言える東風戦で姉帯豊音によって思うように和了れなかったことを悔やんでいたようだ。しかし、それでも勝ちは勝ちである。過程はどうであれ、勝ったものが前に進む権利を与えられるのだ。そういった意味の言葉を竹井久が言うと、今度は染谷まこの肩を掴んでこう言った。

 

 

「宮守の留学生は初心者でも、格上なのは確か……任せたわよ」

 

 

「分かっとるわい……全く、鶴賀といい次の宮守といい、初心者には良い印象が無いわ……」

 

 

「……ああ、それと」

 

 そうして部屋から出て行こうとした染谷まこを引き止めるように竹井久が声を発すると、染谷まこが振り向いて「なんじゃ?」と聞き返す。

 

「……姫松の三年生に気をつけなさいよ」

 

 

「姫松の三年生って言うと……真瀬さんか?」

 

 

「ええ、そうよ」

 

 

「……どうしてじゃ?」

 

 染谷まこが竹井久に向かって質問すると、竹井久は「……根拠は無いけど、何かしてきそうよ。あの子」と意味深にそう返した。竹井久は頭の中で愛宕洋榎の事を思い浮かべながらこう心の中で呟く。

 

(……何か、愛宕さんが何か吹き込んでそうなのよね……あの子)

 

 

「まあ……そう言うんだったら気をつけるわい」

 

 

「ええ……任せたわよ」

 

 

「……一度で十分じゃ」

 

 

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