宮守の神域   作:銀一色

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第411話 二回戦B編 ⑳ 安い挑発

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視点:神の視点

東一局 親:宮守 ドラ{中}

宮守 109200

清澄  96100

姫松 126100

永水  68600

 

 

 

「おお……もう集まっとるな」

 

 

 休憩時間が終わり、控え室から対局室に戻ってきた愛宕洋榎は既に到着していた三人を見ながらそう呟き、中央の卓に向かってゆっくりと歩いて行った。一番気をつけねばいけない強敵の出現に場の空気が自然と張り詰めていくが、その張りを弛ませるかのように「なんや……ちゃんと首は洗ってきたんやろうな?」と、挑発を交えて皆に向かって言う。

 

 

「前半戦のままじゃ、ウチは抜かせへんで」

 

 

(……っ、確かに、そうね)

 

 

 愛宕洋榎のわざとらしいとも言える安い挑発に竹井久が心の中で同意する。前半戦、いくら愛宕洋榎に自由にさせなかったと言っても、収支で見れば愛宕洋榎の圧倒的一位なのだ。当然、前半戦の戦略である三対一での協力体制を後半戦でも行えばそれほど点差は広がる。いくら要所要所を抑えることができても、やはり周りと手を取り合って妨害するという方法では自分の点が伸びない。そして何より愛宕洋榎を一人狙いするわけではなく、あくまで愛宕洋榎の和了を阻止する事ではないため、愛宕洋榎の点を削ることはできない。点差が開いて仕舞えばその協力体制はただの足枷でしかない。

 が、かといってその協力体制を解消すれば三対一という数的有利が無くなってしまう。三対一でこの結果になっているのに、一体一で挑んで話になるのだろうかという不安が竹井久の頭の中によぎる。

 

 

「ま……一体三でもなんでもウチはかまへんよ。どんな状況でも、ウチが全力で捻り潰すだけやからな!この愛宕洋榎を、止めれるもんなら止めてみいや!」

 

 

 声を張り上げて、意気揚々に自信をひけらかす愛宕洋榎であったが、彼女のわざとらしい挑発に我慢しきれなくなったのか、鹿倉胡桃が「もういいから!親決めもう終わってるから、早く座るよ!」とバッサリと切る。怒られた愛宕洋榎は少し怯みながら「お、おう……そか」と小声で呟く。

 

 

(絶対、負けない……!)

 

 

(……ほう。ちっこいのはようやく本調子になったみたいやな)

 

 

 しかし、愛宕洋榎は叱咤する鹿倉胡桃を見て調子が戻った事に気付くと、(……まーたシロちゃんか?まあ、それはそれで有難いからええんやけどな)と心の中で呟きながら、笑みを浮かべる。一方の竹井久も(……成る程、宮守も本領発揮、というわけね)と感じていた。

 

 

(それなら、私もいつも通りやらせて貰うわね……!)

 

 

 

(……蚊帳の外。まあ、良いんだけど……)

 

 

 

 そんな三年生三人を眺めながら滝見春はそう呟く。力量的にも雰囲気的にも蚊帳の外だと言わざるを得ない状況の彼女であったが、彼女もまた大将の石戸霞に負担をかけるわけにもいかないという思いを持って、中堅戦後半戦が始まった。

 

 

 

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「ツモ!4000オール!」

 

 

 

 

 

宮守:和了形

{①②⑤⑥⑦中中} {⑥横⑥⑥} {南南横南}

ツモ{③}

 

 

 

 初っ端の東一局、本調子に戻った鹿倉胡桃は混一色ドラドラの親満貫を和了って一本場へと親を継続する。後半戦に入り、愛宕洋榎を止めるだけの三対一を撤廃して真っ向勝負を挑んだ鹿倉胡桃だったが、初局は鹿倉胡桃が制する。愛宕洋榎はその和了に身体をうずうずさせながら「ええやん……ええよええよ!」と思わず声に出してしまうと、やはり鹿倉胡桃は「いいから点棒渡す!」と指摘されてしまう。その返しに少し照れ臭そうに「はは、すまんな。つい……ようやく本当に楽しくなってきたからな……」と点棒を渡す。

 しかし、そう言われた側の鹿倉胡桃は彼女の言葉に若干距離を置き、心の中で(……気持ち悪い!)と一蹴した。

 

 

 

(……まあ、麻雀を楽しむのはええけど、これはインハイや。主将として、エースとしてやらなあかん事はやらんとなあ?)

 

 

 愛宕洋榎は鹿倉胡桃が賽子を回しているのを眺めながら、ゆっくりと目を閉じて自分を戒めるかのように心の中で問いかけると、一気に目を見開く。そう思うと、彼女の目には一段と凄みのある覇気が宿っていた。他の三人がその変化に気付くほど、顕著なものであった。とうとう彼女の最高潮が訪れたようだ。

 

 

(さあ……どっからでもかかってこいや……)

 

 

 

 

 

 

 

「ロン!7700の一本場や!」

 

 

姫松:和了形

{二三六六①②③④⑤⑥⑦⑧⑨}

宮守

打{一}

 

 

 一本場ではやられたものはやり返すと言わんばかりに愛宕洋榎が7700に一本場を加えた満貫相当の手を鹿倉胡桃に直撃させる。鹿倉胡桃はわざわざその手を黙聴にしてまで自分を狙っていたという事に気付くと、自分の十八番でしてやられたことに悔しさを募らせていた。

 

 

(狙われた……!わざわざダマにしてまで……!)

 

 

(悪いな……やられたらやり返さんと気が済まんからな……あんたもそういうタチやろ?)

 

 

(……絶対に潰す)

 

 

 鹿倉胡桃が点棒を渡しながら、愛宕洋榎の事をキッと睨み付けると、愛宕洋榎はそれに応えるようにニッと笑う。中堅戦の後半戦は、どうやら前半戦よりも激化した対局となりそうだ。

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