宮守の神域   作:銀一色

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第427話 二回戦B編 ㊱ 潰す

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視点:神の視点

東四局 親:清澄 ドラ{一}

宮守 110700

姫松 120400

永水  68100

清澄 100800

 

 

 

 長い副将戦も、これを終えれば残すところ南場の四局のみと、勝負はいよいよ終盤の様子を呈していた。しかし、臼沢塞にとっては終盤というよりも、ここからが本当の正念場の始まりだ。この局と、オーラス。少なくとも二回、山場が存在する。ここをどう凌げるかが、収支にそのまま直結する。大将の小瀬川白望に負担をかけまいとする臼沢塞は、親の原村和よりも、北家の薄墨初美の事を見つめながら自身を後押しする。

 

 

 

(ここが耐えどころ……絶対防いでみせる……!)

 

 

 

(有り得ないですよー……この私が、二回の半荘で一度も『裏鬼門』を決めれないなんて……絶対に許されないですよー!)

 

 

 

 一方の薄墨初美も、二回連続で『裏鬼門』を封殺されて一度も和了れなかったことに対して、彼女の矜持、プライドに抵触したのか、その事に激しい自責、憤りのようなものを感じていた。故に、今度こそ臼沢塞の支配を打ち破らんという決死の思いで配牌を取っていく。

 彼女も、清澄の原村和が自分の能力を臼沢塞潰しに利用されている事に薄々勘付いてはいるが、原村和も薄墨初美も、目指すところは打倒宮守という共通項を持ち合わせている。故に、薄墨初美は自身が利用されている点を、癪だとは微塵も思っておらず、むしろ『裏鬼門』の発動条件を未然に達成できるので有難いとも思っていた。

 

 

 

(清澄……頼みますよー……!)

 

 

 

 

 薄墨初美は急に原村和が急な心変わり、裏切りのないように心の中で念を押すようにして言うと、原村和の第一打から始まった。もちろん、原村和は最初に『裏鬼門』の発動条件の内の片方、{東}をすぐさま切ってきた。

 

 

 

「カンですよー!」

 

 

 

(やっぱ……来るかァ……)

 

 

 

 

 薄墨初美が早々に大明槓をする光景を見つめながら、臼沢塞が歯嚙みする。やはり、流れ云々は彼方側に味方しているのは間違いない。そうでなければ、このように都合よく原村和の手元に最後の一枚が行き渡る事など、そうそう有り得る話ではないのだ。

 牌譜を見る限りでは、北家になると薄墨初美は好調時であれば{東}と{北}をそれぞれ三枚抱える。そもそもそんな好調時が来る事自体流れが良いのだが、その好調時であると仮定しても、残り一枚は確率的に四分の一。清澄、永水サイドに回るのは二分の一なのだ。それが、今ので五回連続という事になる。残る{北}の行方は分からないが、恐らく六回連続という事になるだろう。それほど、今流れは彼女達に向かって吹いていた。

 が、それならば『塞い』でしまえばそれで済む話。そう自分に言い聞かせ、臼沢塞は原村和がいつ動くのかを警戒しながら自分の手を進める。前半戦とは違い、今度は自分は和了っても大丈夫だ。むしろ、和了れた方が都合が良い。発動させる前に蹴れればいいのだが、そうそう事は上手くいかず、六巡目に薄墨初美は{北}を暗槓、『裏鬼門』のお出ましとなる。無論、臼沢塞はその瞬間から視線を薄墨初美に向け、神経を集中させる。これで、最初の愛宕絹恵のも含めればこの対局が始まってから四回目となる。今となっては素直に愛宕絹恵に和了らせておけば良かったと若干後悔する臼沢塞だったが、つべこべ言っている暇はない。少しでも気が緩めばアウトなのだ。集中を切らさないように細心の注意を払う。

 

 

 

 

(……そろそろ、宮守もやばいんとちゃうんか)

 

 

 

 その一方で、これまで清澄・永水サイドでも、宮守サイドでもなく、中立を保ってこの『裏鬼門』争いを静観していた愛宕絹恵は、臼沢塞の様子を観察しながら、あとどれくらいまで行けそうかを確認する。確かに清澄と永水の作戦で、臼沢塞が潰れれば嬉しいに越した事はない。が、そうなると今まで臼沢塞によって保たれていた均衡が崩壊し、その余波は一位の姫松に対しても影響を及ぼさない保証はない。故に、愛宕絹恵としては臼沢塞が疲労で弱体化する直前までに留めておいて欲しいのだが、生憎二人はそこまで甘くはない。今の状態はまだ良いが、これから先どうするかと考えていたところ、愛宕絹恵は原村和の捨て牌の異変に気付く。

 

 

 

(……どうしたんや、清澄。さっきまでとは違……)

 

 

 

 そこまで考えて、愛宕絹恵は絶句する。そう、この瞬間気づいたのだ。原村和が今行おうとしている事に。そうして愛宕絹恵はもう一度、改めて捨て牌を念入りに確認する。間違いない。前半戦までは、『裏鬼門』を発動させた後は決まって愛宕絹恵に和了られることの無いように、意図的に当たりそうな牌を絞って打ってきていたのだ。そのおかげで愛宕絹恵は和了ることができず、どちらも流局に終わってしまったのだ。

 だが、今度は違う。今度は愛宕絹恵を和了らせない、そういった意志は感じられず、むしろ逆。自分が和了るといった意志を放っていた。恐らく、原村和は本気で和了りに行くつもりであろう。今、原村和は親である。何が言いたいのかといえば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事が起こりうるのだ。即ち、臼沢塞は自身が清澄の親を蹴らない限り、永遠に塞がなくてはいけない事になる。いくらなんでも、これはあまりにも残虐すぎる。だが、それほど清澄も永水も、覚悟してこの場に立っている。例え人を潰す事になっても、上へ進もうという覚悟の裏返しとも言える。愛宕絹恵は原村和の覚悟をその目で見定める。

 

 

 

 

(本気で潰す気なんか、清澄……!)

 

 

 

 

 この時、何より原村和にとって大きかったのは、臼沢塞はその事に気づく気配が無いのだ。先ほど臼沢塞は目の前にいる薄墨初美に全集中力を費やすと心に決めたばかりで、原村和の捨て牌には目もくれていなかった。しかし、今に限りってはそれが裏目となってしまっている。

 そんな事を思っていると、薄墨初美が急に『裏鬼門』そっちのけで危険牌を強打してきた。手牌を仕上げていくために溢れてしまった牌というわけでもない。そう、これはただ原村和を和了らせるためだけの強打。流石にここまでくると、薄墨初美しか頭になかった臼沢塞もその異変に気付いたようで、驚きの表情を隠せないでいた。

 

 

 

 

(き、清澄に振り込むつもり……!?そんな事をしたら……そっちだってタダじゃ済まない……ボロボロになるまでやる気か……!)

 

 

 

 臼沢塞は心の中だけに抑えた舌打ちを原村和に向かってすると、薄墨初美の方を睨みつける。これは、非常にまずい。少なくとも、先手を譲られたこの局は原村和が先に和了るだろう。そうなると、ただでさえ厳しいと感じていたあと二局という数字が、どんどん積み重なってしまう。

 

 

 

 

「ロン、3900」

 

 

 

 

 そして臼沢塞の予想通り、この局は清澄がモノにした。これで本来なら終わるはずだった東四局が、よもやの一本場となる。ここから先は正真正銘の死闘。互いの覚悟がぶつかり合う戦場と化す。

 

 

 

(……私が親を蹴るのが先か)

 

 

 

(それとも宮守が先に潰れるか……それとも、永水が点を切らすかのいずれか……ですね)

 

 

 

 

 

 

 

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