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視点:神の視点
東一局 親:清澄 ドラ{8}
清澄 104000
宮守 86600
姫松 113900
永水 95500
「さあ、いよいよ……だな」
観戦室から二回戦Bブロック第一回戦の様子を傍観していた辻垣内智葉は、大将戦がいよいよ始まるといったところで静かにそう呟いた。対局室も当然そうなのだが、それらを傍観する側であるはずの観戦室も独特な緊張感、張り詰めた雰囲気を醸し出しており、メガン・ダヴァンは思わず息を呑んで辻垣内智葉にこう返す。
「……サトハ、随分嬉しそうですネ?次で当たるかもしれないというノニ……」
「まあ、嬉しさ半分……危機感半分……ってとこだな。団体戦でもそうだが、個人戦では直接当たる事になるから、勿論危機感はあるが……それよりも、シロを
「六年ぶり……ああ、あの牌譜の」
腕を組んで二人の会話を聞いていたアレクサンドラは頭の中で過去に一度だけ見た、六年前の全国大会決勝戦での牌譜を思い返しながらそう呟く。あれを見て以来、何度か彼女を臨海女子に入ってくれないかとスカウトはしてみたものの、その度にやんわりと断られた思い出も同時に出てきて、どうせ結局こうなる事は避けられなかったのは分かっていたはずだと、当時異様に躍起になっていた自分をしみじみ思いながら呟く。
「懐かしいな。あれ以来も何度か
「いつの間にそんな事やってたんですか監督……抜け目ないというかなんというか……」
雀明華が少し呆れたようにアレクサンドラに向かって言うが、辻垣内智葉はアレクサンドラの肩を持つように「確かに、シロがウチに入ってくればまず敵は居ないからな。……もっとも、それはどこの高校でも当てはまる事だが」と呟く。
「何を言ってるんデス、らしくないですネ。サトハ。そんなシロサンを止めなければ、臨海に勝ちは無いんですヨ?」
「ふっ……そうだな。正論だ。全くもってその通りだ。確かに、アレは止めると言って止めることのできる奴じゃない。が、それくらい……いや、それ以上。それ以上の気概で行かなければ、まあ勝負にもならんだろうな」
「問題は、あの三人にその根拠の無い無謀さ、覚悟があるかどうかだが……」
(……それにしても、永水。何を隠してやがる。まさかここにきて奥の手でもあるというのか……?)
辻垣内智葉は怪訝そうな表情を浮かべながら、姫松の末原恭子と清澄の宮永咲に比べてみれば随分と平気そうな様子の石戸霞を見て、辻垣内智葉は何かがあるのだろうと察する。それも、あの小瀬川白望を相手にして尚依然とした状態であるという事は、それほどの奥の手、ウルトラCを持ってきたのだろう。そんな彼女を、面白いと辻垣内智葉は評し、前のめりだった姿勢を崩して、深く椅子に凭れかかった。
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永水:配牌
{三六八③④⑦⑧669東白中}
(前に打った時点で既に凄まじかったのに、今はそれを遥かに上回ってるわね……気をに抜いたら失神しちゃいそう)
対局が始まり、配牌を取り終えた石戸霞は目の前から発せられる信じられないほどの気迫、圧力を受けて少しほど指を震わせる。表向きは対局が始まる前も今も、平静を保っているように取り繕ってはいるが、それはあくまでも外面だけの話で、内面はしっかりとプレッシャーを感じていた。しかしそれでも尚平静を装えていられるのは、やはり彼女の後方にいる鷲巣巌のおかげか。彼のも小瀬川白望に匹敵、いや、凌駕するかもしれない圧力である。そんな彼の力に圧倒されつつもその身に受けていたせいか、ある程度の耐性はついているようだ。
(『絶一門』は使えないけど、まあ仕方ないわね……『絶一門』はもうシロに攻略されてるし……)
自身の手牌が一色に染まり、逆に相手にはその他の二色しか行かないようにするという『絶一門』を使えない事を悔やみながらも、仕方ない事だとする。使えない理由としては、『絶一門』を使った後は必ず滝見春に御祓いをしてもらわないといけないのだ。つまり、『絶一門』と鷲巣巌の力を交互に使うといったことは、御祓いを挟まないといけない。当然、対局中にそんな事できるわけもないので、結局は『絶一門』を切り捨てるといった形になった。
それに、彼女の言う通り『絶一門』は過去に終盤になると効力が弱まるといった弱点を小瀬川白望に見透かされ、攻略されてしまったので使えたとしても小瀬川白望を討つ武器とはなり得なかったであろう。そう考えると、使えなくても使えても変わらないのかもしれない。
(……霞の『絶一門』は無し……か。この状況で出し惜しみするほど余裕も無いだろうし、やっぱり何か新しいもので来るのか……それも、条件付き且つ『絶一門』より強力な何かで……)
小瀬川白望は『絶一門』が使われていない事を自身の配牌を見て確認すると、石戸霞は何か別なもので来るのだろうと予想して、淡々と手を進める。そして、親である宮永咲の事を見て、まるで懐かしいものを見るように微笑した。
(
実は小瀬川白望は既に開会式前にも遭遇していたのだが、その時は小瀬川白望は宮永咲の事を認識しておらず、認識したということでは初めてである。宮永照の言っていた妹で間違いないだろうと目星をつけながら、それと同時に能力を推察する。
(……槓、いや、嶺上を得意とするのかな。牌譜と照のアレを思い出す限りでは)
宮永照が小瀬川白望に二度見せた妹の力と、本人の地区大会の牌譜を照らし合わせながら、宮永咲の能力に見当をつける。暗槓明槓問わず、まるで嶺上牌が見えているかのような打ちまわし。いや、実際見えているのだろう。だからこそあそこまで堂々とした打ちまわしができるのだ。確かに、使い方によっては化ける能力ではある。が、そこまで言って小瀬川白望はこう続ける。
(しかし、支配とまではいかない……あなたも私も、槓をすれば同じ……同条件……)
「カン」
「ッ!?」
宮守:七巡目
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {横四四四四}
新ドラ表示牌
{⑥}
まずは手始め、そう言わんばかりに小瀬川白望が早速口火を切った。清澄の宮永咲が無用心に切った生牌の{四}を大明槓。末原恭子はいきなり小瀬川白望が仕掛けてきたのを見て、(ーーまさか。もう和了るって事か……!?)と焦りを見せる。生牌を切った宮永咲も、嶺上牌に何があるのかを確認してから、(やっぱり、この人……!!)と何かに気づく。
が、しかし。小瀬川白望は嶺上牌をツモるところまでは良かったのだが、その後の行動が二人の予測を大きく外れる形となった。小瀬川白望は嶺上牌を手牌に入れ、ツモ和了ではなく、普通に牌を切ったのだ。
宮守:七巡目
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {横四四四四}
打{⑤}
(……っ、嶺上開花じゃ、無い……?)
(助かった……んか?てっきり、和了られると思ったんやけど……)
末原恭子は小瀬川白望の大明槓を見て、十中八九彼女が和了るだろうと予見していたのだが、それが外れる形となって少し困惑している。和了られなかったのならばそれはもちろん嬉しいのだが、小瀬川白望の場合かえってそれが不気味で仕方ない。
何かがあるはずだ。何かしらの意図があって大明槓したのだろうが、肝心且つ重要なその意図が現時点では分からない。故に、どうにかしてその意図を探っていき、突き止める他、彼女に生き残る術はないのだ。