宮守の神域   作:銀一色

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第434話 二回戦大将戦 ③ 支点

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視点:神の視点

東一局 親:清澄 ドラ{8⑦4}

清澄 104000

宮守  86600

姫松 113900

永水  95500

 

 

 

 

 

 

 

永水:十二巡目

{六七八③④⑦⑧⑨66789}

 

 

清澄:十二巡目

{三赤五六②⑧⑧⑧789} {裏22裏}

 

 

宮守:十二巡目

{三九①北} {44横4} {横八七九} {横四四四四}

ツモ{⑤}

 

 

 

 東一局、宮永咲は途中から暗槓を仕掛けるなど、和了に向かう姿勢を見せていたのだが、小瀬川白望の三色同刻ドラ3をチラつかせたブラフによって、彼女は{三}を切ることができずに{③}を切った。いや、どちらかといえば切らされたという方が正しいか。

 そうして宮永咲の攻勢をあっさり跳ね除けた小瀬川白望の次の行動は早かった。このまま流局まで縺れ込まさせるのも一つの手だが、その場合自分がノーテンであるという情報を公開してしまう事になる。宮永咲に疑心を持たせないためにも、ここはさっさとケリをつけるべきだ。そう思いながら、小瀬川白望は末原恭子の捨て牌に目をやり、ツモってきた{⑤}をそのまま叩いた。

 

 

 

(……)

 

 

 

宮守

打{⑤}

 

 

 

 

「ろ、ロン!」

 

 

 

姫松:和了形

{一二三七八九③④34577}

宮守

打{⑤}

 

 

 

 

「……3900!」

 

 

 

 

 小瀬川白望が自分の和了牌を切ったという、信じ難い事に対して動揺気味に点数を申告した末原恭子であったが、和了ったあとに小瀬川白望から点棒を受け取ってから、よくよく考えてみれば小瀬川白望は間違って振り込んだのではなく、意図的に自分に和了るように仕向けたのだという事に気付く。それはそうだ。あの小瀬川白望が、こんなにも簡単に和了らせてくれるわけがない。

 そして、小瀬川白望が末原恭子に和了らせたということは、この東一局で、彼女は何かを企み、実行していたということだ。末原恭子からは何を狙っていたのかが分からなかったため、もしかして自分に何か仕掛けていたのかと少しほど心配になるが、とにかく確証がない今、あれこれ考えて不安になっても意味は無いと自分に言い聞かせるように心を落ち着かせていた。

 

 

 

 

 

《……おい》

 

 

 

(分かってるわよ……でも、まだその時じゃないわ)

 

 

 

 その一方で、小瀬川白望と点棒のやりとりを見ていた石戸霞は鷲巣巌に声を掛けられていた。鷲巣巌が少しそわそわしながら声を掛けていた理由は至極簡単で、次の東二局の親は小瀬川白望だったからだ。ここまで鷲巣巌が過剰反応を示すのは、やはり生前の鷲巣麻雀にある。

 特に六回戦の南場の赤木しげるの親番で、鷲巣巌はその恐ろしさを大きく味わった。何をどう考えようとも、赤木しげるに直撃を奪われるあの地獄とも言える連荘。いくら轟々と振る舞う鷲巣巌と雖も、本気で死を予感したあの連荘が脳裏から離れられないために、鷲巣巌は過剰に反応するのだ。もっとも、死を予感した後に鷲巣巌は赤木しげるの親を蹴る事に成功したのだが。

 しかし、石戸霞は鷲巣巌の言葉とは裏腹に、鷲巣巌の申し出をやんわりと断った。恐らく、今この状況で鷲巣巌の力を発動すれば小瀬川白望に真っ向から対抗でき、先手必勝で親を蹴れる可能性もある。

 故に使いたい。使いたいのは山々なのだが、そこで足を引っ張ってくるのが使用制限。最低でも十六局はあるこの大将戦で使えるのは四局という、かなり短い期間しか発動することができない。無論、その使用制限を越えることは理論的には可能なのだが、万一越えればよくて昏睡、それ以外ならば死という、捨て身以前にもはや勝負そのものを捨てる事となってしまう。だからこそ、四局の配分というのは非常に重要になってくるのだ。もちろん、四局全てを小瀬川白望の親番に当てる事も一つの策だ。上手くいけば、小瀬川白望に一度も連荘させる事なく終えることもできるかもしれない。だが、現実的な話、四局連続で小瀬川白望に競り勝つというのは至難の業であり、更に親番を防いだとしても、他の局で逆転されることも十分にあり得る話なのだ。使うのは本当に必要だ、小瀬川白望をここで止めなくてはならないという状況のみ。貴重なカードは残すのが良い手だ。

 

 

 

《構わんが……止められるか?奴の親番……》

 

 

 

(……そうね。危なくなったら使用も已む無いけど……できることなら、使わずに流したいわ)

 

 

 

《本当に分かっとるのか?お前みたいな奴が止めようと思って止めれる相手ではない……背水の陣になってからでは……奴のスイッチが入ってからでは遅すぎる……ッ!》

 

 

 

 そう怒鳴る鷲巣巌に対し、石戸霞は少し汗を流しながら(……もちろん、分かってるわよ。でも、せめて四回のうち三回……三回は後半戦まで残しておきたいのよ……)と呟く。やはり、石戸霞は先に前半戦で使うよりも、後半戦に温存することを推した。

 

 

《く……だが、仕方ない……ッ!確かに、アカギもそうじゃった……!アカギも後半、終わりに近づけば近づくほど奴の悪魔的……真の力を発揮していた……ッ!》

 

 

《ならば良かろう、お前の力で死ぬ気で……いや、殺す気……奴の息の根を止める、ここで殺す気で行け……ッ!さもなくば、飲まれるぞ……あのブラックホールに……!》

 

 

 

 

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「……一体、シロは何が狙いだったんだろう?」

 

 

 

 小瀬川白望は三色同刻を匂わせたブラフによって宮永咲を勝負から降ろす事には成功していたが、東一局からブラフをするという彼女の意図が分からず、宮守女子のメンバーでさえも理解に苦しんでいたところ、先ほど戻ってきた臼沢塞と同じく控え室に戻ってきていた赤木しげるはボソリと【……見定めているのさ。清澄の大将を】と呟く。それを聞いた臼沢塞は「……見定める?」と聞き返した。

 

 

 

【まあその前に……麻雀を打つ者は、困難や危機、危険に直面した時に、取る行動は大きく分けて四つある。……ここで言ってるのは普通の場合じゃなく、本当に危険な状況の時……それこそ賭けをしてる時のような状況で、だ。何か分かるか?大まかに分けてだ】

 

 

 

 赤木しげるが宮守のメンバーに向かって質問すると、姉帯豊音は指を折りながら「え、えーっと……攻める、守る……あとは……」と、二つまでは出てきたが、そこから後が出ず、それ以上指は折られなかった。他の者も考えるが、それ以外の回答は出なかった。

 

 

 

【ククク……確かに何か危険を前にした時、大体の奴は攻めるか守るかの二つに分けられる。そこから、もう二つ……攻めもせず引きもしない、決断を先送りにする保留を選ぶ奴……そして状況に合わせて攻めと守りを変更する奴……大概の雀士はこの四つでほぼ言い表せる】

 

 

 

【そして、清澄の大将がさっき言った中での状況に応じて変更するタイプだって言うのは牌譜を見た頃から分かっていた……後は、その『支点』を見極めるのみ】

 

 

 

「支点……?」

 

 

 

【攻める奴に対しては、溢れそうな牌で狙ったり……守る奴に対しては、ブラフを使ったり……両極端な奴は対処が簡単で、状況に応じて攻めや守りを変える奴は一見、前者に比べて対処が難しそうにも見える……が、見方を変えれば長所は短所になる。どちらにも回れるって事は、攻めにも守りにも回らせる事が可能でもあるって事……】

 

 

 

【状況に応じてとは言っても……それは実際にその場その場で状況を判断し、臨機応変に変えているかと言われれば……少し違う。本質には必ず、どちらに回るかを決める判断基準は存在する……故に、奴がどれくらいの状況なら攻めに行き、また守りに行くか……そこの変更点、天秤の支点さえ掴めれば、後は自在……攻めにも守りにも傾かせる事ができる……操り人形の完成さ……】

 

 

 

【だから今のブラフは、清澄を和了れせないようにしていたわけでもなく……わざと清澄に危険な状況を演出しただけの話……牌譜や映像だけじゃ、その時の場の空気だったり、奴が本当に危険と感じている場面か……本当に奴の心の奥底、本質で動いてるのかは分からないからな……その為に、確認したのさ】

 

 

 

「……じゃあ、シロは今ので分かったんですか?」

 

 

 

 唖然とする臼沢塞は、赤木しげるに向かってそう尋ねると、赤木しげるは【……分かっただろうな。そこまで『支点』が複雑な奴でもなければ、感情的になる奴でもない……】と言いながら、赤木しげるは鷲巣巌の事を頭の中に思い浮かべる。この時既に、赤木しげるはこの大将戦に鷲巣巌が関与していることを察知していた。

 

 

(【ククク……できることなら、本気のお前とは俺が打ちたかったんだがな……】)

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