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視点:神の視点
東三局 親:姫松 ドラ{2}
清澄 92500
宮守 98400
姫松 112200
永水 96900
「ツモや!」
姫松:和了形
{七八九③④⑤⑦⑦23444}
ツモ{1}
「自摸ドラ1……1000オールや……!」
東三局をものにしたのは姫松の末原恭子。彼女は目標通りの一回、しっかりと和了ることができた。一番留意せねばいけないはずの宮守が猛追してきて、かつ二位以下はほぼ横並び、一位が狙われやすいという姫松にとっては苦しい最中、親番であるここで和了ることができたということは、点棒を得て点差をほんの僅かではあるが広げたという事ももちろんだが、その言葉以上に得るものもある。逆境を跳ね除けるかのような自摸和了。これで自らに更なる追い風が来る事を望むばかりである。
(貪欲に狙うのもありやけど……下手に行って振ってしもうたじゃ折角のこの和了も無駄……困ったなあ)
そして当然、次は連荘で東三局一本場となるわけなのだが、ここで末原恭子は新たなる問題に直面することになる。言うなれば攻めに転じるか守りに転じるかといった二者択一なわけだが、この選択は後々に大きく響く可能性も無いわけではない。先ほどは何としてでも一回和了るという執念で和了ることができたが、今度はそうではない。既に目標は達成されている今、更に点差も広げるために攻めるべきか、それとも一度落ち着いて守りに転じるべきか。どちらも功罪が明確にあり、完全に末原恭子の判断に委ねられることとなった。
(……攻めよう)
深く考えた後、末原恭子が出した答えは攻めであった。いくら今の和了が多いとは言っても、どうせ今のままでは延命にしか繋がらないのは目に見えている。それならば攻めに行き、更なる可能性を求める方がまだ希望があるだろう。
(こうなった以上、もう振ったじゃ済まされんことは分かってる……せやから、慎重かつ大胆に……頃合いを図って一気に掻っ攫う……)
(……なるほど)
が、末原恭子の決断を小瀬川白望が予期していないはずがなく、じっと末原恭子の表情を見つめていた。末原恭子自身、顔には出さないようにとは心掛けてはいるものの、やはりどうしてもどこか表情の変化というものは微小ながらも残ってしまう。当然、小瀬川白望に限ってそれを見逃すわけもない。末原恭子が攻めようと意を決して放ったパンチを、さらりとかわすどころか、そのままクロスカウンターを喰らわせようと着々と手を進めて行く。その予感は末原恭子も感じてはいたのだが、ここで引き退がるわけにもいかない。一度踏み出した足を止めることは出来ずにそのまま突っ走ることしかできなかった。
結局、東三局一本場は小瀬川白望が末原恭子から2600の一本場を加えた2900点で終わる事となった。結果的に末原恭子の恐れていた事がそのまま起こってしまったわけだが、そこまで打点が高くなかったのは唯一の救いか。若干その事に対する安堵を覚える末原恭子をよそに、石戸霞は心の中で小さく呟く。
(……
その石戸霞の言葉に呼応するかのように、鷲巣巌は『いよいよだ……』と言う。苦節何十年かも分からぬ長い時間。永遠に続くかと思われた。後悔と屈辱を味わい続けてきた。そして漸く、漸くこの長い宿命にピリオドを打つ時が来た。この瞬間を。
果たしてどれだけ待っただろうか。鷲巣巌には分からない。だが、分からなくて結構。ここで勝てば、全てが終わる。鷲巣巌の人生を、敗北で終える事となった要因、宿命の敵赤木しげるの生き写し、小瀬川白望。彼女に勝つ事で彼の人生からようやく負けを払拭することができるのだ。
『……おい、一ついいか』
(何かしら?)
『……地球は……地球は回っとるか?今この瞬間も絶え間無く……回っておるか?』
(………………ええ、回ってるわよ)
鷲巣巌の意味深な問いかけに対し、質問の意図はあまり分からなかったが、石戸霞が素直にそう答えると、鷲巣巌は『カカカ……!』と高笑いする。そして鷲巣巌は何かを確信したかのように口角を釣り上げると、こう続けた。
『回っておるか……地球は正しく……ッ!』
『ならば問題ない……その事実さえあれば……
そう言い、鷲巣巌は石戸霞に己が天運、豪運を貸与する。その直後、石戸霞から放たれる圧倒的力、閃光が対局室を埋め尽くす。宮永咲と末原恭子はあまりの眩しさに目を押さえるが、小瀬川白望はただ一人真正面から石戸霞の事を見ていた。
(い、一体なんや……永水の大将……いきなり光った……?)
(なんなんだろう……さっきの……光?)
(……まさか)
『クククク……遂にこの時が来た……アカギ!!』
鷲巣巌が、今度は全員が聞こえるように小瀬川白望に向かって叫ぶ。その声に両隣にいた末原恭子と宮永咲はビクッと体を跳ねさせながら辺りを見渡す。小瀬川白望は何かを察したようで、石戸霞の方……いや、正確には石戸霞の背後を見つめていた。
「……成る程。あなたが噂の」
『久しぶり……といったところか。貴様に対しても、アカギに対しても……な』
『この日を待っていた……わしの顔に泥を塗られたという屈辱、雪辱を今ここで晴らす……そして証明するのだ……わしに勝るものは何人たりとて存在せん……と』
『……とはいえ。これでは足りん……これでは、
鷲巣巌がまたも意味有りげにそう叫ぶと、石戸霞は(……何かするのかしら?)と鷲巣巌に向かって問いかける。鷲巣巌は『カカカ……!そういえば、お前にも言っとらんかったか……まあいい。知ってようが知っていまいが構わん、今この状況に足りないもの……それを補うというだけのこと……』と返した。
鷲巣巌が何か力を溜めるように念じ、『……貴様らを招待してやろう。わしの豪邸……もといわしとアカギの決戦場へ……!』と言う。そしてその直後、当事者であるはずの石戸霞自身も驚愕する事態が、鷲巣巌によって引き起こった。対局室の壁、床、装飾が一変し、まさに鷲巣巌がアカギしげると死闘を演じた舞台、鷲巣巌の豪邸へと変貌した。もちろんそれだけではない。むしろ、ここからが本丸。四人が囲んで居たはずの全自動卓が変幻し、シンプルな雀卓となった。一つ普通の雀卓と変わっている事といえば、雀卓の中央に手を入れることのできるほどの穴が空いているという事。そう、鷲巣巌はあの時と全く同じ舞台を整えたのだ。
「……な、なんやこれ……!?何処やここ!?」
『落ち着け。ここは先程までいた対局室で間違いない。……安心しておけ。ある程度の才を持つ者でなければこれは視認できん。……つまり貴様は完全な凡人ではないということだ』
鷲巣巌が末原恭子に向かって説明をしていると、宮永咲はもう一つ新たな変化に気付いた。宮永咲が「これ……透明……?」と透明になっている{④}を手に取って呟くと、鷲巣巌がニヤリと笑みを浮かべて説明を加える。
『三透牌……聞いた事くらいはあるじゃろう……見ての通り、一種類の牌のうち三枚は透明、残りの一枚は黒牌という特殊牌……この局に限り、この牌を使用する……』
「は、はあ?透明牌って、そんなん丸分かりやん!」
『当たり前じゃ……だからこその駆け引きが存在するというもの……あまり興を削ぐような事を言うな……!』
鷲巣巌が不気味な笑い声を交えながら末原恭子に向かって言うと、末原恭子は鷲巣巌に圧される形で「そ、そうか……」と納得させられる。その一方で、未だに驚いている石戸霞は鷲巣巌に向かってこう言った。
(……ちょっと。この特殊牌を使うって事くらいは言ってくれても良かったんじゃないかしら?)
『ハッ。馬鹿を言え。仮に教えたところで、貴様は奴の足元にも及ばん。特に鷲巣麻雀なら、奴の恐ろしさは通常の数倍に跳ね上がる……そもそも、これはわしの復讐、わしが引導を渡さねばいかぬ決闘……つまり、貴様がわしの力を使う局のみ……鷲巣麻雀の時のみわしの指示で打て……ッ!鷲巣麻雀は貴様がわしの力を使う時限定にしてやる。それで初めて成立する……わしと奴の真剣勝負……再試合……!』
(……別に良いけど、シロの恐ろしさが十二分に発揮されるなら、わざわざこうしなくても良かったんじゃない?)
『分かっとらんな。……この鷲巣麻雀で奴に勝ってこそ、奴よりも優れているという事の決定的証明……ッ!それに、負け越しは許されんじゃろ……よりにもよって鷲巣麻雀で……鷲巣の名が泣くわ……ッ!』
いきなり急展開の鷲巣麻雀が始まります。
鷲巣麻雀やって下さいと確かお題であったはずなのでそれも兼ねて……((