宮守の神域   作:銀一色

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完全な説明回。


第443話 二回戦大将戦 ⑫ 鷲巣麻雀

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視点:神の視点

東四局 親:永水 ドラ{白}

清澄  91500

宮守 100300

姫松 112300

永水  95900

 

 

 

 

『早速始めようと言いたいところだが……その前に確認せねばならぬ事がある……』

 

 

 

 永水の石戸霞がその身に降ろした力の根源である鷲巣巌が作り出した、鷲巣麻雀という未知の舞台で東四局を開始する前に、鷲巣巌は自らが変幻させた鷲巣麻雀専用卓を囲む四人に向かってそう口を開く。それを聞いた四人の中で、最初に口を開いたのが末原恭子であった。

 

 

 

「確認する事って、一体なんや……?」

 

 

 

『簡単な話、この三透牌……言い換えれば鷲巣麻雀を行う際は通常と異なるルール、ハウスルールが存在する……その確認という事……!無論、貴様らは鷲巣麻雀のルールなど知らんだろうから特別に教えてやる……』

 

 

 

 鷲巣巌がそう言うと、宮永咲と末原恭子、そして鷲巣巌の力を降ろした石戸霞までも真剣に鷲巣巌の説明を聞く態勢に入る。そんな中、小瀬川白望は卓に散らばっている透明牌を手に取り、わざわざ真剣に聞く必要はないと言わんばかりに指先で弄んでいた。それを見た鷲巣巌は、笑みを浮かべながら『若干名……既に()()()()()()で承知している奴もいるようだが……まあいい』と言い、鷲巣麻雀のルールの説明を始める。

 

 

 

『これは牌の四分の三が透明であるが故の必然だが……まず、この鷲巣麻雀において山は存在せん』

 

 

 

「山が……無い……?」

 

 

 

『そりゃあそうじゃろうて……貴様もさっき言っとったじゃろうが。丸わかりなんじゃ。手牌だけでなく、山も。……先のツモが見えている麻雀ほど、興醒めなことはない……それを回避するために……この中央の穴がある。これに全ての牌を入れ、配牌、自摸、裏ドラ新ドラ含むドラ表示牌、全ての動作をこの穴から牌を引き抜く……』

 

 

 

『だが、ただ穴に手を入れて自摸るというルールだけでは盲牌すれば見えずとも牌が分かってしまう……それだけでは山を廃止する意味はない……そこで、貴様らにはこれを用意した』

 

 

 

 そう鷲巣巌が言うのと同時に、鷲巣巌は上空から手袋のようなものを四つ落とす。宮永咲が「これ……手袋、ですか?」と呟くと、鷲巣巌は『いかにも。盲牌を防止するための革手袋……これを着けて打ってもらう……鷲巣麻雀を……!』と皆に向かって言う。

 

 

 

『また、暗槓、明槓、加槓の数に問わず……捨て牌の数が七十に達した時点で流局……それ以外は通常のルールと変わらん……以上が鷲巣麻雀の大前提、基本的ルールだが……分かったか……?』

 

 

 

「……一つ、質問がある」

 

 

 

 すると、小瀬川白望が手を挙げて鷲巣巌に向かって口を開く。それを受けて鷲巣巌は『なんじゃ……簡潔に言え……』と言うと、小瀬川白望は「……()()()()」と質問する。最初は誰も小瀬川白望が言っていることが分からなかったが、唯一、小瀬川白望が何を言わんとしているのか理解している鷲巣巌は一段と不気味な笑みを浮かべ、こう返した。

 

 

 

『カカカ……!威勢がいいな……!が、しかし。あくまでもこの場はインターハイという事は変わらん。それに、貴様は()()()()()があるじゃろうが……わしには賭けるものが無い……金も、血も……な。賭けが成立せんじゃろ』

 

 

 

「ち……血?ど、どう言う事や?」

 

 

 

『ああ……貴様らは知らんか……』

 

 

 

『元々、この鷲巣麻雀に限らず麻雀というものが賭け事の道具、賭けそのものじゃったという歴史は知っとるな?大体は大小問わず取り敢えずは金を賭けて麻雀を打つ……わしもそうじゃった。数百……いや、今でいう数千万を賭けてこの鷲巣麻雀を打っていたが……いつの日か、その金のやり取りに対する面白味が感じられなくなっての……今となっては手慰みもいいところじゃ……』

 

 

 

 

『……そこで、わしはこの鷲巣麻雀でのレートを変更したのじゃ。……金ではなく、その者の血……血液を……ッ!!』

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

 その言葉に小瀬川白望を除く全員が言葉を失う。言葉のインパクトもそうだが、それを話す鷲巣巌の声が楽しそうに、嬉しそうに聞こえるのも不気味さ、気味の悪さに拍車をかけた。驚愕して何も言葉が出ない三人をよそに、鷲巣巌は『……当然、血液を賭けるのだから負ければ絶命、死ぬ。それに加えてこの透明牌……もしかしたら当たるんじゃないか。もしかしたら張っているんじゃないか……この、僅かに手牌が見えるというこの状況も相乗する……!死が近づくにつれて、段々と心が恐怖で凍りつき……果てには一打通すだけでも手が震えるのじゃ……比喩ではなく、本当に、心の底から恐怖し、震えるのだ……ッ!その様を見るのが、存外面白い趣向でな……』と呟く。そして次の瞬間、鷲巣巌は笑いながら『それが見たくて……見たくて……ッ!!』と言い出したかと思えば、『……もう何人も、殺してしまったよ……ッ!!!』と叫ぶ。その拍子に「ひっ、ひぃっ!?」と、誰が発したかは分からないが、悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 

『……ま、それも今となってはもうどうでもよい。血だろうが……金だろうが……あの日以来、わしが望むものはただ一つ……貴様に勝つ事……ッ!』

 

 

 

「……」

 

 

 

『まあ……これで鷲巣麻雀のハウスルール、説明は終わりだ。説明も終わったところで……さあ、始めようかの……鷲巣麻雀を……ッ!』

 

 

 

 

 

 

 

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視点:神の視点

東四局 親:永水 ドラ{白}

清澄  91500

宮守 100300

姫松 112300

永水  95900

 

 

 

 

 そうして始まった東四局、もとい鷲巣麻雀。四人はそれぞれ革手袋を右手に嵌め込むと、親である石戸霞から配牌を取っていく。通常の麻雀なら二トンずつ、四枚ずつ取っていくが、この鷲巣麻雀では一トン、つまり二枚ずつ取っていくことになる。石戸霞が二枚の牌を穴から引こうとする最中、石戸霞は鷲巣巌に向けてこう言った。

 

 

 

(……まさか、そんな事をしてたなんて。聞いてなかったわよ)

 

 

 

 

『ふん……今となってはそんな事、もうどうでもよかろう……時効じゃ……ッ!あの日より前までは、わしにとって鷲巣麻雀は吸血麻雀じゃったが……あの日以来、鷲巣麻雀は奴との対話の道具……そう言っても過言では無い……ッ!いいからさっさと引け……!』

 

 

 

 石戸霞は鷲巣巌に言われるがままに配牌を取っていく。今の配牌は、石戸霞が行なっているように見えて、行なっているのは鷲巣巌の運、豪運が行なっている。その事は対面にいる小瀬川白望も分かっており、この局で闘うのは石戸霞ではなく、鷲巣巌であるということに気付いていた。その上で、こう心の中で呟く。

 

 

 

 

(赤木さんが勝てなかった数少ない中の一人、鷲巣巌……勝負の取り決め上では赤木さんが勝ったらしいけど、赤木さんはそれを認めていない……)

 

 

 

(どちらにせよ、私がここで鷲巣さんに負けるようじゃ……越えられない……赤木さんを……)

 

 




次回から本格的に闘牌を再開させる予定です。

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