宮守の神域   作:銀一色

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第445話 二回戦大将戦 ⑭ 偶は必に

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視点:神の視点

東四局 親:永水 ドラ{白}

清澄  91500

宮守 100300

姫松 112300

永水  95900

 

 

 

永水:配牌

{一一二二裏四四五裏八八九東東}

 

 

 

 

 

『今度こそ……殺してやる……ッ!アカギ……ッ!』

 

 

 

 眼光をギラつかせ、狂った笑みを浮かべながら、目の前にいる(かたき)とも言える小瀬川白望を見据える鷲巣巌。彼のアカギしげるに対する数十年間の怨みがこもっている、はち切れんばかりのボルテージとは対照的に、実際に牌を打つ側の石戸霞は目の前に展開する鷲巣巌の馬鹿げた運を目の当たりにし、やはりこれはいくら見ても、見慣れないものだ、と仰天として心の中で呟く。

 

 

 

『あ……?何をやっとる、早く打たんか!』

 

 

 

 それに気づいた鷲巣巌は声を荒げて石戸霞に叱咤するが、石戸霞は(……あなたが打つって言ったでしょう?)と返す。鷲巣巌は思い出したかのように『そうか……そういえばそうじゃった……!忘れとった……つい……!カカカ……キキキ……コココ……ッ!』と笑い出す。石戸霞は鷲巣巌の笑い声に対して若干恐ろしさを感じながらも、(嬉しいのね。……初めて聞いたわよ、あなたがそんなに笑ってるとこ)と返した。

 

 

 

 

『嬉しい……?嬉しいだと……?ハッ!それも当然……!ここで奴を倒せば……わしの長い苦しみ、屈辱が完済するだけでなく……ようやく、真に至福の時、悦楽、わしが生涯で到達成し得なかった最高潮、高みを迎えるのだ……ッ!』

 

 

 

 

 鷲巣巌は興奮冷めやらぬ感じでそう言うと、石戸霞に向かって『さあ行くぞ!先ほどまでは自分を信じろとわしは言っていたが……この局に限り、わしを信じろ……!さすれば開かれる。アカギ打倒への一筋の光……!』と石戸霞に最初の打牌を指示する。

 そうして石戸霞は鷲巣巌から指示されるがままに牌を切ることとなったわけだが、それを見た末原恭子も訳がわからず混乱する。石戸霞が指示され、切ったのは五萬。少なくとも、あの手牌で{五}切りというのは有り得ないはずだ。しかしその有り得ないことが今現実として起こっている。

 

 

 

永水:一巡目

{一一二二裏四四裏八八九東東}

 

 

 

 

 

(なんやなんや……あの手牌から五萬って、どういう意味や……?)

 

 

 

 末原恭子は懸命に石戸霞の五萬切りの意図を探ろうとする。あの手牌の中で考えられる第一打の中で、一番無いだろうと思っていた{四五}の繋がりがあっさりと絶たれてしまった。ど真ん中の牌を第一打で切るということは、それ相当の何かしらの理由があるはずだ。そう考えて末原恭子が思考を進めると、その推察はある一つの可能性に辿り着いた。

 

 

 

 

 

(そうか……もう順子は必要ない、いらない……つまり、もう既に張ってるってことか……!?)

 

 

 

 これも十分有り得ない話ではあるのだが、石戸霞の手牌の黒牌の数を数えれば、満更不可能というわけでもない。確かに普通の手、四面子一雀頭という形は不可能だろう。だが、一つだけ聴牌にできる唯一の可能性がある。それは七対子。七対子ならば、今の状態でも聴牌と見ることが可能なのだ。

 

 

 

永水:手牌予想図

{一一二二裏四四裏八八九東東}

{一一二二?四四九八八九東東}

 

 

 

 

(可能や……こんな形の七対子……ツモってハネ満……)

 

 

 

 と言ってもこの形、この形だとそのまま予想するのは多少強引ではある。ただでさえ黒牌は四枚につき一枚しかないというのに、こんな要所要所で上手く黒牌が重なるわけがない。少なくとも別の牌が混じっていそうに見えるのだが、末原恭子は(……理屈が通じる相手やない)と呟く。そう、先ほどまでの石戸霞が相手なら有り得ない話だと片付けられるが、この局に限っては違う。この局の石戸霞は、先ほどまでとはまるで別人。よもや小瀬川白望と肩を並べるのではないか。そう思ってしまう、思わせるだけの凄みがある。安易に可能性が低いからとして一蹴できるものでもなかった。

 

 

 

 

(有りえる話や、七対子……リーチをかけへんのは白望を警戒しとるのか、待ちが悪いから手替りを待ってんのか……後者であってほしいけど、前者だった場合はウチが振り込む危険がある……ここで親満に振るのは勘弁や……!)

 

 

 

 

 末原恭子は石戸霞が七対子を張っている。そう仮定して話を進めていくが、その動きを感じ取った鷲巣巌が鼻で笑った。もちろん、誰にも聞こえぬよう、石戸霞にも聞こえぬように心の中で。

 

 

 

『的外れ……ッ!的外れもいいところ……!ツモって跳満?親満には振れない?……カスってもないわ。見えておらん……理解しておらん……このわしの、鷲巣巌の豪運を……ッ!……それを鑑みれば、この手を七対子だのというゴミ手、ボヤで終わらせるなんて、そんな話、有り得るわけなかろうて……!』

 

 

 

 鷲巣巌は末原恭子の判断を吐き捨てるようにそう一蹴する。実はこの時、石戸霞は未だ張ってはおらず、この状態から鷲巣巌は石戸霞に五萬を切れと指示を出していたのであった。

 

 

 

永水:一巡目

{一一二二裏四四裏八八九東東}

{一一二二二四四六八八九東東}

 

 

 

 本来ならば、五萬よりも{四五六}の順子を確定させる四萬打ち、辺張を嫌っての九萬打ちや、清一色に向かっての東の対子落としなど、色々な事が考えられるが、それを一切合切無視して五萬を打たせたのだった。無論、石戸霞も最初に指示された時は戸惑った。しかし、そこは他の誰でもない鷲巣巌の判断。彼の判断に背いて進言する事など、できるわけがなかった。

 

 

 

『当然、奴からの直撃は望めん……ならば確実に差を広げるには、目指すべきは四暗刻、役満……或いは危なくなれば三倍満……狙いに行く……奴の首、土手っ腹……ッ!幸いな事に、奴の配牌も格別良いというわけではない……ッ!』

 

 

 

 

宮守:一巡目

{裏六裏八②④⑤4裏裏9裏裏}

 

 

 

 

『気になるところは黒牌の多さじゃが……問題ない。少なくとも、わしより早いということはない……ッ!となったら、行くべき……!局の長さにもよるが、石戸の体力も鑑みても……やはり四、理想的に事が進んでも五局が限度……!数少ないこの機会、行くしかない……ッ!石戸の体力が尽きる前に……先に葬ってやる……あの悪魔を……ッ!!!』

 

 

 

 

 鷲巣巌がそう意気込み、決心しているのと対照的に、小瀬川白望は石戸霞の異常な手牌を前に、鷲巣巌という狂気を目の当たりにしても尚その無表情は崩れない。それを見た鷲巣巌は『……やはり、アカギはアカギか。崩れんのお……その凍てつく表情……』と言うと、今度は横にいる末原恭子と宮永咲の手牌を見る。

 

 

 

 

姫松:一巡目

{一三五六裏赤⑤⑦26裏東西裏}

 

 

 

 

 

清澄:一巡目

{裏九九裏①⑥⑥222南北中}

ツモ{南}

 

 

 

 

 

『カカカ……!順風……順風満帆……!』

 

 

 

 

 見た限りでは、鷲巣巌と石戸霞の手牌が頭一つ飛び抜けている。黒牌が混じっているが故に推測で埋めるしかないが、やはり鷲巣巌のスピードについて行ける者はいない。少なくとも鷲巣巌はそう感じていた。そしてその予感を裏付けるかのように、次巡、石戸霞は黒牌の四萬を引き当てる。

 

 

 

 

永水:二巡目

{一一二二裏四四裏八八九東東}

{一一二二二四四六八八九東東}

ツモ{裏}/{四}

打{六}(黒)

 

 

 

『当然……当然の事……!わしの運をもってすれば偶は必となる……!』

 

 

 

 これで四暗刻一向聴、一萬八萬東のいずれかを引けばその時点でツモって四暗刻、役満が確定する。鷲巣巌が言った通り順風満帆と言えるこの状況において、よもや引けないわけがない。そう信じていた鷲巣巌であったが、三巡目にドラの白を引いてしまう。四暗刻を一向聴という目と鼻の先という状況下で、まさかの足踏み。鷲巣巌はその事実に苛立ちを覚えながらも、それと同時に少なからず困惑していた。

 

 

 

 

『何故じゃ……?何故引けん……!?』

 

 

 

 取り敢えず鷲巣巌は石戸霞に九萬を切らせるよう指示する。困惑の中続いたその同巡、宮永咲がツモ切った三萬を見て、小瀬川白望がこの局初めて動きを見せる。

 

 

 

「チー」

 

 

 

宮守:三巡目

{六裏八②④⑤4裏裏裏裏} {横三二一}(黒)

 

 

 

 

 

『あっ……ああっ……!!??黒牌の……一萬だって……!?』

 

 

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