宮守の神域   作:銀一色

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第448話 二回戦大将戦 ⑰ 確信

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視点:神の視点

東四局 親:永水 ドラ{白}

清澄  91500

宮守 100300

姫松 112300

永水  95900

 

 

 

 

 

永水:四巡目

{一一二二裏四四裏裏八八東東}

{一一二二二四四四八八八東東}

 

 

 

 

 

 小瀬川白望が石戸霞のツモ番の直前に最後の和了牌である東をツモによって握り潰し、これで四暗刻、役満の目は消え、彼女の手牌はもう死に手となった。通常はそう考えるのが自然だが、小瀬川白望はまだ石戸霞に……いや、鷲巣巌に対し最大限に警戒していた。一見、もう和了牌が無いためにどうすることもできなさそうに見えるが、実はまだ可能性は隠されているのだ。赤木しげるが言っていたように、鷲巣巌は何度でも蘇る。まだ和了目は十分に残されている。四暗刻を捨てた、新たな手替わり。凡人ならばそうそう急所の牌を当てることはできず、最短で手替わりする事は到底不可能だろうが、鷲巣巌ならばそれは十分可能な範疇にある。造作もない事だ。

 

 

 

 

(……流石にこの状況じゃ止められない)

 

 

 

 

 もちろん、小瀬川白望は鷲巣巌を止めなくてはならないわけだが、ここで今引いた東がかえって足枷となってしまう。ツモ和了でなければ四暗刻にならないとはいえ、鷲巣巌が執着している小瀬川白望が東を打てば間違いなく和了ってくるだろう。倍満の行ってこい、それだけで点差は48000点開いてしまう。

 東が切れないとなれば、当然ながら小瀬川白望は鷲巣巌に一歩遅れをとるという事になる。今度こそ鷲巣巌は無駄ヅモなどはしない。確実に和了を決めてくるだろう。自分で和了に向かうのでは遅すぎる。となれば清澄か姫松を和了らせるしか後は手が無いのだが、まだ場は東四局が始まってから四巡しか経っていない。通常ならばまだまだ序盤、字牌整理している具合といったところだ。聴牌はおろか、まだ二向聴すらも怪しい状況で、それは流石に望めない。つまり、今小瀬川白望に鷲巣巌を止める術はなく、あるとすれば万に一つ、いや、今の鷲巣巌にとっては億に一つもない無駄ヅモをしてくれることを望むしかない。役満という最悪の事態を回避しても尚、小瀬川白望はそこまで追い詰められていたのだ。

 当然、その現状はなにも小瀬川白望だけというわけではなく、当然鷲巣巌もそれを承知しており、小瀬川白望が何も手を打てないという事を確信を持って彼女の目の前に立ちはだかる。鷲巣巌は彼女の師である赤木しげるに散々と翻弄された苦い過去があるが、それはあくまでも鷲巣巌の迷い、安堵や恐怖があったからこそ鷲巣巌の深層心理を完璧に掌握できたわけであって、鷲巣巌が揺るがなき確信を持てばもうどうしようもない。流石の赤木しげると雖も、そうなった状態の彼の心理を掌握するという事はできなかった。どこかで彼に恐怖を、心理の隙を作らなくてはならない。師である赤木しげるはそうすることで何度も鷲巣巌の確信、自信を打ち崩してきた。

 

 

 

 

『カカカ……今局はともかくとしても、打ってくるじゃろ……わしを心の芯から震えさせ、恐怖させるほどの一打……!悪魔的かつ、狂気に満ちた麻雀……むしろ、そうでなくては面白くない……ッ!簡単に潰れてくれるなよ……?』

 

 

 

 

 

 

 

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(……全く、さっきから情報が多過ぎて頭が回んねえ……始まる前もだが、始まってから四巡とは思えないほど濃密だ……)

 

 

 

 

 周りが響めきや感嘆の声を上げている中、そこから少し離れた場所で一人寡黙にモニターを見つめる大沼秋一郎は額に手を当てながら心の中でそう弱音を吐く。親が永水に回ってからというものの、大沼秋一郎は表には出してはいないが、内では驚かされっぱなしである。まるで幻影を見せられてるのではないかとも思える超常現象を目の当たりにし、大沼秋一郎は一人嘆いていた。

 

 

 

(透明牌にすり替わってるのにも関わらず、それで中断どころか何のお咎め無しってことは普通の奴らには見えちゃいないんだろうが……なんなんだ一体。何が起こってんだ……)

 

 

 

 完全に現状についていけておらず、苛立ちを見せる大沼秋一郎であったが、そこで彼はある人物が横を走り抜けていくのに気付いた。身長は130に満たないのではないかと思えるほど低身長であり、頭には印象的な長いヘアバンドをつけている。完全に小さな子供のように思えるが、彼はその人物を知っている。前年、インターハイで初出場の一年生ながらも大きく爪跡を残した天江衣である。

 そして彼方側も大沼秋一郎の存在に気付いたのか、天江衣の隣にいた、彼女といいコントラストが形成されている高身長の井上純が走る天江衣を引き止めて、「おい、衣!あれってもしかして……大沼プロじゃないか?」と、天江衣に向かって言う。

 

 

 

「あー……龍門渕の天江……衣だっけ?こどもだっけ?」

 

 

 

「こ・ろ・もだ!衣は断じて子供ではない!いくらトッププロの者とはいえ、失礼極まりない!」

 

 

 

「はは、そりゃあすまねえな。お嬢さん」

 

 

 

 大沼秋一郎が完全に子供を相手するような口ぶりで対応するが、肝心の天江衣は大沼秋一郎の冗談混じりで言った『お嬢さん』というワードを聴いて満足したのか、「うむ……それで良し」と嬉しそうな表情であった。

 

 

 

「……にしても、廊下を走るのはマナーがなっちゃいねえな。そんなに何を焦ってるんだ?」

 

 

 

「……言わずとも大沼プロなら既に理解してるだろう。今衣の眼前に広がっている()()だ。衣の知り合いであるフジタなら何か知ってるかと思ったからな。大沼プロは何か知ってるのか?」

 

 

 

 天江衣にそう聞かれた大沼秋一郎は(……今の雀士は天江衣といい、さっきの三尋木といい、礼儀がなってない奴が多いな……)と思いながらも、「俺も今それで悩んでところだ。何しろ、前代未聞だからな。牌が透明牌に変わっちまうなんて」と返す。

 

 

 

「分かってることと言えば、限られた奴にしか見えていないってことか」

 

 

 

 そう大沼秋一郎が言うと、井上純は天江衣に向かって「……衣。大沼プロでも分からないんだったら、藤田プロでも分からないんじゃ……」と言う。それを聞いた天江衣は「うーむ……」と考える素振りをすると、「確かにフジタが知ってて大沼プロが知らないという事は考え難い……」と呟く。それを聞いた大沼秋一郎は(……なんだ、藤田のやつ。そんな信頼無いのか……?)と心配になりながらも、天江衣に向かってこう言った。

 

 

 

「まあ……それよりも重大な事があの卓で起きているのが、お前なら分かるだろ?」

 

 

 

「……永水の大将のことか。今の局だけとはいえ、あのシロミを相手して一歩も引いていない……あの巫女は一体何をしたんだ?」

 

 

 

「さあな……皆目見当もつかねえが、永水の巫女達の中には神仏の力を借りて麻雀を打つ奴がいる……あの大将が何かを降ろしてるんだとしたら、その神や仏よりを越えた何かを呼んでるって事は確かだ」

 

 

 

 

 大沼秋一郎がそう言っていると、少し離れた場所から歓声がワアアアとあがる。その場にいた三人がモニターの方に視線を向けると、そこには暗槓をする石戸霞の姿があった。それを見て大沼秋一郎はハッとしてこう呟く。

 

 

 

 

「暗槓……まさか、新ドラを乗せて役満にする気か……?」

 

 

 

 

 そう考える大沼秋一郎であったが、そうさせるように指示した鷲巣巌はそうは考えてはいなかった。新ドラを乗せれば文句無く役満手になるが、それは狙いではない。もっと言うなら、鷲巣巌はそうはならないというのは分かっていたのだ。

 

 

 

 

 

『さっきドラの白をわしの意思で捨て去ったからな……流石にドラは乗らんじゃろ……が、それでも構わん……これは、あくまでも確認……嶺上牌含め、誰がこの卓を支配しているかの確認じゃ……危険な芽は早めに摘むべき……そうじゃろ?清澄……』

 

 

 

 

「……!」

 

 

 

 

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