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視点:神の視点
東二局 親:永水 ドラ{南}
姫松 91500
永水 123400
清澄 80500
宮守 104600
「透華、ただいま戻ったぞ!」
宮永照と辻垣内智葉を連れて、観戦室の長野県の団体戦予選決勝メンバー、龍門渕風越鶴賀の三校が集まる場所に戻ってきた天江衣は意気揚々と龍門渕透華に向かって声をかける。龍門渕透華は天江衣の方を向いて「お帰りなさいですわ、衣……って、もしかしてそのお方たちは……!?」と声を震わせて宮永照と辻垣内智葉の方を指差す。彼女たちの隣にいた井上純も凍りついたかのような声色で「……白糸台の宮永照さんと、臨海の辻垣内さんだ……」とその場にいた者に向かって紹介する。
三年間白糸台の不動のエースかつチャンピオンである宮永照とそれに次いで個人戦三位、同じく臨海のエースである辻垣内智葉のまさかの組み合わせでの登場に場は一時騒然となるが、その中で辻垣内智葉の事を視認した風越のキャプテン、福路美穂子は笑顔を浮かべて声をかける。
「あら……辻垣内さん、お久しぶりです」
「なっ、……!?お、お前ッ!?」
宮永照を除けば辻垣内智葉にとってこの中で唯一直接面識がある福路美穂子。だが、その面識というのもあまり辻垣内智葉にとっては良い思い出とは到底言えるわけではなかった。というより、悪い思い出と言った方が良いだろう。小瀬川白望の後をつけていたはずの辻垣内智葉が、偶然鉢合わせになってしまった結果思わず殴って小瀬川白望の事を気絶させるという、今の彼女にとっては黒歴史に近い思い出。当然、両者共にその事は覚えている。しかしその事についてはどうとも思っておらず、笑顔で声をかける福路美穂子に対して、その事を未だに引きずっている辻垣内智葉は驚愕して声を失うという良いコントラストができていた。
たじろいでいる辻垣内智葉を見て、宮永照が「……知ってる人?」と尋ねると、動揺している辻垣内智葉の代わりに福路美穂子が「以前お会いしたことがあって……といっても、一瞬の事でしたけど」と説明する。
「ま、まあ。そんなところだな……はは……」
「……何かあったの?」
汗を流す辻垣内智葉を追い詰めるように質問を繰り返す宮永照であったが、天江衣が「まあ色々あったのだろう。難儀な事だ」と遠回しに宮永照の事を止めると、「それよりも……永水の奇々怪界な能力を紐解いて貰おう!」と言う。それを聞いた国広一は「そんな馬鹿な事………………いや…………できる。できる!宮永さんなら!」と声を上げる。
「できるんですの?そんなことが」
疑問そうに龍門渕透華がそう言うと、パソコンのキーボードを高速で叩いている沢村智紀がメガネをクイッと掛け直し、宮永照の画像が映し出されているパソコンの画面を皆に向かって見せながらこう呟いた。
「……照魔鏡、相手の能力の本質を見抜く能力……」
「なるほど……それなら確かに永水の大将、石戸の能力を見破れるな」
加治木ゆみが宮永照と辻垣内智葉を前にして、高まる興奮をなんとか抑制しながらそう言うと、周りからおおおという歓声が上がる。その歓声の渦の中にいる宮永照は少しほど申し訳なさそうに「いや……今それができるわけじゃない。実際に打って一局見ないと、照魔鏡は発動できないし、能力は分からない」と言うと、天江衣は「……じゃあ、王者でも解明できないのか?」と聞く。
「……だけど、去年の時点での石戸さんの能力なら分かる」
「私はそれを宮永に聞きに来たんだ」
天江衣に向かって辻垣内智葉がそう補足すると、辻垣内智葉は「……聞き手は増えたが、それで、どんな能力だったんだ?」と、宮永照に向かって尋ねる。宮永照は「これ、貰っていいですか」と言って龍門渕透華が用意していた菓子類に手をつけながら、「……石戸さんの能力は、端的に言えば自分の体に何かを降臨させて、その力を使うっていう能力」と答える。
「……何かって、例えば?」
「神様だったり、死んだ人だったり……とにかく、この世に存在していない人」
宮永照がそう言うと、龍門渕透華は「つまり、あの方はそのこの世に存在しない者の何かを降臨させていたというわけですの?」と聞くと、宮永照はコクリと頷く。それを聞いた龍門渕透華は歯を食いしばりながら「ズルいですわっ……!そんなの、目立つに決まってるじゃないですの……!」と悔しそうに胸の内を明かす。
「成る程な。巫女というものだから神や霊だけと思っていたが……死んだ人間も降ろせるとは」
「うん……多分、石戸さんが降ろしているのは後者」
その宮永照の言葉に対して天江衣は鳩に豆鉄砲を食らったような表情を浮かべて「後者?神や霊の類じゃなくて、人間の方なのか?」と驚いた風に聞く。宮永照は「うん……神様やそういう類ではああいう空間に干渉するような事までは起こせない。前に戒能プロに聞いたことがあるけど、神様じゃあそこまではできないし、それに神様程度だったら白望が完封できるはず」と返す。小瀬川白望なら神ですら実力で捩じ伏せるという発言に対し疑いを持つ者が大勢いたが、辻垣内智葉はそれに納得するように「確かにそうだな。そうじゃなかったらあの時の三倍満は辻褄が合わない」と頷く。だが、それに納得のいかない者達の代表をするかのように井上純が口を開く。
「で、でも、神様にできないことが人間にできるもんなのか?」
「……できる。神様よりも強い力を持っている人が、現世に未練を残したり、強い思念を持って留まっている状態なら、あそこまでの事は可能」
「ということは、あの石戸さんはその神様よりも凄い人を降ろしているって事ですの?」
「……そういうこと」
そもそも井上純として神様を超える人間などいないだろうという趣旨で質問をしたのだが、宮永照からしてみればそんな前提、固定観念があるなど知る由もなく、質問の意図とは違う解答をする。
そして質問に答えた宮永照は、先程から黙りこくって何か考え事をしている様子の辻垣内智葉に向かって声を掛ける。
「辻垣内さん?何か心当たりでもある?」
「いや……私はまだ麻雀が博打として使われていた頃に、あの透明牌を使った麻雀の博打があったという話を聞いた事がある……そしてその透明牌での博打を主催した奴についても聞いたはずがあったんだが……いかんせん昔の頃に聞かされた話でな。今思い出そうとしているんだ」
辻垣内智葉がそう言うと、国広一が井上純に向かって「ねえ……辻垣内さんって何者なんだろう。昔の博打のことなんて、普通聞かないよね……」と語りかけると、それが辻垣内智葉に聞こえていたのか、「私の家は
「……辻垣内さん、電子機器にも慣れているんですね……凄い……」
「キャプテン……あれは別にそこまで言うほどすごくないし……」
池田華菜が感嘆している福路美穂子にそうツッコミを入れていると、辻垣内智葉は自分の家に仕えている黒服に電話をかける。そうして二コールもしないうちに黒服が電話に出た。
『どうされましたか、お嬢』
「その声は………………荻野か。今、そっちでインハイを見ている奴はいるか?」
『いえ、明日お嬢がでる試合を録画する機器等の準備を黒服一同の総力を挙げて行っている最中でして、今現在見ている者はいないはずです』
「……いないのか?」
『はい……ですが、しっかりと小瀬川様がいる宮守女子の試合も録画している最中で「……そういえばお前だったか」……はい?』
「お前、透明牌を使った麻雀について私に言ってたな。それについて詳しく教えてくれるか?」
『透明牌のことですか……?』
「ああ、そうだ。なんでもいい。私が小さい頃お前に聞いた以外で、何かないか?」
辻垣内智葉がそう黒服に告げると、黒服こと荻野は考えているのか、少し間を空けてから『……私も、詳しく聞いた話ではないので事細かには言えないのですが……それがどう致しましたか?』と申し訳なさそうに言うと、辻垣内智葉は「そうか……」と、最後の望みを断たれたといった声色で呟く。
『あ……いえ、調べれば恐らく出てくるはずです!』
「調べれば?本当か?」
『はい……何しろ国を治めたと言っても過言ではない者がやっていたと言われている博打ですから、新聞や
「じゃあ洗いざらい調べてくれ。任せたぞ!」
期待を込めて辻垣内智葉が荻野に向かって指示を出すと、荻野は『了解しました。……ですが、その場合ですと用意した録画機器の動作チェックが済んでいない18%の機器の動作チェックが終わらない可能性がありますが、よろしいでしょうか?』と言うと、辻垣内智葉は溜息をついて「……構わん」と呟く。実の父親や母親よりも親バカな黒服に対して呆れながらも、辻垣内智葉は信用して黒服に期待を託した。
こういう試合の裏側で話が盛り上がっていく私の書きたいだけシリーズ、私は好きですがその反面話が進まない致命的デメリット。
……ほどほどにしておきます。