宮守の神域   作:銀一色

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お久し振りでございます。
最近まで忙しかったり風邪を引いたりでなかなか時間が思うように取れなかったですが、ようやく投稿再開です。
前のようなハイペースな投稿は厳しいですが、善処したいと思います。


第459話 二回戦大将編 ㉘ 馳せ参じよ

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視点:神の視点

東三局二本場 親:清澄 ドラ{七}

姫松  90500

永水 116400

清澄  95500

宮守  97600

 

 

 

 

 

 一度流れを失ったのにも関わらず、すぐに立て直しを図って流れを取り戻しつつあった小瀬川白望。東三局二本場、恐らくこの清澄の親を流せばすぐ次局に来るだろう鷲巣巌を想定しながら、小瀬川白望は配牌を取っていく。先ほどまではまだ不安のあるコンディションだが、これほどなら技量で鷲巣巌と対等に渡り合うほどまで持っていくことが可能だろう。配牌の面々を見ながら小瀬川白望はそう感じる。先ほどまでは水のように手から溢れていく感覚を珍しく味わったが、今はしっかりと手で掌握、掴むことができている感触を確かに感じていた。

 

 

 

 

(流動している…………不必要なほどに)

 

 

 

 

 復調の道を辿る小瀬川白望だが、ここで今一度場の流れ、好調の波が不規則に揺れていると改めて感じた。急に流れを失ったこともそうだが、わずか数局でここまで露骨に順調に元に戻せるのも、いささかおかしい話だ。本来なら調子の変化というものは、好調から不調に、不調から好調にローテーションのように移り変わるのは突発的に起こるものではない。突発的に見えても、それは直前に何か予兆やそれを引き起こす過失がどこかにあるはずである。いくら人間の届く範疇外での流れの動きというものはあれども、良か悪か、そのどちらか一方のベクトルにのみ限る。急にマイナスになったと思いきや、すぐにプラスに戻ってしまうという例は普通は起こらない。

 そんな普通は起こらないような事が、自然の摂理というものが崩れてしまう異常が平然と起きているのだ。その原因はやはり鷲巣巌という、イレギュラー中のイレギュラーの存在だろう。流れや運、場の状態など本来人間が支配される側となる絶対的な要素から、唯一支配されない、天を、神を、全てを凌駕する存在がこの場にいる事によって、麻雀の柱となる場の流れの絶対性が崩れてしまったのだ。だからこそ、このように不安定な状態が作り出された。

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 

 そしてその一方、この異常事態を作り出した張本人、永水の石戸霞を援護する鷲巣巌の頭には、小瀬川白望が今不振に陥っているのか否かという、その二者択一しか頭になく、今もなおその選択について慎重に吟味していた。だがしかし、小瀬川白望が本当に不調であり、且つその不調を既に今の数局の間で持ち直していたなどという事は彼の頭の中には微塵も思い浮かんではいなかった。

 

 

 

 

(不思議だろうけど……答えをいちいち教えてる暇はない……直に分かるさ………………)

 

 

 

 

 この際鷲巣巌が気づいていようがいまいが、小瀬川白望にとっては関係が無い。どちらにせよ鷲巣巌にとっての答え合わせは次局に出来ること。いちいち鷲巣巌に教える意義も無かろう。とにかく、今小瀬川白望にできることはもうやり尽くした。後はこの清澄の親を蹴り、大きな転換点になるだろう次局に備えるのみ。

 備える、といってもそこから後どうなるかは分からない。真正面から鷲巣巌とぶつかる以上、今まで小瀬川白望が勝ってきたように完璧に圧倒しての勝利は難しい。それに加えてこの流動する波。これによってはまた不調に逆戻りという事もあり、その時は鷲巣巌を欺くことができなければそこまで。そうなればただただ蹂躙されて終わりだ。

 

 

 

 

 

 

(…………面白い。ならば挑もう……その生き死にの博打……)

 

 

 

 

 だが、こうでなくては面白くない。相手は師である赤木しげるが負けを認めた、あの鷲巣巌である。またとないこのチャンス、一時の流れの良し悪しで、わずかな運命の差だけで勝敗が決まりかねないというのはいささか理不尽、負けても悔やんでも悔やみきれないことに思える。

 しかし、それでいい……!それでこそ博打の真髄、醍醐味というもの。小瀬川白望が優位に立つか、鷲巣巌が優位に立つか。このシーソーの傾きは全て運命が決める事となる。無論、これが決して勝敗に直結するわけではないが、相手が相手だけに、ほぼほぼ勝敗が決まる事と同義である。

 

 

 

 

(が…………負ける気など毛頭なし……運命が鷲巣巌を選ぼうとも……)

 

 

 

 

 小瀬川白望は自分の師である赤木しげるの無念を晴らし、そしてその師を超えるため。鷲巣巌は自分が最強であることの証明、そして自分の無敗神話に傷をつけた恨みを払拭するため。互いが互いに思惑を抱えながら、両者は二度激突する。

 

 

 

 

 

「ロン、5200の二本場…………」

 

 

 

 

 そしてこの局はやはり小瀬川白望が宮永咲から直撃を奪い取って有言通りこれで清澄の和了を終わらせる。直撃を浴びた宮永咲は振り込んでしまったという事よりも、小瀬川白望がここで仕掛けてきた。ということはつまり、全ての準備が整ったという事を意味しているのを本能で感じ、震え慄く。傍観していた末原恭子も、この和了がただの和了ではない事は容易に想像できた。

 二人が恐怖に怯えている一方で、先ほどまで二択で悩んでいたためか、顔を顰めていた鷲巣巌はその和了を見て表情がガラリと一変、口角を吊り上げて思わず笑い声を零した。

 

 

 

『…………ようやく来おったか……アカギ…………てっきり、逃げ回るだけかと思ったぞ……』

 

 

 

 小瀬川白望からしてみれば、これまでの数局はいわば布石。次局に合わせるための急拵えではあるが鷲巣巌を完璧に惑わせ、欺いた神懸かり的な一手。しかし、鷲巣巌からしてみれば神懸かりだろうが、大層なものだろうが、これほどまでに腹立たしいものはない。偽りか真か。その二択に悩まされてきた鷲巣巌にとってはこれまでの数局でさぞ憤り、現代人でいうストレスとなっただろう。どちらが本当か分からないまま、数局分無駄に悩まされてきた。しかも相手は赤木しげるの生き写し。それが鷲巣巌の恐怖と、怒りに拍車をかけていたため、放っておくにも放っておけなかったのだ。

 だが、小瀬川白望が和了ってきたとなれば話は別だ。未だに鷲巣巌は、先ほどまで小瀬川白望の調子がどうであったかは皆目分からないが、こうなってしまえばもうあの二択に、まるで自分が選んだ方が決まって外れとなる、確率論を優に超えた悪魔の遊びに付き合わなくてもよいのだ。真だろうが偽だろうが、鷲巣巌が考える必要はもうなくなった。

 当然、ここまで悩まされたのも小瀬川白望の計算の内であることは鷲巣巌も勘付いている。だが、それはあくまでこれまでの、過去の話。今まで手のひらの上で踊らされていたとしても、これからの東四局の行方はまだ決まってはいない。見方によっては開き直りかもしれないが、鷲巣巌は肯定する。開き直りだろうがなんだろうが、ここで心を一度リセットするか否かで大きく変わってくる。むしろ、鷲巣巌はあの時、それができなかったせいで何度も窮地に追い込まれた。見えない影から逃げ続け、最後はアカギしげるの術中に嵌ってしまうのだ。

 

 

 

 

『………………馳せ参じよ』

 

 

 

 鷲巣巌はポツリとそう呟くと、ゴッッ!!という音と共に石戸霞の身体から強大な力、神をも超えた力が閃光となって溢れ出た。強烈な光が止んだかと思えば、今度は鷲巣巌は空間を強引に捻じ曲げてみせる。四人を記憶にも新しいであろう鷲巣邸へ、鷲巣麻雀へと案内する。これほどの現象が起きても尚無表情を貫く小瀬川白望を見据えながら、鷲巣巌はもう一度叫ぶ。怒りと憎しみを込めた声で。

 

 

 

 

『馳せ参じよ…………ッ!!奴を殺すため…………わしが勝つため………………ッ!今一度、わしの元に集結せよ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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