宮守の神域   作:銀一色

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第461話 二回戦大将戦 ㉚ 情報量 NEW!

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視点:神の視点

東四局 親:宮守 ドラ{⑧}

姫松  90500

永水 116400

清澄  89700

宮守 103400

 

 

 

宮守:配牌

{一裏四七七②裏裏⑧37裏東}

 

 

 

宮守:捨て牌

{西}

 

 

 

 

 親である小瀬川白望の{西}切りから幕を開けたこの東四局、小瀬川白望の打牌を確認した末原恭子は、慣れないと言わんばかりの素振りを見せながらも、恐る恐る革手袋を嵌めた右手を卓の中央の穴へと入れる。この変則的な鷲巣麻雀もこれで二回目であり、末原恭子にとってはもう初めての事ではないとはしつつも、やはりこの鷲巣麻雀に対しての抵抗、違和感はどうしても拭いきれていないようだ。

 

 

 

 

(永水のおっぱいオバケ(石戸霞)はともかくとしても……白望、ようこんな変則的な麻雀に順応できとるな……ウチには理解するのがやっとやで……)

 

 

 

 

 ツモってきた透明な牌を横にして、手牌の上に重ねた末原恭子は眼前の広がるガラス牌、つまり透明牌が広がるという異様な光景を改めて目の当たりにして溜息をつく。この鷲巣麻雀では、透明牌という特殊な牌故に、相手の手牌が見えるだけでなく、自分の手牌も相手に丸分かりという状況にある。通常の麻雀と同じような戦略が通用するかどうかすらも分からない。まず何をどうすればいいのか、どの情報から片付けていくべきなのか、定跡やセオリーなど何一つ知らない末原恭子の頭はショート寸前であり、なんとかしようと思っても無知故に下手に動くこともできず、目を右往左往させるだけでも彼女にとっては精一杯だった。

 そしてそんな末原恭子とは対照的に、こんな状況でも小瀬川白望は恐ろしいほど冷静であり、無表情を保っている。小瀬川白望は鷲巣麻雀の事自体は知っていた事が彼女と鷲巣巌の会話から予測はつくが、それにしても動揺という文字は全くもって見当たらない。いくら知っていたとしても、鷲巣麻雀の経験は無いはずだ。だというのにも関わらず、まるで何度もこの麻雀を打ってきているかのような振る舞いを見せている。一体、何を考えているのか。考えれば考えるほど彼女の術中に嵌っているような気がしたので、彼女は取り敢えず小瀬川白望について考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

姫松:一巡目

{三五七八九③⑧7888西発}

{三五裏八九③⑧788裏裏発}

ツモ{②}

 

 

 

 

(……一応、黒牌を優先して残した方がええんかな)

 

 

 

 小瀬川白望から自分の手牌に視線を落とした末原恭子は、第一打を何にするかを決めかねていた。本来なら、小瀬川白望がきった西を合わせ打ちするのが常套なのだろうが、あいにく末原恭子が持っている西は透明牌。手牌の大半が見えてしまうこの鷲巣麻雀において、この黒牌は貴重。いくら自風ではなく、直前に一枚切れているとはいえ、この西はうまく隠れれば抑止力にもなり得る。相手側からはこの西は見えないため、聴牌直前まで持っておけば相手が聴牌していると錯覚する可能性もある。そういった未曾有の可能性を加味すれば、ここは素直に西を切るよりも、發を切るべき。そう考えた末原恭子は下手に色々な事を考えることはせず、さっさと実行に移した。

 

 

 

 

(さっきは永水の配牌がバカみたいな手やったし、オリてたかた分からんかったけど…………いざ攻めるとなると、数倍考えなあかんな……)

 

 

 

 

 先程は鷲巣巌の豪運によって、ほぼ鷲巣巌の和了が確実となっていたため末原恭子はせめて振り込むことのないようにオリを選択していたが、今は鷲巣巌の手も、小瀬川白望の手もそれほど絶望的な速さを誇るというほどでもない。こうして初めて末原恭子が攻め得る隙が生まれたわけだが、攻めとなると守りの数倍の思考を必要とする。

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

永水:一巡目

{三六六七裏①⑥⑨335裏東}

ツモ{9}

 

 

 

 

『東だ』

 

 

 

 

 

永水

打{東}

 

 

 

 

 

(九索が入るってことは……あの黒牌は七索か九索ってことなんか?いや、でも取り敢えず字牌整理ってこともあるしな……)

 

 

 

 

(……情報が多すぎる。手牌が見えるのは全部プラスだと思っとったんやけどなあ…………)

 

 

 

 

 末原恭子は頭に手を当ててもう一度ため息をつく。両隣にいる化け物は相変わらず平然としているが、対面の宮永咲は自分と同じようにこの鷲巣麻雀というものを体験して音を上げているようだった。どことなく彼女に対してシンパシーを感じながらも、宮守や永水に比べれば明らかに不利な状況であることには変わりない。

 

 

 

(…………とにかく、準決勝に上がるには二位には入らへんと……)

 

 

 

 

 末原恭子は意気込みを入れようするが、そこまで言って末原恭子はハッとした。自分が言っていることの無謀さに。そう、二位に入るということは、相対的に宮守か永水のどちらか一方を三位に落とす、つまり抜かす必要がある。小瀬川白望の宮守か、鷲巣巌の永水か。この両者のうちどちらかを抜かすということほど、難しいことはない。しかし、末原恭子はそれ以上は考えない。実際、そのことは頭の中では分かっていたはずだ。その無謀さを改めて知ったというわけであって、初めて気づいたというわけではない。ならば、臆する必要もないだろう。

 

 

 

 

(やるしかあらへん…………ウチは、このバケモン二人を相手にせなアカン……!)

 

 

 

 

 

 

 


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