宮守の神域   作:銀一色

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シロと竜華の一騎打ち。東一局です。
果たしてこの準決勝が終わるまで何話使うんですかねえ…


第37話 準決勝 ② 絶一門

第37話 準決勝 ② 絶一門

 

 

 

 

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視点:神の視点

前半戦東一局 親:モブA ドラ{⑥}

 

小瀬川 25000

モブA 25000

清水谷 25000

モブB 25000

 

 

準決勝前半戦。その東一局。小瀬川と清水谷の一騎打ちとなる状況で、2人の選手…否、雀士は静かに闘志を燃やし、お互いを見つめ合っていた。

 

(…ふふ)

 

 

(勝つで…小瀬川!)

 

 

不敵に笑う小瀬川に対して、勝つという意思を全面に押し出している清水谷。方向は違えど、2人の闘志はまさに最高潮であった。

 

 

親が第一打を放ち、東1局が、前半戦が、準決勝が始まりを告げる。

そして清水谷へツモ番が回る。清水谷はツモ牌を静かに手牌へ取り込み、清水谷も第一打を放つ。が、

 

 

 

 

清水谷:捨て牌

{⑦}

 

 

清水谷:手牌

{二三六七九⑨⑨3588東北}

 

 

その一打は、誰がどう見ても有り得ない一打であった。手出しの{⑦}。

しかも、これっきりではない。次順、その更に次順に{⑨}の対子を落とし、筒子三連打。

 

この三連打によって、清水谷の手牌は

 

{二三六七九135889東北}

 

になり、結果として向聴数を三向聴から四向聴に戻ってしまった形になる。

この場にいる者は勿論の事、実況、観客も、皆この意図が分からない。

 

 

だが、

 

 

 

 

(へえ…)

 

〜〜

 

 

【…なるほどな。】

 

 

 

 

 

小瀬川と赤木だけはそれを察する。

 

 

 

 

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小瀬川

{西南⑥}

 

 

2巡前までは字牌の整理をしていた小瀬川だが、3巡目にして急遽筒子の{⑥}打ち。

この小瀬川の打牌に観客はどよめきを露わにする。

 

 

無論、特別観戦室にいた塞と胡桃もその例外に漏れない。

 

「ど、どういう事…?」

塞が信じられないような表情をして、スクリーンに映る小瀬川を見つめる。胡桃もまた、今の状況についていけてはいなかった。

 

 

【…絶一門(ツェーイーメン)さ。】

 

そんな2人を見て、やれやれといった感じで赤木が呟く。だが、2人はその言葉の意味が分からない。

それを知った赤木は、【あらら】と言って、絶一門について説明を始める。

 

【絶一門ってのは…萬子、筒子、索子の内の1種類を無視し、残りの二色だけで手作りをするという戦法…今の状況はまず清水谷竜華が誘い、アイツが受けて立ったって感じだな。】

 

説明を聞いた塞と胡桃だが、根本的な質問を赤木にぶつける。

 

「なんで清水谷さんはそんな事を?」

 

 

【互いに一色を殺して手作りすれば、必然的に聴牌間際に溢れる牌は残った二色の何かという事になり、撃ち合い必死になる…いわば逃げない麻雀だな。並みの勝負じゃ勝ち目が薄いと判断したのだろう…】

 

赤木が抑揚のない声で解説するが、2人は心配そうな声で

 

「それって場合によってはシロが不利になるかもしれないって事なの?」

 

と尋ねるが、赤木はニヒルな笑みで急に別の事を話し始める。

 

 

【約束ってのは、必ず守らなければならないなんて事は無い。人によっちゃあ約束は破るためにあるものなんて言うろくでなしも居るもんさ。】

 

 

「「?」」

赤木が突然無関係な事を話し、2人は首を傾げた。

 

 

【抜け道はいくらでもあるという事…まあ見てな、今局か次局、面白いものが見れる…】

 

ハテナマークを浮かべた2人にそう言い、赤木はスクリーンに映る小瀬川をただただ面白そうに眺めて笑っていた。

 

 

 

 

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序盤は殆どの人間が理解できなかった清水谷と小瀬川の『絶一門』だが、捨て牌が2段目に移ろうとしていた頃には、観客含む全員がそれを察していた。

 

ー2人とも意図して筒子を殺している。と

 

 

 

そして先手を取ったのは『絶一門』を誘った清水谷であった。

 

清水谷:手牌

{二三五六七九34588東東}

ツモ牌{東}

 

打{九}で{一-四}待ち。問題はリーチにいくか否かである。

 

リーチをかければこの手、リーチツモ東。裏ドラに東が乗れば最高跳満まで化ける可能性を秘めた手である。がしかし、リーチをかけなければどう足掻いてもツモ東どまり。出和了なら東のノミ手にしかならない。

 

(…)

 

 

暫し考えたが、リーチはかけずに打{九}。一時保留する事にした。

 

 

 

だがその同順に小瀬川も急所の牌を引き入れて、聴牌まで残しておいたと言わんばかりの確実安牌の{①}を打って聴牌。

 

小瀬川:手牌

{二三四五八八八456発発発}

 

捨て牌

{西南⑥③①⑤}

{九⑥5西①}

 

 

此方もリーチはかけず、発のノミ手。これで両者ともに役牌のノミ手を聴牌。最初の決闘が始まる。

 

 

清水谷

打{三}

 

 

清水谷の聴牌後初めてのツモは{三}。危険牌極まりないこの牌だが、後には引けないと考え打{三}。

 

 

小瀬川

打{⑤}

 

 

それに対する小瀬川のツモは安牌の{⑤}。地雷原に足を突っ込む事なく、一巡を消化する。

 

 

 

危険牌を掴んだ清水谷に対して、安牌で場をやり過ごした小瀬川。聴牌してからたった一巡ではあるが、誰しもが小瀬川の好調を予見していた。

 

 

 

だがしかし、

 

 

清水谷:ツモ

{四}

 

 

 

(来た…!)

 

 

 

「ツモや。」

 

 

清水谷:和了形

{二三五六七34588東東東}

ツモ{四}

 

 

 

 

「四十符二飜は700-1300。」

 

 

あっさりと清水谷がツモり、2700の和了。観客は小瀬川が先に和了ると予想していたが故、清水谷が先に和了った事に疑問を持つが、そもそも前提が、即ち小瀬川の好調という前提自体が誤りなのである。

 

そもそも、この『絶一門』という状況を作り出したのは清水谷である。言い換えれば、『絶一門』というステージを清水谷が作ったという事。

 

即ち、小瀬川は清水谷の土俵の上で闘っている事に等しい。スポーツで言うアウェー戦と言ったところか。

そう考えれば、ホームである清水谷と、アウェーの小瀬川のどちらが好調か。と言われれば、少なくとも小瀬川が好調であると答える人はいないだろう。

 

 

ただ、決して必ず清水谷が好調であるというわけという事でもない。小瀬川が清水谷を上回る事はないが、同等である可能性はある。むしろ、そっちの方の確率が高い。

 

そういう点から見ても、今の清水谷の状態はラッキーだったと言えよう。この和了が、その証明となった。

 

 

 

何はともあれ、清水谷と小瀬川の『絶一門』の一騎打ち、その初戦は清水谷が足一歩分リードした結果となった。

 

 

そして勝負は清水谷の親番である東二局へと進んでいく。




絶一門といえば、市川と霞さんのイメージが強いですね。
次回も頑張りたいと思います。

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