宮守の神域   作:銀一色

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リクエスト回です。
残念だけど豊音と末原さんは不参加だよー


宮守の神域 リクエスト その5-2

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視点:小瀬川白望

 

 

 

「お、シロちゃん達が来たでー!」

 

 

「騒ぐなや、愛宕」

 

 

 東京駅に到着した私と胡桃と塞と爽を最初に出迎えてきてくれたのは洋榎とセーラであった。二人で待っていてくれたのだろうが、私はそれに対して少々の疑問を抱いていた。単純に言うと、二人の仲はあまり良いとは言えない、むしろ悪い仲であった。高校に入って大阪の一、二を争う名門校に入ったからか、二人はライバルという事もあって高校に入ってからよく二人から互いの愚痴をメールで聞かされている。少し前から二人は知り合っていたらしいが、その時はどんな関係であったのか非常に気になるが、聞かないでおいている。

 そんな二人が大人数だけならまだしも、二人だけでいるという光景が違和感しか感じなかった。もしかすると、二人は互いにああ言ってはいるものの、嫌も嫌も好きのうちという事なのだろうか。

 

 

「シロちゃん達はあっちの方向に辻垣内がいるさかい、そっちに向かいー」

 

「分かった。洋榎とセーラは?」

 

「ウチらはここで皆が来るかどうかを確認する係なんや。ジャンケンで負けてな……まあ、別にええんやけどな!……セーラがおらへんかったら」

 

「はあ……ジャンケンで負けたとはいえ、なんでオレがこんなんと一緒で待たなあかんねん」

 

 十数秒前の私の疑問が直ぐに解かれ、ああ成る程と妙に納得してしまったが、取り敢えず私は智葉のところへと行こうとすると、塞からにっこりとした笑顔で私に向かってこう言った。

 

「この獅子原さんといい、あの関西弁の子といい……随分と顔が広いようじゃない?シロ?」

 

「……シロの誑し!」

 

 笑顔ではあるが目は笑っていない塞に戸惑い、更に胡桃に横からそんな事を言われて反応に困っている私は、爽に助けを求めようとしたが、「まあ仕方ないだろ。……だいたい予想ついてたし」と言われ、完全に孤立無援状態であったが、何とか智葉達のところへとたどり着き、難を逃れたと思っていた。が、

 

 

「中坊が出しゃばるもんちゃうで!」

 

「うるさか!私かて、シロさんに対しての愛情は本物ばい!」

 

 

「まあまあ、怜……」

 

「ちょ、落ち着け!姫子!」

 

「どうしたらええんやコレ……」

 

 

 実際問題、そこも結構悲惨な状況であった。怜と姫子が啀み合っており、それを止める竜華と哩。そしてそれを戸惑いながら見ている絹恵と智葉といった、非常にダルい状況であった。智葉が頭を抱えながらもこちらを見つけると、「やっときたか……」といってため息をつく。私ら来る前までに、すでに疲弊しきっていた事が伺える。

 

「あ、シロさん!怜をどうにかしてや!」

 

 そんな智葉を憐れんでいると、竜華が此方に向かって助けを呼ぶ。私としてはすごく関わりたくないのだが。とはいえ、背後にはとてつもないオーラを放っている塞と胡桃がいる。しかも、「また増えたのか」という声の圧力を背後からかけてきている。前も地獄、背後も地獄。どちらに行ってもダルそうな未来しか見えないジレンマを抱えながらも、取り敢えず私は竜華達の元へ行く。

 

「イケメンさん。ちょいとばかし待っててな。この中坊に真の愛情というものを教えてやるんや」

 

「シロさん!この関西人ば倒し、部長と共に愛情ば育むばい!」

 

 しかし、私が行ったところで現状が良くなるわけでもなく、むしろそればかりかもっと悪くなっているようにも思える。竜華はどうしたらいいんだと困り果てているし、哩に至っては顔を赤くして「姫子……少し恥ずかしか」といってどこか満更でもなさそうな表情をしていた。こりゃあ収拾がつかないなあと思っていると、遠くの方から巫女服を着た五人組がやってきた。東京駅での巫女服集団という事で、かなり目立っている五人組が私達のところへとやってきた。

 

「あらあら。ごきげんよう」

 

「お前か……いつぞやの電話のやつは」

 

 やってきて挨拶を言った霞に対して、智葉がそんな事を霞に向かって言う。そういえば、私が過去鹿児島に行った時霞が智葉と電話で話していたが、一体何を話していたのだろう。その謎が深まった瞬間であった。

 

「シロさんを困らせてはいけませんですよー!」

 

「なんや、露出狂が騒いどるで。中坊」

 

「ええ。全く、とんだ変態とですよ」

 

「えらく二人の仲が良くなったですよー!?」

 

 二人の喧嘩を仲裁しようとした初美が、怜と姫子にすっぱり切られて撃沈する。初美が言っていた通り、この二人、急に仲が良くなったように見える。それと同時に露出狂や変態呼ばわりされた初美に同乗する。まあ、そんな格好をしているから言われるのであって自業自得としか言えないのだが。

 しかし、私もあそこまで露出が多くはなかったものの、巫女服を着た事があるし、罰ゲームで怜に無理やり着させられたとはいえ、背中がぱっくり見えているセーターを着た事はあるので、もしかしたら私も変態、露出狂と言われてしまうのか……?いや、それはないな。ないと信じる。

 

「まあ……これで後は長野のあいつと、奈良のやつら。そして……宮永照か」

 

 智葉が手帳を開きながらそんな事を呟く。照はそういえば重度の方向音痴だが、この広い東京駅で無事に指定の場所に来られるのだろうか。……多分無理かなと思いながらも、流石に東京駅全てを回り歩いて探す事もできず、奇跡的に到着してくれる事を祈るしかなかった。

 

 

「あ……照」

 

 そんな事を考えていると、照が少し遠くでオロオロしているのを見つけた。あれを見るに、やはり迷っていたようだ。私は照の腕を掴んで皆のいる方向に引っ張っていく。

 

「白望さん……ありがとう」

 

 そうして無事に合流できた照であったが、照からのお礼よりも私は周りからの視線がとても気になって仕方なかった。何を怒っているのか、何が気になっているのかは分からないが、とにかくこれはダルくなりそうだと思っていると、久がやってきた。しかし、久は登場と共に大変な爆弾を炸裂させてきた。

 

「会いたかったわよー!」

 

「ちょ……久」

 

 いきなり久は私へと飛びかかり、思いっきり抱きしめられる。これはヤバいと内心思った時には既に遅く、絹恵が久の首根っこを掴むと、「悪い子はお仕置きやでー」と言って待ち構える怜を始めとした数人が久の事をずるずると引きずっていった。

 そうして数分後、セーラと洋榎の仲が良いんだか悪いんだか分からないコンビと共にやえ、憧、穏乃、松実姉妹の奈良組がやってきて、これで全員が揃った。

 

(海から行くまでで既にダルいってどういう事……)

 

 そうしていざ海に出発となったが、行く時点で既に疲れ切っている。海ではこれ以上にダルくなるのだろうか。後々が思いやられるような幕開けであった。




次回でリクエスト回は終わりです。

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