宮守の神域   作:銀一色

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南一局です。


第64話 決勝戦 ⑫ ようこそ『神域』へ

 

 

 

 

 

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視点:神視点

南一局 親:小瀬川白望 ドラ{七}

 

小瀬川 33,300

照 18,500

辻垣内 11,200

洋榎 37,000

 

 

前半戦の東場の四局が終了し、南入。南一局へと場は突入していく。現在トップを走るのは愛宕洋榎。それを三人が追いかけるといった状況となる。だが、この卓では何が異常で、何が正常か、そのような判断もつかないようなくらいに四人の力は拮抗している。それも、一局、二局で何万という差が吹き飛ぶレベルで、である。故に、今は誰が一位だとかはあまり関係は無いのかもしれない。

 

 

辻垣内:配牌

{一八⑤⑥12赤567889東}

 

この南一局の親である小瀬川の対面に位置する辻垣内智葉の配牌はまあまあ良さげではある。索子の偏りを生かして混一色。果ては清一色も狙いにいくことができる良配牌。実際、辻垣内本人も、索子の染め手に進めようと考えていた。

 

辻垣内:手牌

{一八⑤⑥12赤567889東}

ツモ{2}

 

そしてそれを後押しするかのように辻垣内の最初のツモは索子の{2}。これで目標の索子の染め手に一歩前進する形となる。

しかもこの時、辻垣内は索子の染め手以外は眼中に無いようだったらしく、両面搭子の{⑤⑥}の片割れの{⑤}を打つ。どうせいずれ切るのだから、中盤以降狙われる可能性が高くなる中張牌から切ってしまおうという考えだ。だから浮いている{一や八、東}よりも先に切ったのだ。{④や⑦}をツモってくるという裏目を恐れず、真っ直ぐな{⑤}打ち。

その決断が麻雀の神様に気に入られたのであろうか、この後もどんどん索子を引いてきて、早くも6巡目にして索子の清一色一向聴となる。

 

辻垣内:手牌

{一122赤56778899東}

ツモ{6}

 

いや、厳密には二向聴であるのだが、麻雀の基本の和了形四面子一雀頭でない例外、七つの対子によって構成される七対子としてみれば一向聴である。

当然、{一}を切って一向聴となる。6巡目にして清一色聴牌目前となり、通常優位であるはずの辻垣内であったが、しかし辻垣内の内心は穏やかではなかった。

そんな、辻垣内を焦らせる要因となっているのが、他の誰でも無い、小瀬川白望である。

 

小瀬川:捨て牌

{二五七④⑧一}

 

 

小瀬川の捨て牌を占めるのは萬子と筒子のみ。そこには索子はおろか、字牌すら置かれることはなかった、6巡たった今でも。となれば、彼女が目指しているのは索子の染め手が濃厚であるだろう。

 

(……先手を打たれているかもしれんな)

 

小瀬川が自分と同じ索子の染め手に進んでいるとすれば、あの小瀬川の事だ。既に先手を打たれている可能性も高いであろう。が、たしかにこれはあくまでも辻垣内のただの憶測、予想でしかない。しかし、皮肉にもこの辻垣内の予想は後々当たってしまうことになる。

 

辻垣内:手牌

{122赤566778899東}

ツモ{5}

 

そしてそのすぐ次巡に聴牌へと導く{5}をツモり、念願の清一色七対子を聴牌する。しかし、ここでは辻垣内はリーチをかけずにただ{東}を切って黙聴にとった。理由としては、もし{2か3}をツモってくれば、{123もしくは222}の面子を作ることができ、七対子ではない通常の清一色を聴牌できるからである。しかも待ちは{5689}の四面待ちと、待ちも広くなるといった利点がある。故に、ここではリーチをかけずに保留したのである。

そしてその次巡、その保留が結果的に功を奏す事となる。

 

辻垣内:手牌

{1225赤566778899}

ツモ{3}

 

{3}引き。これで{123}の面子が完成し、{5689}のシャボ待ち四面待ちに手を移行することができる。が、しかし辻垣内の表情は決して良いとは言えない。どちらかというと暗いといった表情である。まるで、()()()()()()()()()()()()()事が進んでいる事態に気付いたかのように。

 

 

辻垣内

打{1}

 

 

結局、辻垣内はここでは四面待ちに取らずに七対子{3}待ちとした。辻垣内には、どうしても{2}が切りきれなかったのだ。何故なら、ここまで上手く事が行きすぎている、と感じたからの一点である。根拠などはない。が、辻垣内の本能が告げていた。これを切ったら死ぬ、やられる、と。

 

小瀬川:手牌

{12334567789中中}

 

そしてその本能が告げていたことは真実であった。{258}待ち。あそこで{2}を切っていれば当たっていた。辻垣内の判断は正しかったのだ。

そして辻垣内は、おそらく自分が{2}を止めたことから、次巡かその次にでも小瀬川は待ちを変えてくるであろうとも考えていた。多分次は{3}が狙われてくるであろう。{2}を止め、{1}を切ったとなれば次溢れるのは{3}となるのは誰でもわかることであろう。

しかし、逆に考えれば{3}に待ちが変わるとなれば、{2}が安全になるということだ。そうなれば、{123もしくは234}の面子を作れば、四面待ちへ移行できるが、どうせ都合よく和了牌の{3}や四面待ちにつながる{1、4}はツモれないだろう。もっと言うなら次ツモる牌は{3}が溢れる形になる{222}の面子にすることができる{2}だ。結局、ツモに頼ることはできず、宮永照からの{1か4}を待ち、それを鳴いて{3}を処理し、四面待ちにするしかない。

 

(さあ……どう動く?)

 

 

小瀬川と辻垣内。二人の思惑が交錯するこの南一局だが、辻垣内の次のツモ番である愛宕洋榎の打牌によって、この南一局は終盤戦へと突入することとなる。

 

 

 

愛宕洋榎

打{中}

 

 

 

「ポン……」

 

 

 

小瀬川:手牌

{12334567789} {横中中中}

 

 

 

小瀬川

打{7}

 

 

愛宕洋榎が切った{中}を鳴き、辻垣内の予想通り待ちを変えてきた。しかも案の定待ちは{3}が含まれる{369}待ち。辻垣内の動きに合わせて小瀬川は照準を構える。それは追跡ミサイルの如く辻垣内の元に和了牌という軌道をピッタリと変えていく。

しかし、運が良いことにこの直後、宮永照はこのツモを機にオリへと回ってくれた。それだけで有難いのだが、それに加えてその第一打目から辻垣内に対して絶対安牌の{1}。しかし、辻垣内にとってこの{1}はまさに恵みの雨だった。

 

 

「チー!」

 

 

辻垣内:手牌

{25赤566778899} {横123}

 

 

辻垣内

打{2}

 

 

宮永照が打った{1}を鳴いて、爆弾である{3}を安全処理するとともに、小瀬川の待ちを二回潜り抜けて待望の四面待ちへと移行することができた。鳴いてしまったことで打点は下がってしまったものの、清一色赤1の跳満という高打点。しかも待ちが四つ。いくらなんでもこれは引けるであろう。ただでさえ小瀬川の妨害を華麗にかわしてきたのだ。狙ったが和了れなかった小瀬川と、狙われたが振り込まなかった辻垣内。どちらがこれから優勢になるかは一目瞭然である。

そしてそれを裏付けるかのように小瀬川の次のツモは{三}。和了牌を掴むどころか、待ちを変更することができる索子すら引けなかった。

無論、宮永照はオリているので、小瀬川の和了牌を切るような愚行はしなかった。そして、遂に辻垣内のツモ番になる。辻垣内はフーッと息を吐き、気合いを入れて山から牌をツモってくる。

 

「……やっと、掴むことができたな」

 

 

 

辻垣内:和了牌

{5赤566778899} {横123}

ツモ{9}

 

 

 

 

「ツモ!清一色赤1、3,000-6,000!」

 

 

 

 

数多もの障害を越えて、掴んだ{9}という和了牌。おそらくこれを掴むことができるのは、まさに奇跡としか言いようが無いであろう。100人が同じ条件で打って、100人が小瀬川に振り込んでいただろう。それほど難しいことを辻垣内はやってのけたのだ。自分の直感に身を任せるということは、簡単なことに見えて、実は一番難しい事なのだ。それを恰も平然とやってのける赤木や小瀬川の『神域』という名のステージ、それに漸く辻垣内は立つ事ができた。ここまで長く、苦しい道のりだった。そうして、やっと同じステージに片足を突っ込む事ができた。だが、所詮は片足。赤木が言ったように、色のついた水は二度と無色透明な水には戻らない。

 

だが、それがどうした。

 

例え完全な透明になれないとしても、()()()()()()()()()()()()()。新たな水を加えて、色を薄めるように、少しずつ戻していけば良い。少しずつ小瀬川に近づいていけば良い。その道のりはこれまで以上に険しいであろう。だが、確かに辻垣内は一歩を踏み出した。目標に向かって、確かな一歩を踏み出したのである。

 

 

(……智葉)

 

 

そんな辻垣内を、小瀬川は嬉しそうな表情をしながら見つめた。そして、辻垣内に心の中でこう呟いた。

 

 

 

ーーようこそ、私たちの世界(神域)

 

 

 

 

 

 




次回は南二局!
ここまで空気気味だった『加算麻雀』が猛威を振るう事になるでしょう(予定)
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