びっくりするほど急展開。
-------------------------------
東四局一本場 親:小瀬川白望 ドラ{北}
小瀬川 24,000
照 36,100
辻垣内 25,500
洋榎 14,400
裏ドラ{8}
小瀬川:和了形
{四四四⑤⑥⑥⑦⑦⑧7999}
ツモ{8}
東四局一本場、親の小瀬川がリーヅモ裏1の一本場を加えた2,100オールを和了。表面上だけ見れば、親の小瀬川が三人を降ろして独壇場となった後、余裕を持って自摸和了のように見えるかもしれない。……いや、愛宕洋榎と辻垣内智葉は完全のそうだと思っているので、そのようにしか見えないと言った方が正しいか。だが、事実小瀬川は今窮地に立たされている。和了りを積み重ねても、一向に流れが良くなる気配がない。むしろ、どんどん悪くなっているような感じもする。今はまだドラ、裏ドラによって隠れてはいるものの、それが無ければ全てノミ手、もしくは二飜和了という、東三局から立て続けに和了ってきたとは思えないほど打点が伸び悩んでいたのだ。そして、その事実に、小瀬川が必死に隠そうとしていた、小瀬川の衰運という事実に宮永照はここにきて気付き、確信する。
(・・・間違いない……)
しかも、宮永照には小瀬川本人ですら分からず、謎であった自身の衰運の原因にもおおよその目星がついていた。
その小瀬川の衰運を招いた直接的根源は、小瀬川白望が無自覚ながらその身に宿していて、尚且つ彼女の本質でもある謎の闇が原因であると宮永照は予測する。
一度『照魔鏡』によってそれを探った宮永照だからこそ分かったのだ。小瀬川が和了れば和了ろうと……
(・・・いつ暴発してもおかしくない……けど、ここは攻め時。無理矢理にでも親番を終わらせる)
何故小瀬川の闇が急に小瀬川の流れを奪い、膨張していったのかは宮永照にはこの時点では分からなかった。が、東四局が始まる前の辻垣内の考察と、小瀬川の闇について併せ考えればその理由は浮き彫りとなる。
辻垣内は『小瀬川が赤木しげるに最も近づいた状態の時に途轍もない絶望感を味わえる。そしてその時は今だ』と考察した。確かにその考察は正しく、今小瀬川は赤木しげるの領域に最も近づいている。が、そこがポイント。小瀬川の闇は、宮永照の『照魔鏡』によって小瀬川の本質であると分かった。そして、他の何かが小瀬川の闇にある程度干渉しようとすると、小瀬川の闇が他の何かから防衛するが如く、それを侵食していくのも分かった。そしてここである仮説を立てると、上手く辻褄が合ってしまうのだ。
その仮説とは、小瀬川の本質ではない、謂わば異物である『赤木の麻雀』に小瀬川が近づきすぎてしまったため、小瀬川の闇がそれを遠ざけようと、『赤木の麻雀』を機能させまいと、流れを強引に食いとっている、という仮説だ。そうなれば、不自然な小瀬川の衰運も、宮永照が感じた闇の膨張も一つに繋がる。
だが、ここで一つ問題がある。先ほどの仮説から考えていけば自ずとその問題は出てくるのだが、それは小瀬川の『赤木の麻雀』がどんどん闇によって排除されかけているという事だ。今はまだ流れを食いとっているだけだからまだ良いが、次第に小瀬川本人の意思ですらその闇に侵食されかねないという事だ。小瀬川本人が『赤木の麻雀』に近づきたいと思っているが故に、その本人の意思も闇によって異物と判定されれてしまえば、それで終わりだ。つまり、宮永照が考えているように、いつその奪った流れを闇が表面上に出していくのかとかそういう問題の話ではなく、小瀬川の身の危険すら関わってきているほど深刻な問題なのだ。
しかし、小瀬川本人は未だその深刻な事態には気付いていない。そもそも原因すら検討がついていない小瀬川がそんな事態に気付けるわけがない。小瀬川にとっては一時的な流れの歪み、不具合程度にしか感じていないが、この東四局二本場、小瀬川が配牌十四牌を山から取り、それを開こうとする。が、その瞬間
(・・・ッ!?)
ズキッっという頭痛の時の症状と同じ、頭の中を何かで刺されたかのような鋭い痛みがが小瀬川の頭の中で起こった。いきなりの痛みに、思わず小瀬川は手で頭を押さえる。
(・・・痛くない……?)
だが、その痛みは一瞬の痛みだったようで、手で押さえた時には既にその痛みは無くなっていた。小瀬川は疲れているのかな程度で考えているが、これこそが予兆。小瀬川の中の闇が、どんどん小瀬川を侵食していっている事の紛れも無い証明。それが、とうとう体の表面に出てきてきた。それが指し示す事は、闇の侵食がもう少しで完了してしまうという事。
しかも、これだけでは無い。小瀬川の体のSOSは、これだけに留まらなかった。
-------------------------------
東四局二本場 親:小瀬川白望 ドラ{9}
小瀬川 30,300
照 34,000
辻垣内 23,400
洋榎 12,300
七巡目
小瀬川:手牌
{三四五七七九⑤赤⑤567東東}
ツモ{八}
七巡目にしてやっと{八}をツモってくる事ができ、聴牌{⑤東}待ち。前局は五巡目で聴牌できたという事を考えると、やはり流れもどんどん侵食されてしまっている事がうかがえる。しかも、七巡目での聴牌のため、既に宮永照と愛宕洋榎に先を越されてしまっていた。
無論、リーチをかけなければこの手は出和了りは{東}でしか望めないため、小瀬川はリーチをかけていく。
「リーチ」
小瀬川
打{横七}
ここまではまだ良かったのだ。問題はその次、八巡目の出来事だった。
場が一巡して、小瀬川が山からゆっくりとツモってくる。そしてその牌を見ると、ツモ牌には{④}と記されていた。当然{④}は和了り牌ではないため、切るしかない。小瀬川は宮永照と愛宕洋榎の捨て牌に目を向けると、見事にどちらの捨て牌にも{④}があった。辻垣内には聴牌気配はないため、これは通る。そう思って切った小瀬川だが、
「ロン」
(・・・え?)
宮永照:和了形
{二三四四四③④456678}
「ロン。タンピンドラ1。4,500」
宮永照が手牌を倒す。だが、おかしい。おかしいのだ。小瀬川が切った牌は{④}のはずだ。そして宮永照の待ちは{②⑤}。当たるわけがない、そう思い、今さっき小瀬川が切った牌を見ると、それは{④}ではなく、{赤⑤}だった。
(・・・見間違い?私が、そんな初歩的なミスを……?)
小瀬川は頭の中で思考する。ただ単なる見間違いなのか?と。だが、普通そんなことは有り得ない。今まで驚異の集中力を誇ったあの小瀬川白望に至って、そんな馬鹿なことをするわけがない。
・・・その原因は言わずもがな闇の侵食である。侵食が、とうとう牌を見間違えるほどにまで進んできてしまっている。しかも、小瀬川は未だこの事態に気付いていない。
(・・・小瀬川が、あんな簡単に振り込んだ?)
辻垣内も、小瀬川があっさり宮永照に振り込んだことに違和感を感じている。しかも、明らかに動揺して、だ。かつて小瀬川がこんな表情を見せた事があっただろうか。辻垣内に並ならぬ悪い予感がした。
(・・・白望さん、もしかして……)
そして和了った宮永照も、あっさり振り込んだ小瀬川に不信感を抱く。それと同時に、闇が小瀬川の流れだけでなく、体も侵食しているという事実にも薄々感づいていた。
だが、そこからが分からなかった。宮永照には、何故闇が小瀬川を侵食していく理由が、今の事実に気付いた事で、さらに分からなくなった。
不穏な予感が漂いながらも、これで東四局が終わり、勝負は最後の四局。南場に突入する。
なんというゴリ押しっぷり。
脳内では結構いいアイデアかなと思って文章にしたらこれだよ!
小説あるある『文章にしてみたら文章力のせいで果てしないコレジャナイ感』
結構時間かけて文章にしたからボツにはできなかったんだ……すまんな。
・・・ボツで思いましたがこの『宮守の神域』という小説も幾つものボツ作品という屍の上に成り立っているんですよ。
逆に言えば色々試行錯誤した結果がコレです。これ以上のは無理です。