【習作】千佳ちゃん並のトリオンモンスターが普通に戦ってみる話 作:枝豆豆腐
「鬼怒田さーん!鬼怒田さん!ちょっと待って!」
ボーダー本部の廊下に少年の声が響く
名前を呼ばれた鬼怒田は聞き覚えのあるその声に後ろを振り向いた
「ん?刈谷か、何の用だ?」
刈谷誠、鬼怒田に声をかけた少年の名前である。
彼は慌てた様子で鬼怒田に近寄り、非常に興奮した様子で問い返した。
「アイビスで訓練生が本部の壁をぶち抜いたって本当ですか!?トリオン測りました!?というか測ってますよね!?どれくらいだったんですか鬼怒田さん!?」
息をつかせぬ程の勢いで迫られて流石の鬼怒田も引き気味ではあるが、彼が聞きにくるだろうことは予想が着いていた。準備していた通りに事実を答えるだけである。
「僅かだが、お前よりトリオン量が多かったよ。ボーダー新記録だ。」
その言葉に少年は感極まったように聞き入っていた。
そして再起動を果たした後、無駄に高いテンションを維持したままブツブツと呟いている。
「俺より多いのか……楽しみだなー、何時上がってくるかな?多分すぐ上がるだろうな。スナイパーみたいだし、やっぱやるならチーム戦だよな。ちょっとくらい慣れてからの方がいいし、出来れば上位の方でやりたいけど……」
なんだこいつ…と面倒臭そうに彼を見る鬼怒田の視線に気付き
「あっ、すみません。ありがとうございました。ちょっとやる事が出来たんで失礼します!」
そう言って走り去って行った。
鬼怒田はやや呆れた様子で口を開く。
「慌ただしい奴め……。まあこうなるだろうとは思っとったが、予想以上に興奮しとるようだな。あの子はあやつが求めとる様な人間ではないと思うが。」
その呟きは誰にも聞かれることなく廊下の中に消えて行った。
ーーー
彼が向かったのはA級1位、太刀川隊の作戦室であった。
余程急いでいるのか、扉の前でやや早口に声を出す。
対応したのは出水の様だ。
「急に悪いな、国近居る?」
おー刈谷さんじゃん、と特に珍しくもない来訪者に普段通りの反応をする出水。刈谷はよくゲーム目的でこの部屋に来ていた。
「ああ、中で太刀川さんとゲームしてますよ。ゲームしに来たんじゃないんスか?なんか用あるなら中でどうぞ。」
そう言って出水は刈谷を部屋の中に招き入れた。
部屋の中では出水の言う通り国近と太刀川がゲームをしている様だ。
太刀川が先にこちらに気付いて声をかけた。
「誰かと思ったら刈谷か。どうした、なんか用か?」
刈谷は少し頭を下げながら返答する
「お邪魔します。国近に用があるんですけど太刀川さんも関係ある話なんで、それ終わったらちょっといいですか?」
太刀川は少し不思議そうな顔をしつつ国近に声をかける。
「だってよ国近、さっさと終わらせるぞ。」
国近も話は聴いていたようで返答は早かった。
「ほいほい、刈谷君、今いいところだからちょっと待って。」
刈谷も急かすつもりはないのか、近くに座って画面の方を見ながら声をかける。
「ああ、一区切りついてからでいいよ。悪いな急に。」
それから暫く待つことになった。
ーーー
「んで、俺と国近に用ってなんだ?」
ようやくゲームも終わり、落ち着いたところで第一声を発したのは太刀川であった。
刈谷は太刀川と国近の顔を交互に見つめる。
「国近をちょっと借りたいんです。今季のB級ランク戦に出ようと思って。」
そう言って国近の方に向かって声をかけた。
「少しの間だけ、兼任でやってくれないか?A級1位の太刀川さんとこなら当たることもないだろうし、もし当たることがあったら太刀川隊のオペレーターをしてくれていい。お礼もするからさ、頼む。」
国近は手を合わせて頼み込む刈谷を見ながら少し悩む様子を見せて太刀川と刈谷に視線を送る。
「私は太刀川さんがいいって言うならいいけどさ、どしたの急に?」
太刀川も国近の言葉を受けて少し深く座り直しながら続けて問いかけた。
「そうだな。とりあえず理由を聞こう。」
それに対して刈谷はやや興奮した様子で身を乗り出し、身振り手振りを交えて説明する。
「アイビスで本部の壁ぶち抜いたっていう訓練生の話聞きました?鬼怒田さんに確認してきたんですけどマジみたいで……しかも俺よりトリオン量が多いらしいんですよ。」
その話を聞いて太刀川と国近、加えて横で話を聞いている出水も流石に驚いた。
本部の壁の話は噂程度に聞いていたが、刈谷のトリオン量を上回るとは。彼のトリオン量はボーダーでも随一、彼の次に多い二宮すら倍以上の差をつけられ、ブラックトリガーに匹敵すると言われる程だ。
「んでスナイパーじゃ個人戦しても意味ないじゃないですか。ほら、俺ってアレですし。」
彼の副作用のことを言っているのだろう。
太刀川達もそのことは知っているので少し頷くように反応し納得した。
「それでランク戦で戦いたいからってことですか?随分と気合入ってますね。」
出水の疑問も最もだろう。
「一撃で俺のシールド抜けるような相手と戦ったことないからね。初めての体験ってやつ、本気で戦ってみたいんだ。多分アイビス以外でも抜けるんだろうなあ……。どんな感じなのかなあ……。」
遠い目をし始めた刈谷にちょっと引き気味の太刀川達である。
「まあそれならずっとって訳でもないんだろ。俺はいいぞ。どうする国近?」
太刀川が国近に問いかける。
話を振られた国近は軽い様子で手を振り
「いいよいいよー。どうせ刈谷君のオペレーターなんてやること殆どないし。また1人部隊なんでしょ?」
サラッととんでもないことを言い出した。
「ああ、今回も刈谷隊の戦闘員は俺1人だ。どのみちそんな長くやる予定もないチームだしな。」
刈谷も平然とそう返す。
ともかくこれで隊の結成は決定である。刈谷は国近に手を取って立ち上がる。
「本当ありがとう、助かるよ。本格的にチーム組む訳でもないのにフリーの子を誘うのも悪いし、困ってたんだ。」
刈谷君は私がいないと本当ダメだなあーなんてどこぞのオペレーターのマネをしながら国近も満更でもなさそうである。
「それじゃ太刀川さん、こいつと一緒に手続きとか済ませてきます。」
「おう、行ってこい」
刈谷は国近と今後の予定等を話ながら部屋を後にした。
「しっかし随分簡単に認めましたね。オペレーターが兼任なんて結構大変ですよ?」
2人きりになった部屋で出水が口を開いた。
「国近も乗り気みたいだし大丈夫だろ。防衛任務が被ってもあいつなら4人のオペレートくらい問題ねえよ。そもそも刈谷はオペレーターあんま必要ないし。」
あー、アレですもんね……と微妙な表情で納得する出水。
「まあ俺もあいつにちょっと借りあってな。」
これでチャラだチャラ、と太刀川は手を払うような仕草をしながら横になる。
「初耳っスね。なんかあったんですか?」
出水も疑問に思ったらしく、問いかける。
太刀川は面倒臭そうな様子を隠そうともせず答えた。
「あいつがランク戦辞めた頃にちょっとな。別に大したことじゃねえよ。」
ふーん……と、出水もこれ以上聞き出せそうにないと考えて話を終わらせた。
ーーー
刈谷ランク戦復帰の噂は瞬く間にボーダー内を駆け巡った。
「おい、あの刈谷が今季からB級ランク戦に出るらしいぞ……」
「勘弁してくれよ……当たったらどうすんだ……」
「え?俺あんま知らないんスけど1人で部隊組んだんでしょ?そんな警戒しなくても」
「知らねえからそんなこと言えんだよ!前に参加してた頃はそれはもう酷かったんだぞ!」
「そんなバカな……え?マジっスか?」
「あの野郎、今回は絶対に潰す。」
「出来るかなー、ゾエさんあんま自信ないなー……」
「私嫌ですよ隊長!前にログ見たことありますけど刈谷さんってアレでしょ!絶対戦いたくないですー!!」
「まあまあ、まだ当たると決まったわけじゃないし」
「けど対策は考えないとね。対策……なんかある?」
「他のチームから点取って逃げ切りとか?」
たった1人の男が巻き起こした混乱は暫く収まりそうにない。
ーーー
肝心の戦闘シーンまで辿り着かずダイジェストで投げてしまった
妄想を書き出すのって難しい
もうちっとだけ続くんじゃ