【習作】千佳ちゃん並のトリオンモンスターが普通に戦ってみる話   作:枝豆豆腐

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今回は練習で一人称で書いてみてます。
どっちの方が読みやすかったか等の意見を貰えると助かります。


彼の実力

「ランク戦が始まる前に身体動かしとかないとな……久しぶりにソロのランク戦やってくか」

 

国近と一緒に隊結成の手続きなどを済ませた俺は、彼女と別れた後の帰り道にふとそう思い立った。

最近はあまり熱心に訓練していなかったし、そもそも基本的にアタッカーとして働いていた。

チーム戦ではシューターとして戦うことになるが、シューターとしては最近殆ど動いていなかったのだ。

 

そんな訳で、失った勘を取り戻す必要がある。

もう出口の側まで来てしまっていたので引き返すのは多少面倒ではあったが、まあしょうがない。

さっさとブースへ向かうとしよう。

 

 

 

ーーー

 

 

 

ブースへ辿り着いた俺の前には奇妙な光景が広がっていた。

ヤケに多い観客に普段にはない熱気、そして何より観戦用の画面に映された映像では、A級隊員である緑川が訓練生に圧倒されている。

緑川はまだ経験こそ浅く隙はあるが、A級隊員に選ばれたその実力は本物だ。正直アタッカーとしての純粋な技量では俺より上である。

 

野次馬の中に見知った顔があったので、この状況について尋ねることにした。

初めて見る眼鏡の訓練生と話していたそいつに声をかける。

 

「これどういう状況だ米屋?なんで緑川が訓練生とやってんの?しかも訓練生の方が勝ってるし。」

 

こちらに気付いて後ろを振り向いたA級隊員、槍バカこと三輪隊の米屋が軽口を返す。

 

「ん?うわ刈谷さんだ。珍しいですね、個人戦のブースにいるの。」

 

「うわとはなんだうわとは。俺だって訓練くらいするわ。」

 

歩み寄って後ろから失礼な後輩の頭をはたきつつ、話を続ける。

 

「まあ久し振りにシューターの方の練習しときたくてな。これから暫くはここに顔出すつもりだよ。それで、誰だあの子?なんで訓練生が緑川とやってんの?」

 

それを聞いて米屋もああ、俺の疑問に気付いたしたらしい。米屋の横に座って話を促す。

米屋は隣にいた眼鏡の訓練生を指して説明を始めた。

 

どうも緑川の奴が、こないだ風間さんと引き分けたとかで話題になってたこっちの三雲君を、観客を集めて一方的にボコボコにしたらしい。

それを見咎めた空閑君が敵討ちに対戦を申し込んだと。

 

緑川とはそこまで親しくないが、そんなに性格が悪かったかと言われれば疑問が残る。

とはいえ年齢相応かそれ以上にガキっぽい部分があったのも事実だ。何か個人的に諍いでもあったのかもしれないと思い、三雲君の方に事情を聴いてみることにした。

 

「三雲君、始めまして。B級隊員の刈谷誠だ。最近昇格したばかりらしいね。俺はボーダーに入ってそれなりに長いから、困ったことがあったら何でも聞いてくれ。これからよろしく。」

 

俺が米屋と話していた時からこちらの様子を伺っていた三雲君もこちらを向いて挨拶を返す。

 

「三雲修です。刈谷さん、こちらこそよろしくお願いします。」

 

お互いに挨拶もすんだところで、本題に入るとしよう。

 

「それでちょっと聴きたいんだが、最近緑川と何か揉めたりしたか?」

 

「緑川とですか?……いえ、今日が初対面のはずです。少なくとも俺に覚えはありませんね。」

 

ふむ……嘘をついている風でもないし、本当に何もないか、あっても印象に残らない程度のことだったんだろう。

となると、いよいよ状況がわからない。

 

「そうか、それならいいんだ。気にしないでくれ。」

 

こちらを見て不思議そうな顔をしている三雲君に一言返してからふと画面の方を見ると、また空閑君が緑川を落としていた。

しかし本当にとんでもないな。まだ訓練生なのに、A級隊員である緑川を相手にここまで一方的とは。

 

「なあ米屋、戦ってる経緯はわかったが、あの空閑って子は何者なんだ?訓練生とは思えない強さだぞ。」

 

「こないだC級がやったモールモッド撃破訓練生で1秒を切って最速記録が出たって話知りません?あれ、空閑がやったんですよ。期待の新人ってやつです。(ネイバーでブラックトリガーとか言えねえし……)」

 

そういえばそんな話もあったな。俺はアイビスで本部の壁を抜いたとかいう訓練生の話の方に意識がいってたから殆ど聞き流してたが、本当だったのか。

しかし、この三雲君もあの風間さんと引き分けたって話だったし、今季の新人は随分と豊作だな。

 

「成る程、元々剣術か何かやってたのかな。」

 

「さあ、俺は知りませんけど、そうかもしれないですね。」

 

俺の素朴な疑問に何故か冷や汗をかきながら答える米屋。気の所為か三雲君の表情も引きつって見える。

 

「お、終わったか。」

 

そうこうしている内に空閑君と緑川の模擬戦が終わった。最終スコアは8-2で空閑君の勝利。俺が見始めた時は訓練生に押される状況からか普段より動きの固かった緑川だが、最後の一本は実力を出し切っていたと言っていい。それすらも上回った空閑君が訓練生離れしていると評価するべきだろう。

 

ブースから出て来た空閑君と緑川、そして三雲君が話をしている。拗れるようなら仲裁しなければいけないかと身構えていたが、その心配は無さそうだ。

しかし迅さんの後輩だから嫉妬したとか予想以上に下らん理由だったな。仮にもA級隊員だ、やはり後でお灸を据えておくべきか……

 

「はじめまして刈谷先輩、空閑遊真デス。」

 

そんなことを考えていると空閑君から声をかけられた。

米屋達の方を見るとこちらを向いていたので、あいつらが俺の名前を出して挨拶に来たんだろう。

 

「俺の名前はもう知ってるみたいだが、改めて、刈谷誠だ。よろしく。しかし強いな君、まだ入隊式を済ませたばかりの訓練生だろ?それであの緑川に勝つなんて。」

 

「イエイエ、ちょっとした実力デス。」

 

謙遜なのかなんなのか判断に困るんだが……。

と、そんなやり取りをしていると後ろから三雲君が走ってきて空閑を抑える。

 

「おいこら空閑!すいません、こいつ最近日本に来たばっかりで、少しズレてるんです。」

 

まあ俺が煽られた訳じゃないから気にしないが。

気にする人もいるかもしれないから気を付けなよ、なんて先輩風を吹かせてみる……あん?なんだと米屋?よし丁度良いからブース入れ、新人の目の前で恥かかせてやる…

などと微妙な盛り上がりを見せ始めたところで迅が現れた。

用事があるらしいとのことで三雲君と空閑君は迅と一緒に木戸さんのところに向かうようだ。

 

「悪りいな、話の途中に。」

 

「いえ、大丈夫ですよ。それじゃあ三雲君、空閑君またね。」

 

「はい!失礼します!ほら、空閑」

 

「はいはい、それでは失礼シマス。」

 

そうやって彼らは去っていった。

そして残された俺たちはというと

 

「んで、結局どうする?俺と個人戦するか?」

 

「さっき言ってましたけど、シューターでやるんですよね?そっちの方が楽しそうだ。やりましょうよ。」

 

「あれ?刈谷さんってアタッカーじゃなかった?」

 

俺と米屋の会話に緑川が疑問の声を挟んだ。

そういえばこいつは比較的新しい隊員だし、俺がアタッカーに転向してからのことしか知らないか。

 

「昔はシューターやっててな。それからアタッカーに転向したんだ。今度のB級ランク戦にはシューターに復帰して参加するつもりでな、暫くは肩慣らしと調整だ。」

 

「へー、ランク戦に出るんだ。どこの隊に入るの?」

 

「俺の1人部隊。国近に太刀川さんのとこと兼任でオペレーターやって貰うよ。」

 

 

これには緑川も目を見開いて驚いた。緑川からすれば刈谷はB級中堅どころのアタッカーといったところである。1人でランク戦など、とてもではないが戦えるレベルではない。

困惑しながら米屋に視線を送る。

 

米屋には緑川の疑問は理解出来ていた。事情を知っている米屋からすればなんともかわいい勘違いである。

 

「まあお前の気持ちもわかるけど、この人はシューターの方が強いんだ。説明すんのも面倒だ、今から俺が戦うから、それで理解出来るだろうよ。

 

「それじゃあ早速始めるとしようか。俺は195番に入るから。」

 

「はいはい、そんじゃ俺は156番に入りますんで。」

 

 

そうしていまだに疑問の解けぬ緑川を置いて2人はさっさとブースに向かって行った。まるでダメな先輩たちである。

 

 

 

ーーー

 

 

 

転送直後、仮想空間で相対した2人は正反対の行動を取った。

米屋が槍を構えて一気に距離を詰め、刈谷が左手にシールド、右手にトリオンキューブを生成しながら大きく後ろに下がったのである。

アタッカーとシューターの戦闘になれば不自然な展開でもない。攻撃的な性格の米屋ならばなおのことである。しかしその結果は余りにも常識からかけ離れていた。

 

「相変わらずシールド硬えっスね。んで、巫山戯たサイズの弾だ。」

 

米屋の槍は刈谷の前面に張られたシールドに完璧に止められていた。普通、近接武器である孤月をシールドで、しかも自身の前面全てをカバーするサイズで展開して止めるなどあり得ない。しかし、ここでそのあり得ない状況が発生していた。

 

しかしそれよりも常識はずれなのは刈谷の上に展開されたトリオンキューブである。シューターが攻撃を行う際に現れるトリオンキューブのサイズはそのまま本人のトリオン量を示す。手のひらに収まるどころか刈谷自身の身体よりも遥かに大きなそれは、桁違いのトリオン量を如実に表していた。そしてその巨大なトリオンキューブが既に分割を始め、攻撃体制に入っている。

 

「クソッタレ!」

 

米屋は槍を引き距離を取ろうと後ろへ飛ぶが、自分でもそれが無駄な行動であることはわかっていた。

 

「『アステロイド』」

 

この距離で、視界を覆い尽くす程の弾幕を躱せる筈もない。展開したシールドは一瞬で破られ、咄嗟にアステロイドを槍で捌こうとするも、一発当たっただけで槍の方が弾き飛ばされる。

次の瞬間には、米屋の姿はアステロイドの嵐に飲み込まれていた。

 




ちなみにオリ主のトリオン量はBBFステータス風に言うと36のつもりです。千佳ちゃんは38。実に修君1人分もの差がある。
戦闘スタイルは機動力を下げて火力と硬さを上げたランバネインさんのイメージ。
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