【ライネル】の危機感について
★魔物の頂点である【ライネル】として永い時を君臨し続けた精神を持ち、かつ人間のハイリア王国や、とあるゲルド族の男に関する知識などほとんど持ち合わせていないはずの主人公が、"剣"や【厄災】に過剰反応する理由。
→歴戦の魔物独特の肌感覚で"剣"の危険性を感じ取れた云々といった要素は、実際のところ他の魔物達が感じるモノと大差なく、あまり理由としては強くないです。
→原因は原作において、ガノン由来の存在に対してエグい特攻性能を持つ、「女神ハイリア」系譜の力にあります。
一旦関係の余りない話に移りますが、過去作(スカウォ)と「仮初めの儀式」の内容から察するに、恐らく女神ハイリアから時の勇者に授けられた経緯を持つのがマスターソードこと退魔の剣です。
そして上記の儀式中にうたわれる詩の言葉を乱暴に要約すると、
『時の始まりから終わりまで。どんな世界の果てまでも、このマスターソード(≒過去・現在・未来の時を繋げる鍵の力を持ち、そこに「在る」だけで封印の役割を果たすトンデモ神造兵器)は選ばれた勇者と一心同体であるべき! 勇者×聖剣……姫巫女はそのカップリングを応援しています! 』
となります。
本当です。
実際、退魔の剣は手に入れたが最後、決して装備ポーチの欄から外すことは叶いません。
……この字面だけを見るとまるで呪われた装備のようですが、そこは聖剣。
限られたポーチの武器枠の一つを潰し続けるなんてことはせず、しれっと自分専用の枠を(いつのまにか)新たに増設し、次々と使っては砕けて消える他の有象無象な武器達を尻目に、いつまでも奥ゆかしく居座ってくれるのです。
まさに正妻の貫禄!
……つまり「仮初めの儀式」は、ひたすらに退魔の剣と勇者を讃え、更なる力が両者に宿るように繰り返し祈る至って健全な詩なのですが……魔物にとってヤバいのが、祈りを捧げる人物です。
作中でこの儀式を勇者であるリンクに対して執り行っている者はゼルダ姫ですが、彼女は姫である他に『姫巫女』という役職にも就いています。
この『姫巫女』ですが、四英傑のような当代の実力者や、特殊能力の適性を持つ者から選ばれる役ではありません。『ハイラル王の手記』には「師となる母に何一つ教わらぬまま先立たれた」とあり、代々王家の妃から姫へといくつかの書物を除いては、主に口伝のような形で継承される歴代の「お役目」なのではないかと考えられます。同じ手記に「王家の習わしに従い ゼルダと名付ける」とあるように、この世界には「第一プリンセス=ゼルダ=姫巫女」な意味合いもあるのでしょう。
ここから『姫巫女』とは、明確にハイラル王家の血が流れている姫であることが前提であることが窺えるのですが。
他の世界(別作品)におけるハイラル王族のゼルダさんは、予知能力に長けるといった巫女チックな特徴を多く持つといった他に、色々とヤバイ力を有している場合が多かったりします。
いくつか例を挙げると
・祈りの力で、世界を滅ぼせるラスボスを、単独で長年封印し続ける。
・祈りの力で、封印から解き放たれ「力のトライフォース」という奇跡の一角を暴走させているラスボスを、勇者にゆっくりトドメを刺させられるほどに身動きを止める。
・祈りの力で、勇者のどんな攻撃でも弱らせられないラスボスに、唯一明確なダメージを与えられる最強チート兵器「光の弓」を召喚する。
・祈りの力で、荒れた世界を復活させる。
・歌の力で、勇者をタイムワープさせる。
・圧倒的なヒロイン力(ピーチ姫ムーヴ+お転婆+健気+勇敢+時には幼馴染)
・かわいい。
といった具合です。
トライフォースや女神ハイリアといった後押しがあるとはいえ、歴代のゼルダはこうした力や素質を持ち、そんな存在達が血と共に「儀式」を繰り返し継承していった訳です。
『姫巫女』の名のもとに勇者とマスターソードを繋ぐ、一世一代程度には重要であろう儀式、「時の始まりから終わりまで、此処とは違う世界の果てに至ろうと、女神ハイリアの祝福とともに勇者の魂とマスターソードは共にあり、更なる力が宿らんことを」なんて祈っちゃう儀式を、です。
継承の繰り返しによって血に宿る力は弱まり、それに悩むゼルダの描写こそ原作にはありますが、逆にいえばその継承は途切れることなく現代まで続いており、その証拠は最後に輝くトライフォースからも明らかです。
ことラスボスに対して特攻めいた力を持つ歴代姫巫女達の祈りによって、勇者の魂とマスターソードは女神ハイリアの祝福と、更なる力の積み増し強化を受け続けていたとして、何ら不思議はありません。
ゆえに拙作では自覚なくとも、勇者の魂を宿したリンクとマスターソードこと退魔の剣には、厄災ガノンの系譜に対してえげつない力を振るえるほどに、強い女神ハイリアの寵愛が宿っているとしています。
そしてようやく冒頭に戻りますが。
【ライネル】は強力な魔物であり、その強力さは他とは一線を画します。
種族として生まれ持った多寡は勿論ありますが、そこからどれだけ強力になれるかは、先天的にせよ後天的にせよ、ガノンの魔力をどれだけ取り込めるかによるのでしょう(白銀クラス以降の魔物説明に、ガノンの凶悪な魔力の影響で云々ともありますし、四神獣を開放して厄災の封印が弱まるたびに、魔物が色変わりしてドンドン強力になる理由にもなるかなぁと)。
つまり【ライネル】=魔物最強=厄災ガノンの魔力を最も色濃く取り込めた存在であるからこそ、その魔力とは正反対の女神ハイリアパゥワーを宿す退魔の剣に危機感を覚えたという設定です。
退魔の剣は一定以上のポテンシャルを持った「ハイラルに対する悪」に対して、女神ハイリアからの加護の力を開放するっぽい武器であるため、かつてはゲルド族の男であった厄災ガノンと同じく、もし【ライネル】が悪として世界に影響を与え得る悪であると剣に宿る意思が感じたならば、"剣"はより理不尽な力を剥き出しにするでしょう。
その矛先を向けられた存在は、自身に宿る力とは真逆のその気配に激しい拒否感を持たざるを得ないのです。
これは女神の祝福を世代を超えて受け続ける勇者が相手でも同様ですが、100年前も現代もまだ勇者として未完成(!?)なリンクより、武器として完成している退魔の剣相手の方が警戒心の比重は大きかったりします。
しかし今後は、改めて【厄災】個人を復讐の相手として認識したことで退魔の剣の有無に関わらずリンクを憎みますし、さらには英傑達の加護が集中していくたび、祠の試練を突破するたびに女神ハイリアの気配が増していくことになる【厄災】の方を、【ライネル】は魔物本来の種としての警戒心も煽られ続けることになるでしょう。
日時:2019年11月19日(火) 12:05
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