「亡国のジークフリート」評価(作品DB下書き)

 いつまで経っても作品データベースに「亡国のジークフリート」のページが出来ないので、もうここに評価書きます。
 当然、評価は「最高!」。というか「最高中の最高」評価という、滅多に使ってはいけない評価の仕方が作品データベースにはあるのですが、亡国のジークフリートの為に温存してます。ダイの大冒険も脳噛ネウロもけものフレンズも大好きですが、それらすら押し退けて、亡国のジークフリートの為に温存してるのです。それぐらい好きな作品です。
 ぜひ読んでください。
試し読み
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【良かった点】
①歴史ロマン感じさせる語り口調
 この作品の舞台は10世紀のゲルマン地方で、ナレーションは「嗚呼、千年後の者たちよ」といった口調で読者に語りかけてくる。千年前に本当にこのような伝説があり、このような騎士たちがいて、このような戦いがあったのだという歴史ロマンに存分に触れることが出来る。この独特の語り口調を使って、当時の文化・風俗にも自然な形で触れられていて世界観がよく伝わる。
(もちろん漫画なので実際の歴史とは大きな差異はあるだろうが)。
 解説シーンや目次に用いられる版画風・壁画風のイラストも、個々の武器やキャラクターの特徴をよく押さえていて、見ていて非常に楽しい。
 さらに、この漫画で出てくる単語には、度々「誇り(シュトルツ)」「名剣(ベリュムト)」「危険(ゲファール)」「良し(グート)」などのドイツ語読みのふりがながふられている他、「なり」「なりし」「何と○○なことか」といった古めかしい言葉遣いが多く、歴史物の重厚感がたっぷり味わえる。

②「誇り」「夢」といった、ありきたりな語彙の扱いの丁寧さ
 バトルファンタジーなら、「誇り」「夢」「王の右腕」といった言葉はありふれている定番の語彙だろう。しかしこの作品では、それらの語彙がひとつひとつ非常に丁寧に扱われている。「誇り高い戦いとはどういったものを指すのか」「夢を追うことの意味、各人物の夢は何か」「ハーゲンは何故王の右腕の異名を持つのか」がきっちり書かれており、物語に一貫性と深みがある。

③バトルが面白い。
 登場する騎士がそれぞれ最強クラスの力量と技術を持っており、その応酬が非常にカッコいい。また、凡人(普通)の思い付きとは逆のことをジークフリートはよくやるのだが、それがしっかりと勝利の布石になっていて面白い。

④作画が良い
 男性キャラはかっこよく、女性キャラとショタは可愛く、筋肉や胸元には一切の妥協がない。名剣のデザインもそれぞれ個性的で、地形すら変えるジークフリートの力強さや音より早いハーゲンの早さもバッチリ描かれている。そしてキャラデザにすら伏線を忍ばせている。グートとしか言いようがない。

⑤天望節
 この作品に限らないが、天望良一氏は、倒置法や体言止めを多用し、最小限の語彙と文字数で最大限に物事の本質を突く文体を得意としている。全ての台詞が名台詞(迷台詞)と言っても過言ではない。

⑥比喩や怪力を利用したギャグ・無双描写
 これは亡国のジークフリート以外だと魔人探偵脳噛ネウロや魔王学院の不適合者でも見られる。「天にも舞い上がるような気持ち」と浮かれていた次の瞬間に攻撃を浴びて天に舞い上がらされる、「宝の山を半分に分けてみよ」と命じられて地形すら変える斬撃で真っ二つにしてしまう、ゴミと呼ばれたお返しに相手をゴミに集るハエと言い返すなど。

⑦テンポが良く無駄がない完璧なストーリーライン
 テンポ良く物語が進んでいき、伏線もほぼ回収してキャラクター性にブレがない上に御都合主義にも傾き過ぎていない大団円を迎え、エピローグにもしっかり尺が使われている。良かった点⑤の天望節も相まって、無駄らしい無駄が全くない、何度も読み返したくなる濃い物語である。

【悪かった点】
①数字の矛盾
 20回以上読み返してやっと気づく(指摘しようと思う)レベルだが。兄グンテルと妹クリエムヒルトの年齢差、兄リウデゲールと弟リウデガストの年齢差、ザクセンの人体実験に要する年数、ザクセンとブルグントの年表など考えると、どう計算しても登場人物の年齢が合わない気がしてならない。過去回想シーンは非常に面白いのだが、回想シーンから年齢を逆算すると明らかにおかしい部分が多い。

 他にもジークフリートの斬撃の威力や、ザクセン王城の高さ(そしてその高さまでアストルトが登る速さとジークフリートが落下する速さ)、毒を盛られてから死ぬまでの時間など、空想科学読本のような形でちゃんと検証すればかなりおかしい部分は多いと思われる。
 ただ、20回以上読み返してもそれほど気にならなかったのは「千年前の神話のごとき誉れ高き伝説を、現代の科学を物差しに測るなど無粋」だと思わせるだけの歴史ロマンがこの作品にあるからである。

②宣伝が下手くそ
 巻末にある「次巻告知」が下手くそ過ぎる。「亡国のジークフリート」というタイトルをはじめ、月刊少年ライバルズはタイトルの付け方が下手(※亡国のジークフリート自体はちゃんと熱いタイトル回収も最終回でやっているので、分かりやすい副題をつけるべきだった)。この漫画の表紙は赤(血の色)と黒を基調としていてダークファンタジーのような佇まいだが、内容からすれば白を基調とした方が良かったように思える点。この作品が作品データベースに登録されず、電子書籍化もされず、知名度も乏しいのは、一重に(月刊少年ライバルズと講談社の)宣伝が下手なのが原因の気がしてならない。

⑥短い
 6巻しかない。アニメの脚本を基準にすれば1クールぐらいの内容なので十分ではあるし、短いからこそ引き延ばしせずに濃度を保ったまま終われたとも思えるし、短いからこそ読み返しやすいのだが。しかし10人に買われた本作より5人に買われた15冊の漫画の方が総売上が上になるのは何となく道理がおかしい気もする。この面白さと濃いキャラクターに対して漫画が6巻しかないのは実にもったいない。

【総評】
 歴史に埋もれるにはあまりに惜しい、最高の神漫画である。評価は最高中の最高。


日時:2020年10月18日(日) 11:20

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