シナリオ形式のススメ


 「えー、シナリオ形式かよ、じゃあブラウザバックしよー」
 「シナリオなんて書く気しねーわ、小説こそ至高」

 なんて思ってたりする人、居ませんか?
 そりゃあ、とても勿体無い事ですよ、奥さん。

 シナリオには小説とは全く違った面白さがあるんです。今回は、その事を皆さんにお伝えしたいなあーって思って、筆をとりました。

 今更お前に言われなくたって知ってるわ!
 お前ごときが何を偉そうに!

 ……って思われるかもしれないですけど、まあちょっと書いてみようかなと思います。
 僕は勿論、シナリオ学校の講師とかでもなんでもないので、全部素人の意見ですががが。
 シナリオには台本形式とかラジオドラマ用など、色々と用途や形式がありますが、以下、映像用シナリオ前提で話しています。


 まず、シナリオと小説、違いが分かってない人も結構いますよね。
 これはどちらかというと、書いてる側の人に多いんじゃないかな、と思います。

 小説ってのは、文を読ませる為のものですよね。流麗な文はそれだけで美しいものですし、音読するともっと美しい。すごい文だと、その場の情景や感触、匂いまでありありと想像出来たりします。

 一方、シナリオは文を読ませるものではありません。
 というか、シナリオはそれ自体では作品(の完成形)ではありません。
 じゃあどうなると完成形になるのか?
 映像になって初めて完成した作品となります。
 つまり、シナリオってのは、映像を作る為の設計図なんですよね。


 この「映像のための設計図」ってのが重要だと思うんですよ僕は。
 目的は映像を作ることなんです。
 映像なのに、文章で感情表現したってわかんないんですよね。
 例えば、シナリオに「このときアリスは嫌悪感で目眩がする思いだった」って書いたって、映像にしようがないんですよ。
 そこは、実際にカメラをアリスの視点にしてぐらぐらと揺らす、みたいな感じに、映像として心情を可視化しないといけないんですよね。
 そこが実際重要で、たぶん、僕も含めて、素人には完全にはできていないところなんだろーなーと。
 意外とね、書いてると忘れちゃう部分なんですよね。

 そしてもう一つ重要なのが、設計図にそって、「自分ではない誰か」が「映像」を作るってことです。
 小説の場合は違いますね。プロの場合は編集者等が入る場合もあったりしますが、基本的に一人で完結した作品を作ることができます。
 シナリオはそれが出来ません。もちろん中には一人で全て作成した映像作品もあるのでしょうが、相当な条件が揃わなければ不可能でしょう。
 例えばドラマなら、代表的な役職だけ挙げても、スポンサー、監督、演出、大道具や小道具、衣装、カメラマンに音声の人や、そしてもちろん役者の方が関わりますよね。
 アニメでも同様でしょう。
 多数の人が関わって初めて作品になるわけです。
 だから、シナリオはそれを前提に書かなくちゃいけないんですよ。
 曖昧に書いてしまっては、他の仕事人達が困るんです。どうやってカメラを動かしていいかわからなかったら、映像なんて取れませんよね。
 そして、矛盾した言い方になってしまいますが、シナリオはまた、ある程度「曖昧」でなければならない。
 なぜなら、他のプロが行うべき部分は、その道のプロに任せるのが良いからです。
 例えばカメラの動き方を「ここでズーム、1秒後にすばやくパンする」とか細かく書いても、いいシナリオとは言えない(らしいです)。
 カメラの動きや映像の展開は、演出やカメラマン等のプロに任せるべきなんです。餅は餅屋ってことですね。
 シナリオはあくまで、どういう流れでこういうドラマを起こしたい、という流れを表現し、他の造り手に想像させるものであるべきなんですよね。
 よい映像を想像させるシナリオが、いいシナリオなんです。


 また。
 他の人が関わる。
 コレが、小説と違って、シナリオを書くときの最大の魅力だと思うんです。


 僕はシナリオを書くとき、最低でも、隣に「演出家」がいるつもりで書いてます。
 「これこれこういうシーンにしたいんだけど、こう書くと、隣の演出家はどう表現するかなあ?」
 「僕はこういうシーンしか思いつかなかったけど、隣の演出家はもっと良い表現を考えてくれるんじゃないかな?」
 とか、考えながら書いてます。
 そういう、まだ見ぬ完成品を想像して、自分の書いたお話よりも、より魅力的な作品になった映像を想像して、楽しむ。
 それがシナリオを書いていて、一番楽しいところじゃないかなぁと。

 そして、読むとき。
 逆に、自分は演出家になったつもりで読みます。
 「ここはこう書いてあるってことは、こういうシーンにしようか」
 「でも、ここをこうしたらもっと楽しくなるんじゃないか?」
 そんなふうに考えて読むと、シナリオが楽しく読めるんじゃないでしょうか。
 そして、その意見を感想等としていただけると、シナリオの書き手としては嬉しいのではないかと思います。
 シナリオは、それだけでは未完成なんです。様々な人の様々な意見を受けることで、より面白い作品に近づくと思うんです。


 実際に映像作品を制作する場合は、もっともっと気をつけるべきこと、難しいこと、そして楽しいことがあるんでしょうね。
 でもそういう難しさが、シナリオ制作や映像制作のおもしろさなんじゃないでしょうか。
 残念ながら、僕はやったことがないんですが。


 みなさんも食わず嫌いせず、シナリオ形式の作品、書いたり読んだりしてみてください。
 きっと楽しいですよ。


日時:2015年10月13日(火) 02:06

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返信コメント

チャーシューメン

>kanpanさん
 コメントありがとうございます。
 どっちかっていうと、シナリオから台本が出来る関係なのかな? まあ台本でも、ドラマ台本と舞台台本では結構違うらしいですからねえ。そのヘン、僕も曖昧です、すみません。
 いろいろな形式の書き方があったほうがいいというのは大賛成です。
 結局、話の作りなんて昔からどれも似たりよったりですからねえ。見せ方が個性になんてる面もあるんじゃないかなと思います。
 好きな作品を見りゃいいってのもその通りだと思います。
 まあでも、たまには気分を変えて、今まで見てなかった形態の作品を見てみると、またなんか新しい発見があるかもしれないですよ?
 なんていうことをお伝えしたかった次第でございます。


日時:2015年10月14日(水) 02:37

チャーシューメン

>桃山二世さん
 コメントありがとうございます。
 2ちゃんでSSって見たことないんですよねえ。なんか面白いのあったら教えて貰いたい所です。
 作品形態は違えど、ドラマを作っている点では、小説もシナリオも変わらないんですよね。サクッと読めるという点では、小説のほうが確かにいいのかも?
 しかし、なるほど、腰据えて小説読みたい、ですか。
 僕はハーメルンと他のサイトの毛色の違いとか理解しきれてないので、ここでは求められてないもの書いちゃってるのかもな~。
 こちらこそ、貴重なご意見ありございました。


日時:2015年10月14日(水) 02:22

チャーシューメン

>友夏さん
 コメントありがとうございます。
 なるほど。そうでしたか。
 僕にはどうやら一番重要なニーズの面の視点が欠けていたみたいですね。
 僕はみなさん、ただ単に面白い話を求めてるだけのかな~と思ってたんですが、そのあたり、根本的に勘違いしていたみたいです。
 まあ、でも、たまに見てみると面白い作品もあるかもしれませんよ?
 小説にちょっと疲れたら、覗いてみるのもいいかもですよ~。


日時:2015年10月14日(水) 02:15

チャーシューメン

>ばいどるげんさん
 コメントありがとうございます。
 シナリオ形式、書くの楽しいですよ~。
 第三者視点で書くのに慣れてる人は、比較的違和感無く描き始められるかもしれませんね。
 一人称でギャグ書くの苦手ーって人にもオススメです。
 ぜひご挑戦あれ~。


日時:2015年10月14日(水) 02:12

kanpan

作品を見に行きましたが、シナリオ形式というのは台本形式ともまた違ってますね。
こういうスタイルも面白いです。

ハーメルンの中にいろいろな形式の書き方があったほうがいいと思います。
私はそもそも小説とはどういうもの、というはっきりした決まりごとがあるとは感じません。
読む人は自分の好みの書き方の作品を選べばいいのです。


日時:2015年10月13日(火) 12:42

ばいどるげん

どうも、はじめまして。

シナリオ形式ってなんだ?と思ったのですが、作品をちらりと見せていただき理解しました。
これは面白いですね!こういった書き方もあるというのは勉強になります。

私が書くのは基本的には小説形式なのですが、シナリオ形式に通じる書き方をしているような気がしました。
機会があったらこのような書き方をしてみたいですね!


日時:2015年10月13日(火) 02:48



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