▼推薦を書く
推薦一覧(2件)
光──それは受け継がれていく魂の絆。
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
悲しみの中に沈む少女がいた。
怒りに身を委ねる少女がいた。
(49行省略されています)
人との関わりに臆病な少女がいた。
あるがままに笑う少女がいた。
変わりたいと願う少女がいた。
一人日常の中で待つ少女がいた。
未来を守る光の巨人たちがいた。
そしてーーー『悲しんでいるあなたを愛する』少年がいた。
闇とは、光とはなんなのか。罪人はやり直すことはできないのか。勇気とは、なんなのか。
人は誰しも闇を持つ。醜悪で、直視したくない当たり前の愚かしさ。
それを否定することは、『光』しか抱かないということは正しいのか。
答えは未だ出ず、けれども少年は前を向く。これ以上不当に傷つけられる人を見たくないから。
ーーーそして戦いの果てに、闇に堕ちた少年は『勇気』を得た。
▼読む際の注意事項など
タイトルからわかるように『ウルトラシリーズ』と、『結城友奈は勇者である』その展開作品の一つ『乃木若葉は勇者である』のクロスオーバー作品となります。
作者はルシエドさん。主人公に大変ハードな試練を与えることで定評のある方ですね……。
それに加えてこの作品の特徴は『人間がリアル』である、という点です。
この作品に登場する『名もなきその他大勢』ーーー言ってしまえばモブたちはどこまでも『リアル』に描かれます。
『他の人が悪いと言っているから人を傷つける』、『ネットで他人の悪口を言う』、『自分に正義があると信じて疑わない』、おそらく、誰もが他人事ではないはず。それが残酷なまでに生々しく描かれます。
都合のいいことだけではない。頑張っても認められるわけではない。
けれど、不思議なことに、この作品からは「それだけが人間の全てではない」と、そう教えられます。
程よく他人に厳しいところも、程よく他人に優しいところもある人もいる。極端な悪人も、極端な善人もいない。それが『人間』なんだと伝わってきます。
そして、自分も他人を思える人でありたいと、そう思える。
次に、原作キャラとの関係が個々に特別な関係を気づいていく関係が魅力的です。
ラブコメのようにニマニマすることもあるし、互いの信頼関係にかっこいいな、と思ったり、この二人は変わらないなぁ、とため息をついたり。彼女らの心の揺れに思わず涙を流したり。
彼ら彼女らの年相応の関係性は見ていて飽きないように描かれています。
最後に、主人公がめっちゃかっこいい!!!!!!!!
たぶん小さな頃に憧れていた大人とか、ヒーローがいた人も多いでしょう。
でも大きくなるうちに、ああはなれない、と諦めてしまう。目をそらしてしまう。
でも、この作品の主人公が仲間との関わりの中で、誰よりも強く、そして誰よりも優しく変わっていく姿は、いつのまにか目をそらしていた憧れていた人の背中を見せられているようで、いつのまにか彼のことが大好きになっていました。
この作品には辛いところも多いです。失ったものも、もう戻らないものも本当に多い。
けれど、最後まで読んだ時、絶対に『この作品を読んで良かった』と思えるはずです。
だって、この物語には泣きたくなるほどの『優しさ』が溢れているから。
『光』も『闇』も心に絶えず。これは『ウルトラマンにならなかった』少年の物語
▼ちょっとしたあらすじ
西暦末期。天の神は人類の存続を否定し、滅ぼすべく御使い・バーテックスを世に放った。
そんな世界に現れた、人を守る光の巨人たち。
ティガ。ガイア。アグル。グレート。パワード。ネクサス。総勢六体のウルトラマン。
(46行省略されています)
勇者達と共に戦った彼らはしかし、力及ばず。人は奇跡を起こせず敗北し、世界は神世紀へと移り変わる。
―――その筈だった。
竜胆の花言葉は『正義・誠実・悲しんでいるあなたを愛する』
とある村に引っ越してきた主人公、御守竜胆は、転校初日にいじめられている少女、郡千景を目撃する。
その名の通り、正しく誠実に、悲しむ人を愛する彼は、いじめに正面から立ち向かい、絶対に屈しなかった。
そして彼は天の神の侵攻に対し、『ウルトラマンティガ』となって戦い、民衆によって命を落とすことになる。
―――その筈だった。
その光の心が故に、心に闇が蓄積され、少年は闇に飲み込まれてしまう。
『ウルトラマンティガ』が堕ち、憎悪とともに生まれた『闇の巨人』、『ティガダーク』。
しかし『ウルトラマンではない』彼こそがこの世界の最後の希望。
ハッピーエンドに到達するための、最悪にして唯一の可能性である。
光と闇を抱えながら、少年は戦い続ける。
何が正義なのか。正しければそれでいいのか。仲間と共に選択を続けて。
これは罪と闇、絶望と残酷に彩られた、夢と希望、そして光を掴む物語。
▼紹介、読む際の注意事項など
この作品は『ウルトラマンシリーズ』と『勇者シリーズ』の内の一つ、『乃木若葉は勇者である』のクロスオーバー作品です。
ウルトラマンはよく知らないという方もご安心を。あとがきにある解説で手厚くフォローされています。
勇者シリーズも、最低限キャラデザだけ知っておけば大丈夫です。
無論、より多く知っていた方が楽しめるのも確かですが。
この作品は高い文章力と巧みな伏線、豊富な知識で鬱展開を叩き込む、いわゆる重い作品です。
ですが、これは『ハッピーエンドが確約されている』のです(一話及び34話冒頭より)
なんとすばらしく安心できることでしょうか!
ええ、まあつまり、ぶっちゃけ最初に確約しておかないと厳しいぐらいにはキツい展開が待ってるってことです。はい。
しかしこまめに希望や幸せが供給されますので、総合的には"まだましなハード"といったところでしょう。
最初期にも胃に悪い展開が固まっていますので難しいとも思いますが、一話切りでは勿体ない。
無理にとは言えませんが、出来れば序章最後、再起2までは読んでほしいです。
そこまで読むと読まないとでは読了感が大きく変わってきますので。
ウルトラマンと勇者が協力して人々を守る、この上なく王道の勇者譚、英雄譚であり、その上で『民衆』にこそスポットが当たり、"何故人や社会を守るのか"を伝えてくれる話でもあります。
単純に楽しむも良し。色々考えてみるも良しかと。
もう一つ付け加えると、この作品は同氏の前作、『時に拳を、時には花を』の過去IFでもあります。
懸命に抗いながらも敗北し、それでも未来に繋いだ西暦勇者と巨人達。
"彼らが"唯一ハッピーエンドを迎えられる世界線がこの作品というわけです。
前作を読んだ方には例外なくお勧めでき、それでいて、前作を読んでいなくとも楽しめるように作られています。
前作は気が向いた時に読むわ、ぐらいでも全然問題なく、なんならこちらが完結してから読むのも悪くない、とさえ言えます。
ただ一つ。確実に前作の方が圧倒的に当社比マイルドですので、「面白いんだけどハードすぎてキツかった」という方にはぜひそちらをお勧めさせてください。